イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

動画、カラオケ…ジャニーズ曲の接触指標群からみえてくる、ライト層獲得への疑問

毎週木曜はその前日に発表されたビルボードジャパンソングスチャートについて注目点を紹介しています。最新11月16日付においては、最後にこのようなことを書きました。

ちなみに「NOT FOUND」においては今週、動画再生指標が2週ぶりに300位以内に復活。同指標は10月19日付でミュージックビデオ公開効果により40位に登場していますが、仮にその時の勢いが今週にも反映されていたならば、「炎」を逆転できた可能性があったのかもしれません。そしてこの動画再生指標の推移から、特にジャニーズ事務所所属歌手の曲において獲得ポイントを上乗せするためのヒントがみえてくるのではないかと考えています。

仮にミュージックビデオがダウンロードやCDリリースに先立って公開されたとしても、動画再生指標はダウンロード等の解禁タイミングで伸び、ロングヒットを続ける曲は高値安定する傾向があるのですが、「NOT FOUND」は公開のタイミングが現時点で最も順位が高く、前週は一旦300位を下回りました。これに違和感を覚えた次第です。

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上記チャート推移(CHART insight)において黒の折れ線が総合チャート、赤が動画再生指標の順位を示します。注目作品の動画再生が思うほど浮上しない要因にはいくつか理由がありますが、ショートバージョンのために接触者が(何度も)再生しないこと、またそもそもその動画の存在が気付かれていないことも要因と言えるでしょう。ショートバージョンにおける再生回数問題についてはLiSA「紅蓮華」をはじめとしてここで幾度となく取り上げていますが、気付かれていない問題においては、ジャニーズ事務所所属歌手はすべてデジタル未解禁と思われているゆえにYouTubeに上がっていないという認識が少なからずあるのかもしれません。その仮定が正しいとすれば、「NOT FOUND」のような解禁初週における動画再生指標の上位進出はコアなファンによる再生が主であり、そのコアなファンがCDリリースのタイミングでCDに同梱される映像盤に視聴先を移行することで、CDセールス初加算週の動画再生が解禁時より減るという流れもまた生まれているのかもしれません。ジャニーズ事務所所属歌手ではショートバージョンながらミュージックビデオをアップする方自体少ないのですが、この”動画再生指標がシングルCDセールス初加算週のタイミングで伸びない問題”はKing & Prince「Mazy Night」でも見て取れます。

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動画再生指標を主に支えているのはコアなファンではないか、との仮説を立てましたが、コアなファンが支える指標はカラオケにおいても同様ではないかと捉えています。

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今年デビューしたSixTONESおよびSnow Manのデビュー曲のチャート推移において、動画再生指標は総合チャートの最上位(イコールシングルCDセールス初加算週)に近いところで最も高い位置につけており、この点ではSexy Zone「NOT FOUND」のような事態は起きていません。

他方、濃い緑で表示されるカラオケについては、SixTONES「Imitation Rain」はシングルCDセールス初加算週に、Snow Man「D.D.」はその翌週に300位以内に登場すると、それぞれその翌週には100位以内に登場。解禁から間もない急浮上は、2週目の首位獲得時にカラオケ指標が18位に初登場したLiSA「炎」を思わせます。

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しかし、「Imitation Rain」のカラオケ指標100位以内在籍期間は6週、「D.D.」は5週のみ。火が付くスピードの速さは特筆すべきですが、通常カラオケ指標は下降時もなだらかであるのが特徴であり、この早々のランクダウンは異質な動きと言えるのです。これはおそらく、コアなファンによる盛り上がりが反映されている(もしくは「Imitation Rain」についてはソングライターであるYOSHIKIさんのファンも含まれるものと考える)一方で、ライト層へ広く浸透しているとは言い難いからではないかというのが自分の見方です。仮に浸透していたならば、より長く100位以内に在籍したと言えるでしょう。

 

これら動画再生およびカラオケといった接触を示す両指標からは、コアなファンの熱心さが持続しないという点も見えてきます。逆に、中長期的にヒットする作品のチャート推移をみれば、如何にライト層を惹き付けているのかもまた解るのではないでしょうか。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手の作品は、コロナ禍においてもシングルCDセールスが極端に下がることはなく、またTwitter指標の堅調やルックアップの上昇、ラジオエアプレイの好位置でのランクインもみられます。これらはコアなファンの多さだったり、ビルボードジャパンソングスチャート対策がより強く反映された結果と捉えることが可能であり、それゆえミュージックビデオの解禁直後にアクセスしたり、解禁間もないカラオケで盛り上がるというのもまたコアなファンによるアクションと考えるのが自然でしょう。

