このブログでは毎週火曜、米ビルボードソングスチャート速報を翻訳して紹介します。
速報を記したブログでは、現在では元記事にあること以外基本的に書かないことを信条としているのですが、昨日のエントリーでは次週9月11日付で大きく動くだろう旨を掲載しました。ひとつはBTS「Butter」にメーガン・ザ・スタリオン参加版が加算されることでの変動、そしてもうひとつはカニエ・ウェスト『Donda』収録曲の大量エントリーです。
カニエ・ウェスト、10thスタジオ・アルバム『Donda』を遂にリリース https://t.co/Sgq6rEdum8 pic.twitter.com/FxM1NRKAbZ
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年8月30日
全27曲入りの『Donda』は当初のリリース予定日から1ヶ月以上遅れ、8月29日日曜に突如リリースされました。それでもカニエ・ウェスト側は収録内容についてレコード会社側を強く疑問視しており*1、日曜リリースという点も含めて違和感が拭えない部分はあります。
それでも、この『Donda』が如何に多くの方に切望されていたか、ストリーミングからはっきりと見えてきます。
カニエ・ウェスト、『Donda』リリース初日の全米でのApple Musicストリーミング数が6000万回越え https://t.co/Anc2HlWzZ2 pic.twitter.com/UQf3d5nMnV
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年8月31日
『Donda』はSpotifyにおいても、『全世界ストリーミング数は9400万で、同サービスにおける歴代2位を記録』したと報じられています(『』内はいずれも上記記事より)。となると、個人的に強く気になるのが次週のソングスチャート。特に米ビルボードでの占拠に注目したいところです。
アメリカのSpotifyにおける8月29日付デイリーチャート(→こちら)および8月30日付(→こちら)をみると、『Donda』収録曲の席巻状況がよく解ります。解禁日にはアルバムから25曲が36位までに登場し且つトップ10を独占、翌日には33位までに25曲が入り、12位までを占拠しているのです。Spotifyは米ビルボードソングスチャートを構成する指標のひとつ、ストリーミングに含まれます。
アメリカのソングスチャートは金曜が集計期間初日となるため日曜解禁の『Donda』収録曲は基本的に不利となるのですが、最新米ビルボードソングスチャートで4連覇を達成したザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」が次週9月11日付の対象期間となる8月27日以降に米Spotifyで7,327,819回再生を獲得したのに対し、カニエ・ウェスト「Jail」はわずか2日間で8,395,036回再生を記録し大差をつけているのです。
アルバムの勢いは、同じくストリーミング指標を一要素とするソングスチャート(Hot 100)でも示され、「Follow God」が7位に入ったのを皮切りに、「Closed On Sunday」が17位、「Selah」が19位など、62位までに11曲全てがランクイン。
全編ゴスペルとなった前作『Jesus Is King』は、収録曲すべてが2019年11月9日付米ビルボードソングスチャート100位以内に登場しました(同日付チャートはこちら)。ゴスペル曲がソングスチャートに大挙登場することの凄さについては自分がReal Soundへ寄稿した上記記事をご参照いただくとして、よりヒップホップ色の強い『Donda』は前作以上のソングスチャートでのアクションを示すことは間違いないはずです。
米ビルボードソングスチャートはストリーミングのほか、ラジオそしてダウンロードの3指標で構成されています。初登場時は基本的にラジオが弱いもののデジタル2指標が十分補完可能と言えるため、『Donda』収録曲の大挙エントリーが予想できるのです。
となると、次週のソングスチャートで"消える"曲が大挙出現する可能性があります。
米ビルボードソングスチャートにはリカレントルールが存在します。これはチャートが新鮮なものであり続けることを目的に、一定週以上ランクインした曲が一定の順位を下回った際にチャートから除外するというもの。1990年代前半には20週を超えてランクインした曲が50位を下回れば除外するルールを適用し、2015年12月からは52週を超えてランクインした曲は25位を下回った段階で除外するルールを追加。さらに現在では、極力なアルバムがチャートに初登場したタイミングで収録曲がストリーミングポイントを武器に大挙ソングスチャートにエントリーを果たすことから、それらの曲に押し出されてリカレントルールが適用される例も増えました。
最新9月4日付米ビルボードソングスチャートの11-20位を上記に(Hot 100はこちら)。『20週を超えてランクインした曲が50位を下回れば除外』『52週を超えてランクインした曲は25位を下回った段階で除外』というリカレントルールの下、次週カニエ・ウェストが大挙エントリーを果たせば 、史上最長となるソングスチャートエントリーを90週に伸ばしたザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が次週消える可能性があるのです。
カニエ・ウェスト『Donda』は次週、米ビルボードアルバムチャートでの首位初登場が予想されます。ソングスチャートにおいては昨日も触れたBTS「Butter」のメーガン・ザ・スタリオン参加版効果を確認すると共に、カニエ・ウェストの大挙エントリー、さらにはザ・ウィークエンド「Blinding Lights」等がリカレントルール適用で消えるかもしれない点に注目しましょう。
(なおアメリカでは9月6日月曜が祝日のため、米ビルボードソングスチャート速報は日本時間の9月8日水曜に発表される可能性が高いと思われます。)