イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボード最新動向】最新ソングスチャートのトップ10を踏まえ、チャートポリシー変更の議論を求める

(※追記(2023年7月1日10時57分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

9月27日~10月3日を集計期間とする10月6日公開(10月11日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、AKB48「根も葉もRumor」が初登場で首位を獲得しました。

さて、今回首位を獲得したAKB48「根も葉もRumor」についてはその動向における懸念内容を前週記載しました。

前週首位を獲得した乃木坂46「君に叱られた」がその前週には先行解禁されたデジタルを武器に31位に到達した一方、「根も葉もRumor」は同じくデジタルを1週間先行で解禁しながら100位以内に到達しなかったこと、そしてフィジカルセールスは前作「失恋、ありがとう」で成し遂げたミリオンセールスには届かない可能性…これらが懸念の内容でした。

結果的に「根も葉もRumor」は前作からおよそ100万枚近く、フィジカルセールスを落としています。

通算58タイトル目となる「根も葉もRumor」は、シングル初週売上428,608枚で1位、ダウンロード23位、ルックアップ9位、Twitter 6位、ラジオ30位となり、シングル・セールス指標が牽引して、初登場で総合首位を獲得した。昨年3月にリリースされた前作「失恋、ありがとう」は1,414,077枚を売り上げて総合首位を獲得しただけに、初週売上枚数の大幅減が今後のAKB48にどんな影響を与えるか、注目の結果となった。

この点についてフィジカルセールスでのミリオン未達をツイートした際、初回限定盤の特典に差があったからと断定するリプライをいただいたのですが、それだけでここまでの差が生じたとは考えにくいというのが私見です。いや、それが差の原因であるならば、ユニークユーザー数は前作とあまり変わらず、しかしながら一人あたりの購入数が極端に減ったことを示していると言えるでしょう。

 

首位を獲得したAKB48「根も葉もRumor」の指標構成は極端と言えます。

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フィジカルセールス偏重もその理由ですが、加えてサブスク再生回数等を基とするストリーミング、および動画再生という接触指標群が300位以内に達していません。これは乃木坂46「君に叱られた」と大きな差につながったことは自明であり、次週は「失恋、ありがとう」では踏みとどまっていたフィジカルセールス加算2週目における総合100位以内キープも、難しいと言えるかもしれません。

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上記は最新チャートにおける乃木坂46「君に叱られた」の(フィジカルセールス加算2週目における)動向、および総合10位までの8指標の動向を示したCHART insight。「君に叱られた」は決して接触指標群が強くはないものの、フィジカルセールスが強いアイドル等の作品の中にあってはまだ強い方といえます。そしてAKB48「根も葉もRumor」はこの点が弱く、他のトップ10入り作品とは大きく異なる動きを示しているのは明白です。

 

フィジカルセールスを伴うならば8指標、フィジカル未リリースならばフィジカルセールスおよびルックアップを除く6指標のうち、100位以内にエントリーしている指標が多いほどバランスの取れたヒットを築いているとも言えます。カラオケは徐々に上昇するゆえ同指標のロケットスタートは難しいですが、その他の指標をバランス良く獲得した点において、2位のback number「黄色」は見事なスタートを切ったと言えます。

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さらに次週のチャートの集計期間初日には『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)でback numberフェスが開催されたことで、「黄色」を含むback numberの作品にさらなる勢いが生まれることは必至と言えます。

 

 

AKB48は前作「失恋、ありがとう」から「根も葉もRumor」に至るまで、フィジカルリリースに1年半のブランクがあり、歌手名は覚えられていても構成メンバーの認知度が入れ替わり等により下がった可能性を踏まえ、コロナ禍でフィジカルセールスが下がりミリオン未達になることを予想できたとしてもリリースを続けることで認知度を維持させる必要があったはずです。

仮に次週以降、AKB48「根も葉もRumor」が複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートで好調をキープするならば、デジタルの底上げが欠かせません。ユニークユーザー数が変わらないならば、ライト層を広める戦略を採る必要があります。ただし次のような方法での底上げも、現段階では有効とは言えます。