その一方で、シングルCDセールスやラジオエアプレイの早々なランクダウンを、接触指標である動画再生やカラオケもなぞるのは不自然と言えます。サブスクの再生に基づくストリーミングも含め、接触指標はコアなファン以上にライト層の盛り上がりに支えられているため、接触指標の早々なダウンはライト層への浸透度の高くなさを示していると言えるでしょう。

ではその弱点を克服しようと、コアなファンが毎週のようにカラオケに行って歌い続けようですとか、YouTubeでループし続けようという考えがもしも真っ先に出てくるのであれば、それは正しいとは言えないと強く断言します。なぜならそれら行為はコアなファン自身の負担を時に過剰に強いかねないため。それら行為が全く意味のないことだとは思いませんが、より広めるための活動は何かを探ることのほうが圧倒的に好いはずです。ショートバージョンながらミュージックビデオをYouTubeでアップしていることを広く世間に浸透させることも必要でしょうが、ミュージックビデオをフルでYouTubeに解禁すること、そしてやはりデジタル全体の解禁を行い、ライト層へ裾野を広げることが最優先ではないでしょうか。

 

 

 

2020年度のビルボードジャパン年間チャートは12月4日金曜に公開されます。

SixTONESSnow Manのデビュー曲も上位に登場すると思われますが、シングルCDセールスに強くない、もしくはシングルCD自体リリースしていない曲がより上位に登場する見込みです。であれば、それら楽曲はチャートを構成する指標のどの部分が強かったかを探ることが重要でしょう。CHART insightを探ると長所、そして長所以上に強くない点がみえてきます。機会があれば、また年間チャートが発表になった際には是非チェックしてみてください。

次なるブレイクは確実? 平井大「Stand by me, Stand by you.」に注目

ビルボードジャパンソングスチャートの次なるトップ10入り候補として、平井大「Stand by me, Stand by you.」を挙げさせていただきます。

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5月20日にリリースされた「Life goes on」以降、およそ2週に1曲のペースで配信リリースを続ける平井大さん。第8弾として9月9日にリリースされた「Stand by me, Stand by you.」のチャートアクションをみると(上記チャート推移(CHART insight)参照)、右肩上がりの傾向が解ります。9月21日付で78位に初登場した後、黒で表示される総合順位は一度も下げることなく最新11月16日付では12位をキープ。ポイントも6週連続で上昇しています。

獲得ポイントの4分の3以上を占めるのがストリーミング(青で表示)であり、最新週では6位に上昇。

チャートイン9週目だが、同曲の週間再生回数としては最多となる5,612,173回再生をマークした。その推移は初登場時から手堅く右肩上がりをキープしている。カバー動画や日常系動画のBGMなど、TikTokTwitterでのUGCを要因としたバイラルヒットがストリーミングにも波及した形だ。

この「Stand by me, Stand by you.」、今後のさらなる上昇が期待できます。

 

 

そう考える理由のひとつは、【THE FIRST TAKEへの出演】。ソニー・ミュージックが運営していると思しき一発録りYouTubeチャンネルで、ソニー・ミュージック系列以外で初となるメジャーレーベル在籍歌手の登場が平井大さんであり、披露曲は異なれど大きなインパクトを残しています。

「祈り花 2020」は現段階で147万、「僕が君に出来ること」は76万回再生を記録し、2曲とも先月配信リリースされています。THE FIRST TAKEはLiSAさんやDISH//、YOASOBI等により人気となった音楽コンテンツで、同作への出演は自身の音楽性や才能を広めるのに一役買ったはずです。

 

ふたつ目は【『ミュージックステーション』への出演】。来週(11月27日)放送回に出演します。

現時点で披露曲は発表されていません。通常ならば新たにリリースされた曲を披露するのでしょうが、チャートアクションが好調な「Stand by me, Stand by you.」の可能性もあります。最近番組内で同曲のCMが流れたこともあり尚の事。仮に「Stand by me, Stand by you.」を披露したならば、平井大さん側がこの曲を今後の推し曲に据えたものと考えます。

テレビ番組の出演はチャートアクションの大きな契機になります。現に10月29日放送の『スッキリ』(日本テレビ)ではこの「Stand by me, Stand by you.」を披露、放送日が集計期間に含まれる11月9日付では16→12位、ポイント前週比123.0%を達成しているのです。

