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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

BE:FIRST「Smile Again」がYOASOBI「アイドル」に迫るも2位…一方でストリーミング指標からみえてくるものとは

昨日はビルボードジャパンソングチャートを制したYOASOBI「アイドル」の強さについて紹介しました。

そして最新チャートから今回、BE:FIRST「Smile Again」を今回取り上げます。この曲は集計期間中にフィジカルセールスおよびデジタル双方を解禁し、5月3日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて19,494ポイントを獲得。これはYOASOBI「アイドル」の今週公開分(23,211ポイント)および前週4月26日公開分(19,790ポイント)に続く、今年度歴代3位の高水準となります。

BE:FIRST「Smile Again」のフィジカルセールスはAKB48「どうしても君が好きだ」のおよそ3分の1以下ながら、ストリーミング再生回数9,101,560回を獲得する等デジタルが強く、「どうしても君が好きだ」の2.7倍ものポイントを獲得。それでもYOASOBI「アイドル」が強すぎたため、総合首位を獲得するには至れませんでした。

 

一方で、BE:FIRST「Smile Again」には気になる動きがみられます。

 

5月3日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおいて、BE:FIRST「Smile Again」はストリーミング9,101,560回再生を記録。ただその内容を分析すると、特定のサブスクサービスに偏っていることが見て取れます。

ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング再生回数において3割程度を占めるApple Musicでは、5月3日公開分ビルボードジャパンソングチャートと集計期間を同一とするチャートにてYOASOBI「アイドル」が3連覇を果たした一方、BE:FIRST「Smile Again」は66位と大きく乖離。期間は異なるものの4月21~27日におけるSpotify週間チャートでも、「アイドル」が1位に対し「Smile Again」は52位となっています。

【LINE MUSIC会員限定】 BE:FIRST「Smile Again」再生キャンペーン | BE:FIRSTより

(※5月4日5時30分現在の内容を貼付しています。問題があれば削除いたします。)

「Smile Again」では4月24日からLINE MUSICにて再生キャンペーンを実施しており、4月26日~5月2日を集計期間とするLINE MUSIC週間チャートはYOASOBI「アイドル」が2位、「Smile Again」が1位となりました。「Smile Again」はLINE MUSICのバランスが非常に高く、再生キャンペーンが功を奏したと言えるのです。

 

また、先述したSpotifyでも気になる動向が。

サブスクサービスのうち再生回数が可視化されるSpotifyでは、今回の集計期間6日目においてBE:FIRSTの各曲が他の作品より大きく上昇しています。土曜は金曜より再生回数が高くなる傾向がありますが、ここまでの動きは他の曲ではほぼみられません。

同日にはMrs.GREEN APPLEケセラセラ」が再生回数前日比2割以上を達成していますが、これはSpotifyで50位以内に上昇すればトップ50プレイリスト入りし、その効果で2~3日後に急上昇するというSpotify独自の特性を反映してのものです(上記参照)。しかしBE:FIRST「Smile Again」は4月24日に72→36位と上昇しながらその後は30位台を推移。土曜に20位、日曜に24位を記録しながら5月1日には32位へ後退しています。

Spotifyにおけるいわゆる50位の壁効果の大きさは曲によって異なりながら、「Smile Again」は5月1日にトップ10入りしたMrs.GREEN APPLEケセラセラ」とは対象的な動きです。これはBE:FIRSTのコアファンがリリース日に新曲を聴く傾向が強いこと(フラゲ日となる4月23日に72位初登場したのはその証明といえます)の反動が現れた可能性もありますが、ライト層の取込がまだ大きくないことも示していると考えます。

これを踏まえれば、50位の壁突破後5日後に「Smile Again」および他の曲が4月29日土曜に突如再生回数前日比2割以上を記録したことは、ライト層の獲得というよりはコアファンの熱量に因るものと考えるのが自然ではないかというのが私見です。LINE MUSICは昨年秋に再生回数のカウント方法を変更しましたが(上記参照)、その状況下で他サービスも含め900万超えの再生回数を記録したのはその熱量ゆえと言えるでしょう。

 

 

この仮説から、BE:FIRST「Smile Again」が今後1ヶ月におけるビルボードジャパンソングチャートにおいて好調をキープできるかは難しいものと考えます。再生キャンペーンは2週間設けられているものの、一定の再生回数ハードルをクリアすれば(たくさん聴いた方の当選確率がアップするとはいえ)再生回数が落ちる可能性があります。またフィジカルセールスは加算2週目以降、売上枚数が大きく下がる傾向にあります。

BE:FIRST「Smile Again」の獲得ポイントの大きさは見事ながら、内容からはライト層の取込よりもコアファン間でこれまで以上の連帯があったと推測が可能です。そして次週以降のチャートで急落するならば真の社会的ヒット曲とは言い難いでしょう。上位進出もさることながらそれ以上にロングヒットすることこそビルボードジャパンにおいて、そして真の社会的ヒットに成るために重要というのは以前から語ってきたことです。

実は今回、BE:FIRST「Smile Again」がストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートで2位となり係数処理適用を免れたことも高得点獲得の要因です。LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲がStreaming Songsチャートを制した場合、指標化の際に係数処理が適用されます。ただその対象はあくまで首位獲得曲のみであり(上記参照)、今回はキャンペーン非適用のYOASOBI「アイドル」が強すぎたため適用されなかった形です。

 

 

 

今回の動向を踏まえ、まずはビルボードジャパンに今一度提案します。

ひとつはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲すべてに係数処理を適用するようチャートポリシー(集計方法)を変更することです。現状のチャートポリシーならば、キャンペーン採用曲がこのチャートでの首位を"敢えて"狙わないという不健全な心理も生まれかねません。その心理を摘むのみならず、ライト層の人気を可視化する接触指標にコアファンの熱量を過度に反映するのを防ぐことが係数処理の広い適用により可能となります。

ただしコアファンの熱量すべてを否定してはいけません。また施策の存在は自然であり、重要なのは過度な施策に対し毅然と対応することです。そしてチャートポリシー変更と共に、フィジカルセールスやフィジカルセールス的なストリーミングの動向がみられた場合は尚の事、それら作品の加算2週目以降における動向を注視することや接触指標の重要性等、チャート設計のスタンスやチャートの見方を伝えることを求めます。

 

そして、コアファンの熱量を強く用いたフィジカル購入施策やLINE MUSIC再生キャンペーン等がコアファンの物理的もしくは精神的(またはその両方)を著しく疲弊させる可能性が生じることを、運営側が強く認識する必要があるものと考えます。これはBE:FIRSTに限らず、多くの歌手側に対して願うことです。

良い作品を推し出す際にライト層にどうリーチさせるかを運営側、コアファンそれぞれが考えることがより重要であり、双方が議論できる場を設けているならばそうすることがより健全だと考えます。昨日のエントリーにて紹介したYOASOBI「アイドル」における"活用"の多さは、ひとつの参考になるのではないでしょうか。