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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「炎」はCDセールス加算2週目でポイント前週超え…LiSAの勢いが凄まじい11月2日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

10月19~25日を集計期間とする11月2日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、前週初の頂点に立ったLiSA「炎」が連覇を達成しました。シングルCDセールス加算2週目にして前週比117.8%となる36504ポイントを獲得、また2位には「紅蓮華」が浮上しています。

「炎」はシングルCDセールスこそダウンするも65000枚→38558枚と大きくは沈まず。ダウンロードは144446DL→136233DLと横ばいに近く(2週連続の10万DL超えは今年度初)、そしてサブスクの再生回数に伴うストリーミングは8989155回→18901974回(前週比210.3%)となり、ストリーミング再生回数の歴代記録を大きく更新しています。映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開4日目以降が最新11月2日付における集計期間ですが、映画を観た方を中心とする「炎」へ興味を示した方の行動がフィジカルよりデジタル、所有以上に接触であることがよく解ります。

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他にも「炎」は動画再生指標を制覇。またカラオケ指標では前週の300位圏外から18位にジャンプアップしており、同指標での急上昇には驚かされます。

 

前週と今週のチャート構成比を、CHART insightからみてみましょう。

・10月26日付

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・11月2日付

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前週(上)と今週(下)ではシングルCDセールス(グラフの黄色で表示)とダウンロード(同紫)による所有指標のチャート構成比率が下がり、ストリーミング(同青)と動画再生(同赤)による接触指標の比率が上がっていることが解ります。シングルCDセールスに長けた曲が加算2週目の同指標ダウンをデジタル、特に接触指標で補えなければポイントの急落は必至ということをこのブログでは幾度となく申し上げていますが、その意味では「炎」は理想の動向を描けていると言えるでしょう。

次週以降はルックアップ(上記チャート構成比においてオレンジで表示)の比率の上昇が予想されます。ルックアップとはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数のこと。上昇が見込まれる理由はCDレンタルが今月31日土曜に解禁されるためで、アルバムチャートの登場3週目以降におけるルックアップの上昇もこれに伴うものです。次週はシングルCDセールスやラジオエアプレイ指標がダウン傾向となるかもしれませんが、その分をルックアップがある程度補えるかもしれません。なおレンタルに伴うルックアップは次週の集計期間において2日分加算され、再来週からは1週間フルに加算されます。

 

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テレビアニメ版主題歌「紅蓮華」が同曲最高位タイの2位に到達。前週比137.2%となる11892ポイントを獲得し、同曲初の1万ポイントを突破。さらにカラオケ指標は7月20日付以来となる首位、そして動画再生指標は過去最高を2つ上回る6位に達しています。動画再生指標はショートバージョンの曲においては不利になることを以前からお伝えしていますが、その状況で6位というのは見事と言えます。一方で、このタイミングにてフルバージョンを解禁すればさらなる上昇も見込めるかもしれません。「紅蓮華」が接触指標であるストリーミングが2週連続で過去最高を更新している状況を踏まえれば、接触指標の充実は尚の事必要ではないでしょうか。

 

接触指標の充実といえば、椎名豪 featuring 中川奈美「竈門炭治郎のうた」。ダウンロード指標で3位に入り、総合でも56位に。昨年9月16日付以来となる100位以内エントリーを果たしていますが、同曲のチャート構成はそのほとんどがダウンロードであり、わずかにTwitter指標が加算される程度。サブスク未解禁およびミュージックビデオがない(もしくは未解禁の)ため、さらなる上昇が見込めない状況になっているのは勿体無いと感じます。

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とはいえその「竈門炭治郎のうた」が 「炎」「紅蓮華」に次いでダウンロード指標で3位に入り、さらにはテレビアニメ版エンディングテーマであるFictionJunction feat. LiSA「from the edge」も7位に上昇。ダウンロード指標トップ10のうち半数近くを『鬼滅の刃』関連曲が占める結果となっており、『鬼滅の刃』が社会現象であることがよく解ります。

 

 

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一方、シングルCDセールスで「炎」に敗れ2位となったA.B.C-Z「頑張れ、友よ!」は、4182ポイントを獲得し総合13位発進。2018年度以降の作品はシングルCDセールス初加算週において5~8位内に登場していたのですが、今回トップ10入りを逃した形です。

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今年度のビルボードジャパンソングスチャート10位、および50位のポイント推移をみると、10位のポイントは6月29日付以降4千上回る状態が続いています。また50位のポイントも2千前後を推移しており、先にグラフで示したストリーミング指標の上昇がポイントの底上げにつながっているのは間違いないでしょう。平均ポイントの上昇、そして先述した『シングルCDセールスに長けた曲が加算2週目の同指標ダウンをデジタル、特に接触指標で補えなければポイントの急落は必至』という事態を踏まえれば、如何に接触指標群を充実させるかがロングヒットのみならずシングルCDセールス初加算週の勢いにもつながるかは自明と言えます。