 

そして最後のひとつが【各種サブスクリプションサービスでのキャンペーン実施】。

LINE MUSIC、LINE MUSIC BGMのみならず、Apple Music、SpotifyそしてAWAも用いたこのキャンペーンでは「Stand by me, Stand by you.」を指定しているわけではないのですが、平井大さんの楽曲全体への訴求力が高まることは確実。現にSpotifyではキャンペーン開始日以降、「Stand by me, Stand by you.」は連日再生回数が16万を超え、最新11月13日付では4位まで上昇しています。

 

 

YouTubeで”平井大”と検索すると、真っ先に登場するのが「Stand by me, Stand by you.」のリリックビデオであることから、その注目度の高さは保証付き。さらにラジオエアプレイでも2週続けて100位以内に登場していること、最新週のカラオケ指標で100位未満ながら300位圏内に初登場していることで、業界内外で注目されていることも見て取れます。キャンペーンや『ミュージックステーション』出演が契機となり、「Stand by me, Stand by you.」が今年度のみならず2021年度のチャートでも存在感をみせてくれるか注目です。

チャート確認における各種データの公開スケジュール紹介(ウィークリールーティン)

チャートを確認する際のチェック先となるデータについて、その公開スケジュールをまとめてみました。なお今回例として取り上げた記事は11月9~13日の内容であり、また【 】内はこのブログでの内容となります。

 

●月曜

・(早朝) 米ビルボード アルバムチャートトップ10速報発表

ビルボードジャパン シングル/アルバムフィジカルセールス週報発表

 

●火曜

・(早朝) 米ビルボード ソングスチャートトップ10速報発表

・(早朝) 米ビルボード グローバルソングスチャートトップ10速報発表

【(9時までに) 米ビルボード ソングスチャートおよびグローバルソングスチャート速報を翻訳しブログ掲載】

・(夕方~夜) 米ビルボード 各種チャート詳報発表 (米が月曜祝日の場合、翌日にずれ込むこと有り)

 

●水曜

・(12時以降) ビルボードジャパンCHART insight、各種チャート発表

・(夕方) ビルボードジャパン 各種チャート記事登場

 (その他、ダウンロード(ソング/アルバム)、ストリーミング、アニメソングスチャートが発表)

・(夕方) ビルボードジャパン ストリーミング累計再生回数の記録達成曲公表(あれば)

【(夜までに) 米ビルボードおよびビルボードジャパン 最新ソングスチャートを紹介するポッドキャスト公開】

・プランテック ラジオエアプレイ回数チャート発表

 

●木曜

【(9時までに) ビルボードジャパン ソングスチャートについてのブログ掲載】

ビルボードジャパン シングル/アルバムフィジカルセールス速報発表

 

●金曜

ビルボードジャパン ダウンロード・ストリーミング速報発表

ビルボードジャパン TikTok週間楽曲ランキング発表

ビルボードジャパン Heatseekersソングスチャート発表

 

●その他

・(毎夜) Spotify デイリーチャート発表

【(Twitterにて月曜発表) 上位曲の推移を主体とするSpotify週報】

 

このスケジュール(”ウィークリールーティン”とでも言うでしょうか?このような言葉はないかもしれませんが)を読んで、チャート分析に興味を抱く方が増えるならば幸いです。

マイリー・サイラスの最新曲より大胆な、リミックスという名のカバー曲

あまりにも大胆なリミックスです。

1980年代の女性ロック歌手による作品群にインスパイアされて生まれたマイリー・サイラス「Midnight Sky」。とりわけスティーヴィー・ニックス「Edge Of Seventeen」(→YouTube 1981)を強く意識している様子が伺えていたこの曲が、リミックスではさらに(というかかなり)寄せてきているのです。しかもスティーヴィー・ニックス自身を迎えているというのですから興味深いですね。

リリースは11月6日。同日(および一部は前日)にリリースされた作品群を先週のブログエントリーで紹介していたのですが、リミックスがオリジナルといい意味で最も乖離している作品といえば間違いなくこの「Edge Of Midnight (Midnight Sky Remix)」ですね。

 

 

近年のリミックスの中では「Edge Of Midnight (Midnight Sky Remix)」の大胆さがとりわけ光る印象がありましたが、いやその曲以上に大胆すぎるリミックスが存在していたことを思い出した次第。それらはリミックスという名目で、実際は過去の名曲をカバーしているというものなのです。

