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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボード最新動向】JO1、BE:FIRSTがワンツーフィニッシュ…さらなる飛躍に向けての課題とは

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

8月16~22日を集計期間とする8月25日公開(8月30日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、JO1「REAL」が首位を獲得しました。またBE:FIRSTのプレデビュー曲「Shining One」が2位に入り、オーディション企画から登場した男性ダンスヴォーカルグループがワンツーフィニッシュを達成しています。

さて、この2曲のチャート構成は大きく異なります。

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大きく異なる要因はフィジカルセールスの有無(により、フィジカルセールス(CHART insightにおいて黄色で表示)およびルックアップ(オレンジ)を獲得しているか否か)、またダウンロード(紫)にあります。ただし後者において、JO1はデジタル先行リリースのためフィジカルセールス加算初週にダウンロードを高位置に持ってくることが難しかったと言えるかもしれません。

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JO1「REAL」は4枚目のフィジカルシングルにして最大の初週セールスを獲得していますが、一方ではルックアップにおいて、当週のフィジカルセールスが「REAL」の7%にとどまったSixTONES「マスカラ」に敗れています。コアなファンの取り込み度合い、そしてレンタル展開の少なさ/多さが影響を及ぼすと考えるに、JO1側はレンタルチェーンへの働きかけが必要かもしれません。

ラジオ(CHART insightにおいて黄緑で表示)においてはJO1「REAL」は49位、BE:FIRST「Shining One」は68位と、突出した他の指標群に追いついていない印象です。他方SixTONES「マスカラ」が3位、次週フィジカルセールス初加算となるHey! Say! JUMP「群青ランナウェイ」が10位に入り、アイドルや男性ダンスヴォーカルグループではジャニーズ事務所所属歌手に軍配が上がります。

それでも、JO1「REAL」はこれまでの曲では善戦しています。びる|JO1赤色のハートRankingさんがまとめられたフィジカル関連指標加算初週におけるシングル4曲の動向からも解るように、「REAL」はJO1にとってカラオケを除く7指標すべてで100位以内に入った初めての曲となるのです。先程はラジオが強くないと書きましたが、その点は克服しつつあるとも言えるでしょう。

(勝手ながらツイートを取り上げさせていただきました。問題があれば削除いたします。それにしてもファンが自発的にチャートアクションを取りまとめることは海外でもみられる傾向であり、実に興味深いですね。)

 

デジタル指標群では、BE:FIRST「Shining One」がより強さを発揮しています。ダウンロードおよび動画再生1位、ストリーミング(CHART insightにおいて青で表示)2位、Twitter(水色)3位というのは上々の滑り出しと言えます。

一方で気になるのはストリーミング指標を構成する各サブスクサービスでの差。Spotifyではデイリーチャートにおいて集計期間中50位以内に入ることはなかったため、LINE MUSIC再生回数キャンペーンが同指標2位発進に大きく貢献したことは間違いないでしょう。そのストリーミングのチャート記事において、ビルボードジャパンは興味深い表現を用いています。

当週2位で初登場を果たしたのは、SKY-HIが主催するオーディション『THE FIRST』から生まれた7人組ダンス&ボーカル・ユニット、BE:FIRSTのプレデビュー曲「Shining One」。8月16日に配信開始された同曲は、リリースに伴うメディア露出や販促キャンペーンも後押しして、その話題性を加速度的に拡大(HOT 100のTwitter指標で3位)し、初週8,875,584回再生を記録する好発進となった。

(太字箇所はブログ筆者の独断により強調しています。)

販促キャンペーンがLINE MUSIC再生回数キャンペーンを指すことは間違いないでしょう。ビルボードジャパンは前週も同種の形容を行っており、ともすればキャンペーンに対し近いうちにチャートポリシー変更を施す可能性があるかもしれません。そこまでいかないとしても、そのような施策が大きく功を奏した曲がキャンペーン終了後に急落するならばそれは社会的なヒット曲ではないと捉えているのではないでしょうか。

キャンペーン後にストリーミングが持続しなければ同指標そして総合でも急落する可能性があります*1。キャンペーンが24日で終了したBE:FIRST「Shining One」は翌日の『スッキリ』(日本テレビ)で初の生パフォーマンスを披露しており、その効果が出てくるかが気になるところです。なおLINE MUSIC再生回数キャンペーンについてはJO1「REAL」も実施しています。

ストリーミングは接触指標であり、歌手のファンというわけではないものの曲が気になるいわばライト層を多く取り込む性質があります。しかしキャンペーン対象曲はコアなファン主体で聴かれる一方、ライト層を呼び込みにくいという真逆の特徴を有しています。仮にキャンペーンを行うとして、終了後に再生回数が急落することを強く意識しライト層を呼び込む策を講じる必要性を強く説きたいと思います。

 

 

BE:FIRSTを生んだオーディション企画、THE FIRSTは『スッキリ』でも放送されましたが、その『スッキリ』が昨年追いかけたのがNizi Project。そこから登場したNiziUのプレデビュー曲「Make you happy」は昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートで12位に達しました。

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今週遂に100位圏外となった「Make you happy」ですが、リリース後長期安定に至れたのはストリーミングと動画再生という接触指標群に因るところが大きいと言えます。LINE MUSIC再生回数キャンペーンは実施していますが、その後ストリーミング指標が長期安定に至れたのはライト層への十分な浸透ゆえと言えるでしょう。 

「Shining One」や「Make you happy」のLINE MUSIC再生回数キャンペーンの詳細等は上記ブログエントリーをご参照ください。そしてここではDA PUMPDISH//の例を紹介し、『自ら実績を作り、音楽メディアが無視できない状況を築き上げるのが最善と考えます。その際には接触指標の拡充が必須というのがチャート分析者による見方』と記しました。

ライト層への浸透は認知拡大が必須であり、そしてそれにはやはり既存メディア、特に地上波テレビ番組への露出が有効と言えます。男性ダンスヴォーカルグループやアイドルには出演における枷があるというのが私見であり(この点はデータを用いて幾度となく記載しています)、JO1やBE:FIRSTがたとえば『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に出られるかは現状では難しいかもしれません。

ならばやはり接触指標群を、それもLINE MUSIC再生回数キャンペーンを用いなくとも上昇、キープさせて真の社会的ヒットに至らせることが重要と言えます。その点をどうするか、運営側そしてファンもアイデアを出し合って考え抜くことが大事でしょう。

*1:直近の例として、超特急「CARNAVAL」が挙げられます→こちら