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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2020年度のソングスチャートで見えてくる、"日本のアメリカ化"と"アメリカの日本化"

ビルボードジャパンの年間チャートが12月4日、米ビルボードの年間チャートが現地時間の12月3日(日本時間の4日)に発表されたことを受けて、一昨日昨日と続けて日米の年間音楽チャートを踏まえたトピックスを10項目ずつ取り上げました。

ビルボードソングスチャートにおいては、掲載した表を一部変更し本日差替しています。

 

さて、米ビルボードソングスチャートで用意した一覧表をビルボードジャパンでも作ってみようと思い、総合ソングスチャート100位までの表を用意。構成8指標のうち順位が判明しているシングルCDセールス、ダウンロードおよびストリーミングの100位までの順位を記載し、さらに総合100位未満でも3指標いずれかが50位以内に入っている曲を追加しました。

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そしてあらためて、米ビルボード年間ソングスチャートにおける表も紹介。アメリカの場合はストリーミング、ラジオエアプレイおよびダウンロードの3指標のみで構成され、各指標の年間順位は75位までが記されています。

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ここから見えてくること、それはビルボードジャパンソングスチャートのアメリカ化、そして米ビルボードソングスチャートの日本化です。

 

ビルボードソングスチャートでは3指標のトップ10がいずれも総合52位以内に入っていますが、その中で1指標のみ10位以内且つ他指標が75位未満なのはBTS「Dynamite」のみであり、如何に所有指標が突出したヒットだったかが解ります。また各指標50位以内に入りながら総合100位以内を逃した曲については、ストリーミング2曲、ラジオエアプレイ2曲に対しダウンロードが8曲と多いのも特徴で、所有指標に偏った曲が上位に進出するのが難しいことは、黄色で示した首位獲得曲のうち歌手のホームページでレコード等を販売し発送ではなく購入段階でダウンロード指標に加算、さらには到着までの間に別途用意されたデジタルダウンロードも加算という仕組みを活用したフィジカル施策を実行した曲が総合順位において低かったことからも明らかです(ドレイク「Toosie Slide」、およびこの施策を実質無効化した米ビルボードのチャートポリシー改定以降に登場した「Dynamite」およびカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」を除く)。

 

一方のビルボードジャパンソングスチャートも同様に所有指標、とりわけシングルCDセールスが突出した曲の総合での強くなさが目立ち、シングルCDセールス上位50曲のうち30曲が総合100位以内に入っていません。これはダウンロードの15曲を大きく上回ります。さらにシングルCDセールス10位以内の作品はすべてダウンロードおよびストリーミングが100位未満であり、他指標を獲得していればさらなる上昇が見込めたと考えるのは自然なことです。

他方で、ストリーミング(日本においてはサブスクの再生回数に基づくもの。米ではサブスクに加えYouTubeの再生回数もストリーミングに含まれる)をみると、同指標50位以内にランクインした曲はすべて総合100位以内に入っているのです。この点から、ストリーミングを制した曲が総合ソングスチャートで強いことは自明と言えます。ストリーミング上位10曲は総合16位までに入っており、ダウンロードの21位を上回っています。そしてストリーミング上位50曲における週間チャートでの期間内最高位はONE OK ROCK「Wherever you are」の58位であり、同曲は年間76位にランクイン。ダウンロード年間50位以内における週間チャートの期間内最高位はFictionJunction feat. LiSA「from the edge」の76位ですが同曲は年間100位未満であることから、接触指標群が強ければロングヒットとなり週間順位は高くなくとも年間チャートで存在感を示すと言えます。一方でシングルCDセールス年間50位以内における週間チャート最高位はNMB48「初恋至上主義」の26位ですがこれは最浮上に伴うものであり、最浮上を除けばすべて週間トップ10入りを果たしています。年間チャートの順位の高くなさを踏まえれば、シングルCDセールスが突出している曲は瞬発的なヒットにとどまっていることが見えてくるのです。

 

 

ゆえに、米ビルボードソングスチャートにおける所有指標が目立った曲の高い週間順位と低い年間順位の乖離は日本的と言え、一方でビルボードジャパンソングスチャートにおける接触指標が好調な曲の低い週間順位と高い年間順位の乖離は米的になったと考えます。

ビルボードソングスチャートにおいてはフィジカル施策を実質無効化するチャートポリシー変更を実施済ですが、日本はどうなっていくのか注目したいところ。ダウンロードは緩やかにダウンし、ストリーミングが右肩上がりであることから、今後は接触指標群に強い曲のさらなる年間上位進出が予想されますが、シングルCDセールスについてはもう少しウェイトを下げることを議論のテーマに掲げても好いのではないかと思う自分がいます。