 

・ブラックストリート feat. ドクター・ドレー & クイーン・ペン「No Diggity」(1996)

リミックスのひとつに、マイケル・ジャクソン「Billie Jean」(→YouTube 1983)のカバーが。それも「No Diggity」のオケを用いています。マイケルのアルバムのプロデュースを務めたテディ・ライリーがブラックストリートの一員だからこそなせる業かもしれません。

 

マライア・キャリー feat. ジョー & ナインティエイト・ディグリーズ「Thank God I Found You」(2000)

リミックスはジョーそしてナズを招いた”Make It Last Remix”。その名の通り、キース・スウェットがジャッキー・マッギーを迎えたR&Bクラシック、「Make It Last Forever」(→YouTube 1988)の完全なるカバーなのです。

 

・マドンナ「Hollywood」(2003)

GAPのCMとして流れたのがこの曲のリミックス、「Into The Hollywood Groove」。自身のヒット曲、「Into The Groove」(→YouTube 1985)を用いて…というか、「Hollywood」のリミックスというよりはほぼ「Into The Groove」になっているのが面白いですね。

 

 

ここ最近のリミックスといえば、オリジナルバージョンのメロディは基本的に変えず、客演を増やす等がメインだったと思われます。それも楽しいですが、リミックスだからこそいい意味で大胆な飛び道具があってよいと思うのです。マイリー・サイラス「Midnight Sky」のリミックスを聴いて、いずれ今回紹介したようなリミックス名目でのカバー曲が登場してほしいと願う自分がいます。

LiSA「炎」がSexy Zone「NOT FOUND」の猛追をかわし4連覇達成…11月16日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

11月2~8日を集計期間とする11月16日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、LiSA「炎」がSexy Zone「NOT FOUND」を抑え4連覇を達成しました。

「炎」は今週30991ポイントを獲得(ポイント前週比は94.4%)。前週は89.9%でしたが、おそらくは今週の集計期間中に祝日があったため思ったほど降下しなかったものと思われます(祝日はストリーミング再生回数が伸びることが、Spotifyデイリーチャートから推測可能)。シングルCDセールスは28832→22928枚(前週比79.5%)、ダウンロードは104204→84631DL(前週比81.2%)、サブスクの再生等に伴うストリーミングは18880651→17925637再生(前週比94.9%)。ストリーミングのポイントは有料サービス会員の1再生と無料会員とのそれでウェイトが異なるため再生回数がそのまま反映されるわけではありませんが、それでも今週も所有指標より接触指標のほうがポイントの下落を抑えられていることが解ります。

接触指標についてはさらに、ルックアップの大きな上昇が見て取れます。最新のチャート推移(CHART insight)はこちら。

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前週のチャート推移は前週のエントリーに掲載。パソコン等への取り込み時にインターネットデータベースへアクセスする回数を示すルックアップはオレンジで表示されますが、比率的には前週の倍近くとなっています。これは前週の集計期間の後半にレンタルが解禁されたことで(前週のルックアップの伸びもそのためですが)、今週レンタルに伴うルックアップが初めて1週間フルで加算。CD購入者によるパソコン等への取り込みも勿論ありますが、レンタルが大きく寄与したものと考えます。

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その前週のエントリーで用い、11月8日付エントリーで改正版を掲載した表も更新。各週の首位獲得曲における獲得ポイントとCD売上枚数、翌週のポイント前週比、そして構成8指標の順位を掲載していますが、LiSA「炎」は4週連続で3万ポイント超えを達成し(4週間の累計ポイントは131311)、さらに2週連続で8指標すべて10位以内に入っています。シングルCDセールスに係数を用いるようになった2017年以降では「炎」がはじめて、シングルCDセールスシングルCDセールスが30万未満ながら週間3万ポイント超えを果たした曲のうち翌週のポイント前週比が5割を超えたのが3週以上という記録を達成したことになります。

 

一方で、2位に入ったSexy Zone「NOT FOUND」の27955ポイントも凄い数字であることには間違いありません。

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レコード会社移籍後初のシングルCD表題曲となる「RUN」は8月17日付で29214ポイントを獲得し総合首位を獲得。前々作から1万2千ポイント以上伸ばしていたのですが、今作も2万8千近いポイントを獲得したことから、Sexy ZoneのシングルCD表題曲におけるCDセールス初加算週の獲得ポイントがネクストレベルに移行したと言えるでしょう。また「NOT FOUND」はルックアップで「炎」に勝っており、購入者やレンタルした方によるパソコン等への取り込み数の多さが判ります。

