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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボード最新動向】超特急「CARNAVAL」がストリーミング9位に、一方で他指標との乖離を考える

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

7月19~25日を集計期間とする7月28日公開(8月2日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。BTS「Permission To Dance」が初の首位を獲得しました。

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4指標が2位以内にランクイン。フィジカル未リリースですが(EP『Butter』に収録されCD化されたもののアルバム扱いに)、デジタルで十分ポイントを獲得した形です。

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 一方でKinKi Kids「アン/ペア」はフィジカルセールス首位を記録しながら総合では2位となり、3位のBTS「Butter」とはわずか10ポイント差。上記ビルボードジャパンの記事では『ダウンロード、ストリーミング、動画再生指標の加点ゼロの影響が大きく』とあり、デジタル未解禁に加えてここ最近ジャニーズ事務所所属歌手で目立つ動画再生の加点もなかったことが大きく影響した形です。

 

 

さて、アイドル等に目立つのが、フィジカルセールスに強い作品が関連指標の加算2週目にポイントを大きく落とすこと。前週フィジカル関連指標初加算に伴い首位を獲得したSnow Man「HELLO HELLO」は、ポイント前週比が22.8%となり7位に後退しています。

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ビルボードジャパンは今年度下半期以降、フィジカルセールス指標のウェイト減少を実施。それによりフィジカル関連指標の加算2週目におけるポイント前週比が上半期までのそれとは異なります。事例は少ないものの、日向坂46「君しか勝たん」が26.2%、乃木坂46「ごめんねFingers crossed」が28.4%だったことを踏まえれば、フィジカル関連指標加算2週目のポイント前週比は2割台が基準となるかもしれません。

(ただし、ジャニーズ事務所所属歌手で今年度下半期以降フィジカル関連指標が初加算されたV6「僕らは まだ」、関ジャニ∞「ひとりにしないよ」およびNEWS「BURN」はいずれも加算2週目に総合50位を下回りました。50位未満のポイントは未表示のためポイント前週比を把握できません。ゆえにもう少し事例が必要とも言えます。)

 

アイドルがフィジカルセールスに長けている理由は、主にコアなファンが支えているためと言えます。コアなファンの行動は主に所有指標、とりわけフィジカルセールスに大きく反映される傾向がありますが、今週は接触指標においてその行動がみられた作品があります。

当週9位に初登場したのは、超特急が7月21日にリリースした最新シングル「CARNAVAL」。サンバをテーマにした楽曲で、28日夜にはミュージックビデオがプレミア公開される。超特急の楽曲のチャートインは、4月に“BULLET PINK”名義でリリースされ、最高16位をマークした「Guilty」以来の2度目となり、自身初のトップ10入りを果たした。

超特急「CARNAVAL」は618万強のストリーミング再生回数を武器に同指標9位、総合では18位に初登場を果たしました。

強さの原因は、LINE MUSICを主体としたキャンペーンの実施にあります。

ユーザーが自身の再生回数を把握できるLINE MUSICでは再生回数キャンペーンが多く行われます。超特急「CARNAVAL」においては888回、また8888回以上再生し応募した方全員にプレゼントが用意されています。

またLINE MUSICにとどまらず、「CARNAVAL」の総再生回数が1000万を突破すれば抽選でプレゼントが当たる企画も用意。個人では888回等再生できないと意気消沈するユーザーがいても、皆で頑張ろうという共有および成功体験が得られる仕組みとなっています。全員で行うという試みは他ではあまりみられず、これもまた再生回数押し上げに貢献していると言えるでしょう。

 

その一方で、気になることがあります。

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「CARNAVAL」のチャート構成比をみると、ストリーミングおよびTwitter(36位)以外の加点がありません。コアなファンの動きは所有指標に、フィジカルセールスがなければダウンロードに反映されるのが一般的ですが、この曲ではダウンロードが300位以内に入っていません。また公式YouTubeアカウント内の公式オーディオはブログ執筆段階で1万6千回再生にとどまっています。

ミュージックビデオは昨夜公開のため次週以降の動画再生指標に反映されますが、今週当該指標が300位に満たないのはこの公式オーディオの再生回数に因るものと言えます。加えて、他のサブスクサービスにおいても「CARNAVAL」が再生回数を獲得していないことが気になります。同曲の解禁日以降、Spotifyではデイリーチャートで一度も200位以内に入っていません。

つまり、超特急「CARNAVAL」はコアなファンがほぼLINE MUSICで聴き続けたことによる上昇である一方、ライト層に拡がっているとは言い難いというのが私見です。そしてコアなファンならば所有したいという欲求があると想像できるものの、その傾向がチャート上でみられないだろう点も気掛かりです。

 

 

アイドル等のコアなファンは、ビルボードジャパンソングスチャートの高位置登場を目的に、いわゆるビルボード活動を行うことがよく見られます。この活動において、8つの構成指標のうちストリーミングを伸ばすことが最善であるとの私見を今週ブログにアップしました。

しかしながらその真意は、ストリーミングを伸ばすだけでよいというものではありません。

個人の方向けの返信ツイートを掲載する形となりますが、ライト層の拡充がコアなファンの醸成に繋がるとの考えから、ライト層が最も取っ付きやすいストリーミングが最善であるという意味でブログエントリーを記載しました。そしてライト層がコアなファンに昇華したならば、ダウンロードやフィジカルの所有行動に移行するものと捉えています。そうなることで、推す歌手がより長く活動できるようになると思うのです。

その点において、超特急「CARNAVAL」はあくまでサブスク、それもLINE MUSICでのヒットにとどまり、コアなファンの域を出ているとは言えません。再生回数の多さは素晴らしくとも、それがより多くの方を巻き込むことにつながっているのか…歌手側により長く活動してほしいと願うならば、さらなる策を講じる必要があるでしょう。

(この点においては、超特急サイドもトレンド入りを目指したリスニングパーティやプレイリストのシェアをキャンペーンの一環として実施しています。その効果が出ているか、検証する必要があります。)

 

超特急「CARNAVAL」は次週もストリーミングが上位にとどまり、総合でも勢いをキープできるものと思われますが、その次週においてダウンロードや動画再生といった他指標が加点されるか、またその翌週(8月11日公開(8月16日付))にストリーミングが急落しないか、注視する必要があります。

 

 

LINE MUSICキャンペーンについては様々な見方があります。勢いが限定的でありチャートで大きく影響しないと思えば静観することもひとつの見方ですが、コアなファンの域を出ないながらもその動きが目立つようになれば、ビルボードジャパン側はチャートポリシー変更を考えるようになるでしょう。ともすれば3月実施のストリーミング指標ウェイト減少措置は、このキャンペーンも見据えた可能性があるかもしれません。

ただし、ストリーミング指標全体のウェイト減少や、LINE MUSICのキャンペーン実施曲に関してのみキャンペーン期間中の再生回数に係数処理を行う等の措置は現実的ではないでしょう。ゆえに、措置をそもそも講じるべきかも含めて慎重に考える必要があります。

 

 

コアなファンの活動に対する自分の考えは、このブログエントリーで取り上げた昨日のツイートの通りです。その頑張り、献身的な支えは素晴らしいと思います。大事なのはその先を見据えることではないでしょうか。