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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」、金曜にデジタルリリースしたことが興味深い

STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属で関西発の3組(SUPER EIGHT、WEST.およびなにわ男子)によるユニット、KAMIGATA BOYZが「無責任でええじゃないかLOVE」を昨日リリース。以前公開されたティザー(ティーザー)と実際の曲のギャップも話題となっています。

この曲には一瞬ですがAぇ! groupが登場し、またメンバーが声の出演を果たしているとみられています。Aぇ! groupは今月15日にフィジカルシングル「《A》BEGINNING」をリリースすることから、先輩3組によるシングルは彼らの応援や認知度上昇の意味もあると考えていいかもしれません。

 

さて今回は、KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」が金曜、それもデジタルリリースされたことについて、音楽チャート面を主体に興味深い点をまとめます。

 

<KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」

 金曜にデジタルリリースしたことを興味深く感じる理由>

 

 

STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の作品では珍しくデジタル解禁されている

今年に入りSUPER EIGHTがデジタル(ダウンロードおよびサブスク)での解禁を開始した一方、WEST.およびなにわ男子は今も行っていません。特にフィジカルシングル初週20万枚以上セールスが見込めるSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手において、今も未解禁の状況が続いています。

最新5月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートではWEST.「ハート」がフィジカルセールス指標初加算に伴い6位に初登場していますが、ダウンロード(上記CHART insightでは紫で表示)、ストリーミング(青)および動画再生(赤)といったデジタル指標群が未加点の状態。そして気になるのは、フィジカルリリース日に同曲のTHE FIRST TAKE動画が公開されたにもかかわらず動画再生指標300位以内未達という点です。

動画再生指標はISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画がカウント対象となり、またTHE FIRST TAKE動画のチャートへの影響は大きいのですが、「ハート」は加算されていません。THE FIRST TAKE側の付番忘れ、また動画が(ミュージックビデオと合算して)300位以内に達していない可能性等が考えられますが、仮にSTARTO ENTERTAINMENT側に未加点の要因があったならば、その改善が求められます。

今回のユニットシングルにおけるデジタルリリースは、このような意識の変革、そしてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手のデジタル解禁への流れを加速する可能性を持ち合わせていると捉えています。

 

SixTONESのシングルと同週リリース→ビルボードジャパンへの意識が高まる

SixTONESは5月1日にフィジカルシングル「音色」をリリースしており、水曜までのセールスが前作を既に上回っています。

(YouTubeにアップされているミュージックビデオとは異なり、フルバージョンと思しき別動画を掲載しています。)

「音色」は5月8日公開分(集計期間:4月29日~5月5日)ビルボードジャパンソングチャートでも上位に初登場する可能性が高い一方、KAMIGATA BOYZによる「無責任でええじゃないかLOVE」はフィジカル未リリース且つ金曜リリースゆえ、上位への初登場は難しいかもしれません。それでもユニット登場がアナウンスされて以降の盛り上がりを踏まえれば、ダウンロードや動画再生指標で高位置に登場する可能性はあると考えます。

(なおLINE MUSICによる5月3日付デイリーチャートでは「無責任でええじゃないかLOVE」が29位に初登場しています。Spotifyについては本日夕方以降、同日付チャートが発表されます。)

「音色」と「無責任でええじゃないかLOVE」は次週のチャートで初登場がバッティングしますが、2週後のチャートでは「無責任でええじゃないかLOVE」がデジタル未解禁の「音色」を逆転する可能性も考えられます。ビルボードジャパンソングチャートは接触指標の上位安定が重要であり、話題性の大きさが接触の常態化につながれば「無責任でええじゃないかLOVE」のロングヒットも有り得るかもしれません。

とはいえ、STARTO ENTERTAINMENTは旧ジャニーズ事務所時代よりオリコンを重視し、現在もその立ち位置であると捉えています。オリコンにも合算シングルランキングがありますが、ビルボードジャパンと異なりフィジカルセールスをそのまま(係数処理を行わず)加算するため、フィジカルセールスで10万枚以上を記録すれば週間単位にて最上位に至ることがほぼ確実となります。このことは上記エントリーにて紹介しています。

ゆえにオリコン合算シングルランキングではSixTONES「音色」がKAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」を上回ることはほぼ確実ですが、ビルボードジャパンソングチャートにおいてはどうなるか分かりません。後者のチャートでのバッティングを解った上でリリースしたならば尚の事、事務所側がビルボードジャパンへの意識を高めているのではと感じています。

 

グローバルチャートでの上位初登場を狙える→他の歌手への刺激になる

金曜は海外の新曲やニューアルバムの基本的なリリース日ですが、KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」も金曜に解禁しています。また今週米英レコード会社との契約を発表し、そのタイミングで表記をすべて大文字に改名したMILLENNIUM PARADEも、世界向けのファーストシングルを5月10日金曜にリリースするとアナウンスしています。

 

KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」は作風や魅せ方がドメスティックながら、ダウンロードやストリーミングが好調ならば米ビルボードによるグローバルチャートで200位以内に入る可能性があります。このチャートが金曜を集計期間初日としていることから、日本時間で5月14日公開予定の5月18日付チャート(集計期間:5月3~9日)にて、初週1週間フル加算に伴い200位以内に入る可能性も考えられます。

「無責任でええじゃないかLOVE」がグローバルチャートへのランクインを狙うべくリリース日に設定したかは解りかねます。ただこの動きはとても興味深いものです。特に直近のビルボードジャパンソングチャートで「Masterplan」を首位の座に送り込んだBE:FIRSTが世界を目指す姿勢を示す一方、施策がビルボードジャパン向けでありグローバルチャートでのランクインを狙っているかがみえにくいゆえ、強く感じています。

無論これはBE:FIRSTや彼らが所属するBMSGのみならず、日本の歌手すべてに対して言えることです。そして日本市場でのヒットだけでもグローバルチャートにランクインできる可能性を踏まえれば、ビルボードジャパンが集計期間やリミックス等の合算基準といったチャートポリシー(集計方法)をグローバルチャートに沿わせることも必要と考えます。現段階では世界と日本とで施策を分ける必要が生じるゆえ、尚の事です。

 

ドメスティックな作品がグローバルチャートに登場することに対して違和感を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、グローバルチャートは世界の様々なジャンルが、たとえ局地的に盛り上がっていたとしてもランクインする傾向にあります。昨年はメキシコ音楽が米ビルボード年間ソングチャートで上位に進出したことも話題となりましたが、それを足がかりにジャンル全体が認知されていくことも十分考えられるのです。

 

 

KAMIGATA BOYZ「無責任でええじゃないかLOVE」のデジタルリリース、そして金曜リリースについて興味深く感じる理由を3つ紹介しました。

個人的には以前より申し上げているように、STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属歌手の作品がデジタル解禁することを願っています。これは弊ブログにて、幾度となく語っていることです。