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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『凪のお暇』主題歌はトップ10入りなるか? miwa「リブート」に必要なブースト

8月26日~9月1日を集計期間とする、9月9日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはKing & Prince「koi-wazurai」が首位に立ちました。

シングルCDセールスおよびルックアップを制し、Twitter2位およびラジオエアプレイ8位と4指標がトップ10入り。初週のシングルCD売上枚数自体は前作「君を待ってる」の400315枚に及ばなかったものの、シングルCDセールス初加算週のポイントは前作の107.4%と伸びています。

 

さて今週はmiwa「リブート」に注目。デジタル2週先行リリースのこの曲がシングルCDセールス加算3週目にして16位にランクイン。面白いのは「リブート」が上位20位内に入った曲の中で唯一、トップ10入りした指標がひとつもないこと。しかも2週連続でこの状況であり、突出した指標に欠けている反面、安定しているとも言えます。この状況は是非、CHART insightから確認してみてください。

 

さてこの「リブート」、前のシングル「アップデート」(2018)に大きく勝っています。「アップデート」はデジタル先行ではないため単純比較は出来ませんが、シングルCDセールス初加算週を含む5週分の動向を確認すると差は歴然です。

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

   (※カラオケ指標は2019年度より導入のため、2018年12月10日付より加算対象となっています。)

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2018/5/7 -           -    
2018/5/14 -       -   96    
2018/5/21 13 2184 10 23 - 17 16 46    
2018/5/28 47 942 43.1% 43 57 - 23 68 63    
2018/6/4 - 85 -   80 24 -    
 

日付 順位 P 前週
CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/8/12 43 1520   18 - -   56 -  
2019/8/19 25 2154 141.7%   15 26 57   73 96  
2019/8/26 14 3668 170.3% 12 11 19 7 65 59 97  
2019/9/2 20 2766 75.4% 40 12 13 19 - - 71  
2019/9/9 16 3052 110.3% 68 12 11 72 37 62 51 -

シングルCDセールス加算初週の売上は「アップデート」が9569枚に対し「リブート」が8173枚。しかし「アップデート」は100位以内在籍がわずか2週にとどまる一方、「リブート」はデジタル先行分を含め既に5週連続100位以内在籍、しかもシングルCDリリース後もダウンロードは落ちてはいません。

これは主題歌に起用された『凪のお暇』(TBS 金曜22時)効果と言えるでしょう。週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』による各クール毎のドラマ満足度調査、その初回満足度で今年7月クールは『凪のお暇』が94/100となり、2位の『ノーサイド・ゲーム』(TBS 日曜21時)を17ポイント上回り断トツの首位に。

ドラマ満足度と主題歌のチャートアクションは比例するだろうことは8月26日付ビルボードジャパンソングスチャートで躍進するも「Lemon」に及ばなかった米津玄師「馬と鹿」、その理由を考える(8月22日付)で触れました。『凪のお暇』はリアルタイム視聴率こそ現段階での平均が10%に満たないながら、リアルタイムとタイムシフトの合計から重複分を除いた総合視聴率では常時17%を超えており人気も上々、主題歌である「リブート」を後押ししているだろうことは容易に想像が出来ます。

 

実はmiwaさん、「アップデート」から「リブート」に至るまでに大きな変化が。「アップデート」も収録した昨夏リリースの『miwa THE BEST』の後、リリースしたデジタル限定曲のミュージックビデオはフルバージョンで掲載されています。

これがデジタルに明るい姿勢を示していると支持を集めたのかもしれません。今回の「リブート」は徐々に動画再生指標が上昇。言い換えればショートバージョンはチャートアクションに有利には働かないということですし、ダウンロードやストリーミングの安定は動画再生の好調さと密接にリンクしている可能性は高いですね。

 

そして大きいのはルックアップ。パソコン等にCDを取り込んだ際のインターネットデータベースへのアクセス数を示す指標で、「リブート」は前週100位圏外(300位以内)にダウンしながらも今週急浮上。その理由は、8月14日にリリースされたCDのレンタル解禁日が先月末日だったため。

このレンタル解禁日設定で思い出したのが、上記リンク先で例示したあいみょん「今夜このまま」(2018)。ドラマ主題歌ながら解禁日を急遽遅らせたことでルックアップは同種の動きとなっています。なお、次のシングル以降あいみょんさんはレンタル解禁をシングルCD発売と同日に設定しており、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法を採り始めています(その最たる成功例がOfficial髭男dism「Pretender」や「宿命」と捉えています)。

miwaさんの場合、前作「アップデート」もレンタル解禁をCDリリースの17日後に設定しており、レンタル解禁までにCDの販売数を伸ばしたいとする歌手側もしくは所属レコード会社の方針が想像出来ます(今夏のドラマ主題歌では米津玄師「馬と鹿」やCHEMISTRY「Angel」も同様の設定となっており、おそらくソニーの方針ではないかというのが私見です)。しかし、たとえばmiwaさんにおいてはそれでシングルCDセールスが伸びたとは言い難いかもしれず、”CDセールスとレンタルで分けずに全指標で曲を売り込む”手法が必要ではなかったかと思うのですがいかがでしょう。

 

とはいえ既にリリース済であるこの「リブート」、総合でのトップ10入りのためにはデジタル指標群の維持に加え、レンタル展開の徹底によるルックアップ上昇が鍵と言えます。最新9月9日付のチャート構成比ではシングルCDセールスをルックアップが上回っているため、シングルCDセールスおよびダウン傾向のラジオエアプレイをルックアップがどうカバーするかが重要です。勿論『凪のお暇』が高品質のまま維持し新たな視聴者を獲得することが重要ですが、ルックアップ次第ではトップ10入りの可能性が高いと言えるでしょう。レンタル解禁の影響を1週間丸々受ける次週のチャートアクションに注目です。