今週水曜に発表された、最新3月30日付ビルボードジャパンソングスチャートではAKB48「失恋、ありがとう」が首位を獲得しました。一昨日のブログでも紹介しています。
一方、今週シングルCDをリリースした乃木坂46「しあわせの保護色」は、次週4月6日付の首位獲得が濃厚。今作もシングルCDではミリオンセールスが見込まれています。
【先ヨミ】乃木坂46『しあわせの保護色』が944,475枚を売り上げ首位独走中 μ's/Aimerが続く https://t.co/MYi7GRoDUd pic.twitter.com/0ubnOOvR0h
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年3月26日
この「しあわせの保護色」、最新ソングスチャートにおいてCDリリース前週にもかかわらず、配信解禁が功を奏し19位に上昇しています。
この動き、AKB48「失恋、ありがとう」と比較すると大きな違いが見て取れます。
一昨日も記載した通り、「失恋、ありがとう」はサブスクの再生回数を基としたストリーミングや動画再生といった接触指標群が300位未満である一方、「しあわせの保護色」ではCDセールス反映の前週ながら既に300位以内にランクイン。また「失恋、ありがとう」はシングルCD初加算週の前週が100位未満(300位以内)であることも解ります。
実はこの2曲の動向、AKB48と乃木坂46、もっと言えばAKBグループ(48グループ)と坂道グループとの違いを端的に表していると断言してよいでしょう。シングルCDに係数が適用されるようになった2017年度以降にリリースされた、AKB48および乃木坂46のシングルCD表題曲における、シングルCDセールス初加算週前後の3週分のチャート動向をみると明らかです。
まずはAKB48。
そして乃木坂46。
実は「しあわせの保護色」におけるシングルCDセールス加算前週の順位は、2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおいては最も低いのですが、一方でAKB48のシングルCDセールス加算前週の順位は「#好きなんだ」の36位が最高という状況。また接触指標群にも大きな違いがありますが、これは坂道グループが特段高くなっているものであり、対してAKBグループのみならず多くのアイドルにおける弱点となっていることは以前記載しています。
しかしながら上記ブログエントリーの内容に加え、シングルCDセールス加算前週における【ダウンロードの順位】、そして【総合ソングスチャート100位以内の在籍曲数】にも大きな差があることが解ります。
アイドルファンにおいてはダウンロードよりもシングルCDという形で所有したいという思いが強いことは、CDがグッズの側面も持ち合わせていることを踏まえれば自然なこと。しかし坂道グループはダウンロードも(CDの売上ほどではないにせよ)結果を残しています。これは坂道グループのファンが他のアイドルファンより、CDが出るまで待てないという曲への意欲の高さゆえかもしれません。また、ダウンロードはコアなファンではなくとも気軽に曲単位(1曲あたり300円未満)で購入出来るのですが、AKB48グループにおいてはその接触指標群の弱さを踏まえるに、ライト層が付いていないことも予想されます。特に近年の楽曲におけるダウンロードの弱さは、チャートを分析するあささんが書いたAKB48のダウンロードランキングを見れば明らかです。先述したシングルCDの係数使用についても記載されておりますので、勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。
そして乃木坂46における100位以内在籍曲数の多さについては、曲がロングヒットしていることに加え、カップリング曲のランクインはシングル全体の注目度が高いことの証拠といえます。たとえば先週、Twitterにて乃木坂46「しあわせの保護色」のカップリングである「I see...」がSMAPっぽいと盛り上がっていましたが、実際この「I see...」は最新週で30位まで上昇。
【ビルボード】Official髭男dism「I LOVE...」が史上初の900万回再生超えでストリーミング6連覇 乃木坂カップリング曲が早くもトップ100入り https://t.co/KX2YR1qMG5 pic.twitter.com/oIX9u8UnXE
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年3月25日
「I see...」はストリーミングで55位に初登場し、同指標にて「しあわせの保護色」超えを果たしていますが、たとえばこの曲をSpotifyにて検索するとシングルCDの様々なタイプに収録されたカップリング曲を一堂に会したアルバムとして配信されているところにたどり着きます。言い換えれば、シングル表題曲を検索すれば「I see...」にたどり着くわけで、このような分かりやすいパッケージ化の戦略が功を奏したと言えるでしょう。事実、こちらもカップリング曲である「じゃあね。」もまた、総合チャートにランクインを果たしています。
他方、SpotifyでAKB48「失恋、ありがとう」を確認すると、シングルCDの種類毎にアルバムとして括られているため、カップリング曲にたどり着くまでにワンクッション多くかかってしまうのです。この配信方式が再生回数獲得の弊害になっているのではないかと考えるのですがいかがでしょう。
(他にタイプB・Cおよび劇場盤、さらに単曲のアルバム化版も有り。)
AKB48「失恋、ありがとう」も乃木坂46「しあわせの保護色」も、共にシングルCDリリースに先駆けて先行解禁されていますが、ともすればファンの意識やレコード会社側の戦略の差が、シングルCDセールスだけに頼らないチャートアクションに成るか否かに繋がっていると言えるでしょう。これを踏まえ、曲をより長く愛してもらうための戦略を行い、チャートの順位と曲の知名度を比例させ歌手のブランドを高めていくことが、アイドル歌手側やレコード会社側には求められるはずです。