イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

THE YELLOW MONKEY「未来はみないで」、エミネム feat. ジュース・ワールド「Godzilla」から感じるサブスク歌詞表示の重要性

一昨日発表された3月30日付ビルボードジャパンソングスチャートでは、THE YELLOW MONKEY「未来はみないで」が登場2週目にして10位に上昇、トップ10入りを果たしました。

Spotifyで複数回聴くうちにこの曲の好さにハマったのですが、同サービスで表示される歌詞を見て、その韻の踏み方に唸らされた次第です。ながら聴きだけではその細工に気付かなかったかもしれません。

 

その歌詞(ヒップホップにおけるリリック)の重要性を感じる出来事が最近みられました。米ビルボードにおいてはアルバムがチャートに初登場を果たす週、収録曲も大挙上昇することはよくありますが、アルバムの勢いが落ち着くのと比例して曲もダウンするかそれともキープし続けるかは、曲の内容もさることながらその施策が重要になってきます。その点において、この曲は成功例と言えるかもしれません。

今年2月1日付の米ビルボードにおいて、『Music To Be Murderd By』でアルバムチャートを制したエミネムは、ジュース・ワールドをフィーチャーした「Godzilla」を同日付のソングスチャートで3位に送り込みました。

翌週12位に急落し、以降20→28→36→37→42位とダウンの一途を辿るかと思いきや、3月21日付で32位、そして最新3月28日付では23位に浮上。前週はリル・ウージー・ヴァートが大量エントリーを果たす中で上昇に転じたことに驚きますし、最新週ではさらに上昇を果たしています。

上記ミュージックビデオのリリースは日本時間の3月10日。画面左下に登場するレモネードのパッケージは、リリカルレモネードという、現在のヒップホップを牽引すると言っても過言ではないメディアを示すマーク。その起業者、コール・ベネットがビデオの監督を務めています。

アルバムリリースから2ヶ月近く経過してからのビデオの公開は遅い気もしますが、そもそもアルバムが事前のプロモーションなしに突如リリースされたことを踏まえれば、ミュージックビデオの制作自体予定がなかったのかもしれません。そして、2月1日付米ビルボードソングスチャートで最高位にランクインしたのが「Godzilla」だったことから、この曲を制作曲に決めたものと考えます。リリカルレモネードはジュース・ワールドの輩出に大きく貢献したため、エミネムがリリカルレモネードにお願いしたのかもしれません。

ミュージックビデオ公開初週分の再生回数は3月21日付ソングスチャートのストリーミング指標に寄与していますが、そこに至るまでにエミネムはこの「Godzilla」で魅せた高速ラップについて”#GodzillaChallenge”と名付け挑戦を煽ったことで、曲が先月末あたりからSNSで人気を博したのです。

リリックビデオは米では当然になりつつあるものの、一週間後にミュージックビデオを公開するならばわざわざ制作しなくとも…と一瞬思うのですが、エミネムの挑戦に応えたい人を惹き込むにはうってつけの動画だったわけです。これらビデオの存在も相俟って、3月中旬には米Spotifyデイリーチャートにおいて「Godzilla」が10位台まで回復し、米ビルボードでも上昇しているのですから、このリリックを意識したキャンペーンが功を奏したと言えるでしょう。そのSpotifyでも「Godzilla」のリリックがきちんと表示されており、リリックを見ながら聴いて覚える方のニーズにSpotifyが応えていると言えます。

 

しかし、Spotifyでは特に新曲において、歌詞表示が不十分な状態です。たとえば日本向けのプレイリスト”New Music Wednesday”では、新曲に入れ替わる直前の24日夕方の段階で歌詞が掲載されていたのが72曲中16曲、わずか22%しかありませんでした。洋楽においてはCD全盛の頃から輸入盤のブックレットに歌詞(リリック)が掲載されていないのがデフォルトだったのでやむなしとは思うのですが、一方で邦楽は歌詞掲載が当たり前だったと考えるに、歌詞が気になっても未掲載と知ったユーザーが曲に対してマイナスのイメージすら抱きかねないと思うのです。歌詞未掲載の理由は解りかねますが、是非とも歌手やレコード会社側には歌詞を発表当日のタイミングで掲載すべく動いてほしいと思いますし、Spotify側は歌手側に働きかけてほしいと思います。