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4週前にビルボードジャパンソングスチャートを制したSKE48「あの頃の君を見つけた」はその翌週に100位未満となりながら、今週37位に再浮上を果たしています。しかし指標構成をみるとルックアップおよびTwitter指標が100位未満ながら300位圏内となりわずかに加点、その他ほとんどはフィジカルセールス指標のみで構成されています。

今週末から開催されるイベントの参加券が付帯されたフィジカルシングルの販売期間は9月27日からであり、つまりは最新ビルボードジャパンソングスチャートに反映されます。しかしセールスに対しルックアップが伴っていないこと、デジタルが総じて300位に達していないことを踏まえれば、コアなファンによるイベント参加券ゲットのためのフィジカル購入が今回の総合37位再浮上の要因と捉えるのは自然なことです。

 

フィジカルセールスのみのランキングならば、そのようなイベント参加券等特典の反映で上昇しても納得がいくものです。しかしながらライト層の動向がより大きく反映されるビルボードジャパンソングスチャートにおいてイベント参加券ゲットのためのフィジカルセールス上昇が大きく影響することは、より多くの方に認知・支持される作品が社会的ヒット曲と成るチャートの意義に沿うものでしょうか。

(そしてこのようなフィジカルセールスの大きな反映が、合算ランキングを用意してもフィジカルセールス偏重となったオリコンランキングが社会的ヒットと乖離したことを示していると考えるのは自然なことです。)

 

ビルボードジャパンには幾度となく、フィジカルセールス指標のウエイトダウンを希望してきました。タイミングを踏まえれば来年度初週に行われるであろうチャートポリシー変更のタイミングで、フィジカルセールスのウェイト変更をあらためて強く希望します。係数処理対象枚数の引き下げもさることながら、ウェイト自体を引き下げることも必要ではないでしょうか。

 

 

なお、最新のビルボードジャパンソングスチャートでトップ10に入った曲のうち、気になる動きを示している曲がもうひとつあります。

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87ランクものジャンプアップを果たし5位に到達したINI「Rocketeer」。Twitterおよび動画再生指標が1位、ストリーミング指標が2位に入り接触指標群が牽引しています。フィジカルセールスは来月であり、一見すると素晴らしいチャートアクションに映ります。

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最新ソングスチャートトップ10のうち、CHART insightを再掲しますが、ストリーミング(青で表示)とダウンロード(紫)のバランスが、「Rocketeer」では大きくずれています。ダウンロードは前週64位に入りながら今週は100位未満(300位圏内)と大きく後退していますが、これは前週の集計期間最終日にリリースしたことでコアなファンが発売当日に購入したことの反動と予想されることから、ライト層の獲得には疑問を覚えます。

また「Rocketeer」では昨日まで、LINE MUSIC再生回数キャンペーンが実施されていました。同じサブスクサービスのSpotifyでは9月29日付の104位が最高位だったことを踏まえればストリーミング指標の急伸はこのキャンペーンに因るものが大きく、次週のチャートではストリーミング指標のダウンが想像できます*1。この動きはキャンペーン終了後に最新チャートで大きく後退した超特急「カチカジャ」(17→71位)からも言えることです*2

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LINE MUSIC再生回数キャンペーン終了後の急落を避けるには、サブスク再生回数の安定が必須です。ただし重要なのはコアなファンが再生回数を維持することではなく、ライト層をどれだけ惹きつけるかが鍵です。決してコアなファンが負担を感じてはいけません。その負担によりファンが離れることがあるならば、キャンペーンは逆効果とすら言えるでしょう。

現状にあってはLINE MUSIC再生回数キャンペーンに高いハードルが敷かれ、キャンペーン後に著しく再生回数を落とす曲が少なくありません。こちらも以前から申し上げていることですが、キャンペーン対象曲を中心としたストリーミング指標の見直し、チャートポリシーの変更もまた議論しないといけないだろうという私見も添えておきます。

*1:なお、最新チャートにおける「Rocketeer」のストリーミング再生回数に占めるSpotifyの割合は2.9%。キャンペーン未実施のback number「水平線」が同18.8%だったことを踏まえれば極端であることがよく解ります。

*2:超特急「カチカジャ」のLINE MUSIC再生回数キャンペーンはこちら