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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】櫻坂46が掴んだ首位獲得の”方程式”について、見方や提案を含めて記す

最新10月25日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:10月16~22日)では前週まで4連覇を達成したAdo「唱」を抑え、櫻坂46「承認欲求」が首位を獲得しました。

Ado「唱」をわずか177ポイント差で上回った櫻坂46「承認欲求」はフィジカルセールス初加算に伴いポイントを伸ばしたのみならず、前作「Start over!」のフィジカルセールス指標初加算時のポイントを上回っています。なお「Start over!」はYOASOBI「アイドル」が大ヒットした中でのリリースということもあり、2位が最高位でした。

・「Start over!」 7月5日公開分 2位 (11,416ポイント フィジカルセールス523,605枚)

・承認欲求 10月25日公開分 1位 (12,376ポイント フィジカルセールス545,943枚)

注目は、フィジカルセールス指標初加算週における前作および今作の獲得ポイントにおいて、「承認欲求」は「Start over!」よりフィジカルセールスを伸ばしながらも同指標の獲得ポイント全体に対する割合が下がっているということ。上記CHART insightにおいてフィジカルセールス指標は黄色で表示されます。

「Start over!」と「承認欲求」を比較すると、青で示されたストリーミング指標の割合が後者で大きいことが解ります。この指標の基となるストリーミング再生回数は「Start over!」のフィジカルセールス初加算週が6,285,027回再生だったのに対し「承認欲求」が7,882,683回再生であり、大きく伸びた形です。これは前作でも実施していたLINE MUSIC再生キャンペーンが徐々に浸透していることの証明といえるでしょう。

「Start over!」そして「承認欲求」でのLINE MUSIC再生キャンペーン採用とその効果については、フィジカルに先駆けてデジタル解禁されたことで総合100位以内にエントリーを果たしたタイミングにて紹介しています。キャンペーンの採用を続け、フィジカルセールス初加算週にポイントが伸びていることを踏まえれば、櫻坂46側はビルボードジャパンソングチャートにおける首位獲得の方程式を得たといえそうです。

 

一方で気になるのは、「承認欲求」においてCHART insightでは赤で示される動画再生指標が前週に続き100位未満であったということ。ライト層人気をより強く示す接触指標においてデジタル/フィジカルリリース時の双方で順位が上がらなかったことは、この曲がライト層のみならずコアファンにおいても十分チェックされているとは言い難いと考えるに十分かもしれません。

上記CHART insightは前作「Start over!」、そして同じくLINE MUSIC再生キャンペーンを採用した前々作「桜月」の総合ソングチャート(黒で表示)、および接触指標のストリーミング、動画再生指標を抽出したものですが、共通するのはストリーミングがフィジカルセールス初加算週にピークを迎えるも3週後には300位以内に入らず加点対象外になっていること、また総合100位以内もピーク後2週のみにとどまるということです。

これは本来ライト層の人気を強く示すはずのストリーミング指標にあって、LINE MUSIC再生キャンペーンがコアファンの接触率を圧倒的に高めていると断言していいでしょう。キャンペーン終了後の急落のみならず、LINE MUSICと他のサブスクサービスの順位の乖離からも明らかです。ゆえに今回紹介した方程式は、コアファンの支持の大きさに伴う週間単位での首位獲得には当てはまるものと捉える必要があります。

 

真の社会的ヒット曲とはライト層を惹き付け、接触指標群が継続してヒットすることで総合チャートでも上位で安定する作品を指すとこのブログで提示しています。週間単位での首位獲得は見事ですが、「承認欲求」が中長期的にヒットするかどうかについては動向を注視すべきと考えます。

櫻坂46側はLINE MUSIC再生キャンペーンのチャート牽引について十分に実感し、今後も継続するものと思われます。重要なのはコアファン向けとなる施策実施の期間中にライト層を獲得することであり、そのライト層への作品の浸透こそビルボードジャパンでの中長期的なヒット、また『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場につながるものと考えます。後者については下記エントリー等でその旨を記しています。

 

 

最後に、ビルボードジャパンに対し今一度提案します。

ビルボードジャパンは最新チャートを紹介するポッドキャストにて、櫻坂46「承認欲求」が”CD牽引型楽曲の新たな勝ち方”であると表現しています。

(ポッドキャストは他のサブスクサービスでもチェックできます。またビルボードジャパンではYouTubeチャンネルでもアップしており、木曜までに公開されるものと思われます。)

他方、このポッドキャストでは「承認欲求」がLINE MUSIC再生キャンペーンを実施していることが紹介されていません。このエントリーの冒頭にて掲載した総合ソングチャートの記事でも施策には触れておらず、なぜこの曲がストリーミングを味方につけたかが判りにくい状況です。

施策実行は自然であることの認知、過度な施策に対する迅速な見直し、中長期的な視野を持つ重要性の周知に加えて、それら紹介時の表現への留意について、ビルボードジャパンに対し改善を提案します。

施策については再生キャンペーンに限らずどの曲についても行われていること、その中で特筆すべき内容はきちんと記載することが重要と考え、上記提案を行っています。また再生キャンペーンに伴いストリーミング再生回数が首位に成った曲以外は係数処理が施されれずそのまま加算されることについても見直しが必要と記載を続けています。ビルボードジャパンがこれらを考慮するか、引き続き提案と注視を続けていきます。