とはいえ今回は映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』人気が反映した「炎」が強すぎるため、「NOT FOUND」にとっては分が悪かったと言えそうです。今後は翌週以降の動向(順位もさることながら、ポイント前週比がどうなるか)を踏まえ、真の社会的ヒットとなるかを見極めなければなりません。

 

ちなみに「NOT FOUND」においては今週、動画再生指標が2週ぶりに300位以内に復活。同指標は10月19日付でミュージックビデオ公開効果により40位に登場していますが、仮にその時の勢いが今週にも反映されていたならば、「炎」を逆転できた可能性があったのかもしれません。そしてこの動画再生指標の推移から、特にジャニーズ事務所所属歌手の曲において獲得ポイントを上乗せするためのヒントがみえてくるのではないかと考えています。

「カイト」に続きアルバム『This is 嵐』がデジタル未解禁であることへの疑問

検索エンジンからこのブログへたどり着いた方がどのブログエントリーをチェックしたかというのが、はてなブログでは解る仕組みになっているのですが、以前からアクセス数が多かったこちらのエントリーが今月になってさらに浮上しています。

嵐「カイト」はリリースから3ヶ月経った今もデジタル未解禁のままですが、同曲が収録され11月3日にリリースされたアルバム『This is 嵐』もまたデジタルリリースされていません。

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(デジタルプラットフォームでの解禁状況を紹介するためキャプチャを貼付しました。問題があれば削除させていただきます。)

本日現在のSpotifyにおける嵐のページで、最新リリースとして表示されるのはアルバムからのリード曲「Party Starters」であり、オリジナルアルバムも『「untitled」』が直近として表示。また、嵐の公式Twitterにおいては『This is 嵐』のリリースに言及している回数が極端に少なく、下記が唯一のつぶやきとなっています。

直前にリリースされた「Party Starters」が、各デジタルプラットフォームでのつぶやきの引用リツイートの形も含め多く紹介しているのとはあまりにも差があるのですが、これは冒頭で紹介したブログエントリーでも言及した、「カイト」とその5日前にデジタルリリースされた「IN THE SUMMER」との大差を彷彿とさせます。

SNSにおいて「カイト」が「IN THE SUMMER」と比べて圧倒的に紹介されていないことは不自然ですが、仮に「カイト」の未デジタル化が既定路線だったならば、敢えてつぶやかなかったと捉えるのが自然でしょう。SNSとサブスク等の親和性を踏まえれば、つぶやかれた曲がサブスクになかったときのダメージは大きいためつぶやかないほうが得策となり、そうすればデジタルで存在しないことが気付かれずに済む可能性が高まります。

以前このような仮設を立てたのですが、しかし今回はアルバムリリース日に巨大イベントを開催し、関連ワードが同日のTwitterでいくつもトレンド入りを果たしたこと等を踏まえれば、アルバムリリースの旨を伝えないことは機会損失では、アルバムのデジタル未解禁に疑問を抱く方は少なくないのでは…そう捉えるのが自然なことではないでしょうか。

配信を観た方の中にはコアなファンではないものの作品等が気になるというライト層も多数存在したはずで(ただしファンクラブ会員以外が観られるコンテンツは制限されていましたが)、『アラフェス2020 at 国立競技場』を開催した翌日の日本におけるSpotifyデイリーチャート(11月4日付はこちら)では「Party Starters」(66→57位)、「Whenever You Call」(90→82位)、「Turning Up」(117→93位)、「Love so sweet」(152→126位)、「IN THE SUMMER」(200位圏外→162位)、「Happiness」(200位圏外→187位)が200位以内にランクインし、且つすべての曲が前日から順位を上げています。配信を機に接触や所有行動を起こす方が少なくなく嵐の楽曲への興味が高まった以上、デジタル先行曲以外がイベントで披露されなかったとしても『This is 嵐』がデジタル未配信のままであったことは勿体なかったのではと思うのです。コアなファンはその多くがCDを購入するものと考えるため、デジタル解禁でライト層を惹き付けコアなファンに昇華させる意味でも、デジタル化は必須だったと思うのですが。

 

Twitterにおける一部リアクションに納得したのですが、『This is 嵐』の説明欄においてデジタル解禁以降の嵐のアプローチの変化やチャレンジ等が今作に収められたと謳うならば、今作をデジタル化していないということは矛盾と言われてもおかしくないと思うのです(アルバム紹介ページはこちら)。今年新たにデビューしたSixTONESが”ジャニーズをデジタルに放つ新世代。”と謳われながらストリーミングのみならずダウンロードも解禁していないことと同様の違和感を覚えます。

また、デジタル未解禁は海外のライト層、そしてファンにも影響を及ぼします。米ビルボードが9月に新設した2種のグローバルチャートで「Whenever You Call」が100位以内に、「Party Starters」は最新11月14日付Global Excl. U.S.で54位に初登場を果たしており(他方でGlobal 200では100位以内に入らず)、また「Whenever You Call」は米ビルボードがグローバルチャート紹介の記事にて取り上げたこともあり、獲得ポイントの大半が日本からのものであったとしても同チャートにランクインしたことで海外からの注目度が少なからず上昇したと思うのですが、たとえば海外のiTunes Storeをみても『This is 嵐』のダウンロードは行われていません。Twitterにおけるリアクションにはファンの方からのデジタルシングルをCD化してくれて嬉しいという声もみられますが、CD自体の流通量が減った海外のファンやライト層はどうやってアルバム音源を手に入れるのだろうと気に病んでしまいます。

 

 

『This is 嵐』の未デジタル化には何かしらの目的や意図があったと考えられます。おそらくは「カイト」で推測した際と同様に高いCDセールスの確保が目的ではとは思うものの、厳密な理由は本人たちでなければ解らないため推測の域を出ません。ただひとつ言えることは、デジタルを推進してきた歌手が作品によってデジタルで出す/出さないを分けているという状況はフレンドリーとは言い難いのではということです。

「Mood」が首位に返り咲いた11月14日付米ビルボードソングスチャート、「Positions」「Dákiti」が制したグローバルチャートのトップ10をチェック

ビルボードソングスチャート、現地時間の11月9日月曜に発表された最新11月14日付ソングスチャート(Hot 100)は24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」が通算3週目の首位を獲得しました。

前週はアリアナ・グランデ「Positions」等初登場曲に阻まれ3位にダウンした「Mood」が中一週で首位に返り咲き。ストリーミングは前週とほぼ変わらず1920万(同指標6位)、ダウンロードは前週比10%ダウンの7000(同指標6位)、そしてラジオエアプレイは同7%アップの8420万(同指標1位)となっています。次週は、11月6日に公開されたジャスティン・ビーバー&J・バルヴィン参加版が一週間フルで加算されるため、さらなる伸びが期待できます。

11月6日(一部は5日)にリリースされたリミックスについては以前まとめています。

 

前週初登場で首位を獲得したアリアナ・グランデ「Positions」は今週はワンランクダウンし2位に。ストリーミングは前週比28%ダウンの2560万(同指標1位)、ラジオエアプレイは同40%アップの2750万(同指標28位)となり、ストリーミングのダウンをラジオエアプレイでカバーできたことが上位にとどまった要因と言えるでしょう。また今週の米ビルボードアルバムチャートで『Positions』が首位発進したことで、タイトル曲の勢いがキープできたことも大きいと考えられます。ちなみに『Positions』はアリアナにとって6枚目のオリジナルアルバムですが、これまでのアルバムからの先行曲がすべてトップ10入りを果たしています(『Yours Truly』(2013)からマック・ミラーを迎えた「The Way」が10位、『My Everything』(2014)からイギー・アゼリアとの「Problem」が3位、『Dangerous Woman』(2016)からのタイトル曲が10位、『Sweetener』(2018)からの「No Tears Left To Cry」が3位、そして『Thank U, Next』(2019)からのタイトル曲が1位)。

アリアナ・グランデはアルバム『Positions』から、収録曲の「34+35」をソングスチャート8位に送り込んできました。ストリーミングは2170万、ダウンロードは3000、ラジオエアプレイは570万を獲得。これにより、アリアナ・グランデは先述した「The Way」が2013年4月13日付で10位に入って以来、トップ10ヒットが通算18曲目に。7年半というスパンでの18曲のトップ10ヒットは女性歌手では最多となり、ドレイクの31曲に次ぐ歴代2位の記録となります。

 

初登場曲がさらにもう1曲。バッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」が9位に飛び込んできました。ストリーミングは2220万、ダウンロードは5000そしてラジオエアプレイは320万を獲得しています。バッド・バニーにとってはカーディ・B、J・バルヴィンとの「I Like It」(2018 最高1位)、ドレイクをフィーチャーした「MIA」(2018 最高5位)に次ぐ3曲目のトップ10入りとなり、さらにスペイン語のみの曲で初登場にてトップ10入りを果たしたのはその「MIA」および「Dákiti」のみとなります。またジェイ・コルテスにとっては初のトップ10入りを達成しました。

 

初登場とは対極となるロングヒット曲についても確認。ザ・ウィークエンド「Blinding Lights]は前週から1ランクアップの4位に。トップ5在籍記録を史上最多の32週に伸ばし、またトップ10入りも今週で38週。史上最長記録となるポスト・マローン「Circles」(2019-2020)まで遂にあと1週となりました。

そして、ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」が前週から1ランクアップし5位に。ソングスチャート登場後45週目にしてのトップ5入りは、イマジン・ドラゴンズ「Radioactive」の42週(初のトップ5入りは2013年6月29日付)を抜き記録を更新した形です。なお史上3位となる34週にはフロリダ・ジョージア・ライン feat. ネリー「Cruise」(2013年に達成)が、史上4位タイとなる30週にはローンスター「Amazed」(2000年に達成)があり(なお30週は「Amazed」を含め4曲が該当)。「I Hope」「Cruise」そして「Amazed」といったカントリーというジャンルの曲が時間をかけてチャート上昇につなげるという傾向が見て取れます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

2位 (1位) アリアナ・グランデ「Positions」

3位 (4位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

4位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

5位 (6位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

6位 (8位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

7位 (9位) インターネット・マネー & ガナ feat. ドン・トリヴァー & ナヴ「Lemonade」

8位 (初登場) アリアナ・グランデ「34+35」

9位 (初登場) バッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」

10位 (7位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

次週は先述した「Mood」のリミックス追加等、リミックス施策で上位進出を果たす曲が出てきそうです。またアメリカ大統領選挙民主党ジョー・バイデン候補が勝利したことで一部楽曲が上昇基調にあり、トップ10入りは微妙かもしれませんがソングスチャートに登場する曲が出てきそうです。

特にYG feat. ニプシー・ハッスル「FDT」(2016)は11月7日に前日比740%アップとなる3000ダウンロードを記録。米Spotifyデイリーチャートでは同日10位に急浮上し翌日は24位にダウンしていますが、米ビルボードソングスチャートで100位以内に入る可能性は十分あると言えるでしょう。

 

 

グローバルチャート速報も紹介。11月14日付グローバルチャートは、Global 200ではアリアナ・グランデ「Positions」が2週連続で、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではバッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」が初登場で制しています。

アリアナ・グランデ「Positions」はGlobal 200で2連覇を達成。ストリーミングは前週比29%ダウンの6990万、ダウンロードは同72%ダウンの12000。ダウンロードの急落は前週初登場したことの反動、および所有行動が同名アルバムに移行したゆえと考えられます。またアリアナはそのアルバムから「34+35」を、ストリーミング4350万およびダウンロード6000を獲得して5位に送り込み、Global 200においてトップ5に2曲送り込んだ3組目の歌手となりました(これまではジャスティン・ビーバーおよびBTSが達成。女性歌手では初)。一方、Global Excl. U.S.においては「Positions」が2位に後退。ストリーミングが前週比30%ダウンの4240万、ダウンロードが同71%ダウンの5000となっています。

バッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」はGlobal 200でストリーミング8350万、ダウンロード6000を獲得し2位発進となりましたが、Global Excl. U.S.では首位に登場。こちらではストリーミングが6150万、ダウンロードが1000となっています。Global Excl. U.S.おいては前週「Positions」が首位を獲得したことでアリアナ・グランデが同チャート史上初となるアメリカ人歌手での首位獲得者となりましたが、バッド・バニーそしてジェイ・コルテスは共にプエルトリコの出身。アメリカ以外の歌手が同チャートを制したのは韓国のBTSおよびBLACKPINK、コロンビアのマルーマに次いで3ヶ国(4組)目となります。

またLiSA「炎」はGlobal 200でトップ10入りは逃しながら、Global Excl. U.S.では4位に。これでGlobal Excl. U.S.では2→3→4位となり、3週連続でのトップ10入りを果たしています。