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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】BE:FIRST「Masterplan」、首位初登場の要因と今後注視すべき点

最新5月1日公開分(集計期間:4月22~28日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週まで13連覇を達成していたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が2位に後退し、BE:FIRST「Masterplan」が初登場で首位に到達。首位獲得はフィジカルシングルの前作「Mainstream」(2023)以来となります。

BE:FIRST「Masterplan」はフィジカルリリースの2日前、集計期間初日にあたる4月22日にデジタルを先行解禁。カラオケを除く5指標がいずれもトップ10入りを果たしています。

本作は、4月24日にリリースされたコンセプト・シングルの表題曲。CDセールスは115,963枚で2位、ストリーミングは7,955,802回再生で7位に。そのほかダウンロードは35,174DLで1位、ラジオと動画再生でも1位となり、前作「Mainstream」に続く3冠で本チャートを制した。なお、BE:FIRSTはこれまでに「Gifted」、「Bye-Good-Bye」、「Scream」、「Boom Boom Back」、「Mainstream」で総合首位を獲得しており、本作で6曲目となる。

ストリーミング指標の基となる再生回数では「Masterplan」が「Mainstream」を上回り、フィジカルセールスの減少を補填。その結果、「Masterplan」は19,172ポイントを獲得しています。ソングチャートでの週間1万5千ポイント超えはNumber_i「GOAT」(1月10日公開分)、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」(2月21日~2月28日公開分、3月13日~4月17日公開分)に続き、今年度3曲目となります。

 

 

BE:FIRSTは「Masterplan」においてコンテンツカレンダーを用意し、デジタルプラットフォーム向けキャンペーンおよびラジオ出演も徹底。これは前作「Mainstream」の流れを汲んでいるといえます。

「Mainstream」の続編的作品であり、施策においても同曲を引き継いだ「Masterplan」が、フィジカルセールス初加算時のポイントは落としながらも2万ポイント近くまで伸ばしたことは特筆すべきことです。

(なお「Masterplan」はBMSG MUSIC SHOP(→こちら)限定でバンドルグッズ同梱バージョンをリリースしていますが、このBMSG MUSIC SHOPはビルボードジャパンソングチャートのフィジカルセールス指標における集計対象店舗(→こちら)に含まれていません。ただしBMSG MUSIC SHOPはmu-moショップ内で展開している模様であり、mu-moショップについては集計対象店舗に含まれています。)

「Masterplan」はリリース後も各種動画をアップ、また集計期間後半にはSNSにてメンバーによる様々な写真も公開し、コアファンの熱量を高く維持することにつながっています。さらに今作をコンセプトシングルと位置付けたことやドーム公演直後のリリース、そしてそれらに込められた所属事務所(BMSG)側の"意志"等もコアファンとのBE:FIRST、そして所属事務所全体との結び付きの強化につながったものと考えます。

(結び付き強化の基となる"ストーリー作り"については、後日記載する予定です。)

 

複合指標から成る音楽チャートを制することは難しいことです。BE:FIRSTはフィジカルシングルが5作品いずれも売上チャートで首位に至っていませんが、しかしBE:FIRST側はビルボードジャパンソングチャートをより重視し、同チャートでのいわば必勝パターンを身に着けたと感じています。

実際、フィジカルセールス指標初加算週の動向をみると5作品いずれも1万6千ポイント超えを果たしていることが解ります。そして「Bye-Good-Bye」(2022)以外はフィジカルセールス週のデジタル解禁を徹底しています。安定した高ポイント獲得は施策を磨き上げた結果であり、コアファンとのエンゲージメント徹底の賜物といえるでしょう。

 

なお、BE:FIRST側がビルボードジャパンソングチャートをより重視していることについては、ビルボードジャパン側が総合ソングチャートの記事を発信する前にポストされた下記報道からうかがえます。

通常、メディアがビルボードジャパンソングチャートでの首位紹介記事を用意することはほぼありません。またチャート関連に限らず、記事においては歌手側のプレスリリースをなぞる傾向があります(これらについては米津玄師やDISH//の記録報道、そのタイムラグに違和感…音楽メディアの迅速な対応を求める(2022年10月19日付)で記載しています)。この点から、BE:FIRST側が前もってプレスリリースを用意したと想起可能です。

 

 

さて、所有指標(特にフィジカルセールス)は一過性であり、接触指標(とりわけストリーミング)の上位安定がロングヒット、そして年間チャートでの上位進出につながります。週間チャート制覇も素晴らしいことですが、それ以上に中長期的なヒットが重要です。登場2週目以降の動向をみて真の社会的ヒット曲に成るかを判断すること、そして中長期的な視野を持つことの必要性は、このブログで幾度となくお伝えしていることです。

気になるのはBE:FIRST「Masterplan」が次週以降どう推移するかという点ですが、ともすれば総合トップ10からの脱落も有り得るのではと捉えています。

 

ロングヒット、そして年間チャートでの上位進出に最も欠かせないストリーミング指標ではBE:FIRST「Masterplan」が当週7位を記録していますが、指標のデータ提供元となる各サブスクサービスの動向をみると(集計期間は若干異なります)、ストリーミング指標20位以内に入った曲の中で「Masterplan」が最も大きく乖離しています。この乖離については、先日掲載したブログエントリーにおける1つ目のポイントで紹介しています。

加えて、次週5月8日公開分の集計期間は平日が3日のみ。平日に比べて土日祝日の再生回数が伸びる傾向にあることを踏まえれば、ロングヒット曲やその可能性がある作品(Mrs. GREEN APPLEライラック」、aiko「相思相愛」等)のストリーミング再生回数、そして総合ポイントにおける上昇が見込まれます。一方で、登場2週目のBE:FIRST「Masterplan」は踏みとどまることができるかが気になるところです。

 

BE:FIRST「Masterplan」の次週5月8日公開分におけるポイント前週比を前作並みの35%と仮定すると、6,710ポイント獲得と推定。この水準では当週10位以内に入ることができますが、次週はSixTONES「音色」がフィジカルセールス指標初加算に伴いトップ10入りすることが見込まれ、また現時点でもロングヒット曲やその可能性がある作品が多い状況ゆえ、「Masterplan」の2週連続トップ10入りなるかを注視する必要があります。

 

 

BE:FIRST側は、仮にBMSG MUSIC SHOPがビルボードジャパンソングチャートのフィジカルセールス指標において集計対象となっていないならば、含めてもらうよう打診する必要があるでしょう。

BE:FIRSTは今後も、フィジカルセールス初加算週にビルボードジャパンソングチャートで最上位に進出する可能性が高いと考えます。他方、ロングヒットに至っているかといわれれば断言できかねるというのが厳しくも私見です。コアファンがLINE MUSIC以外のサブスクサービスも積極的に利用することがひとつの案ですが、ロングヒットを目指すにはライト層に如何に興味を持っていただくかを考え、動く必要があります。

 

BE:FIRST「Masterplan」の翌週動向を注視する必要性については、「Mainstream」のフィジカルセールス指標加算2週目の動向を踏まえて記した内容を踏襲しています。そしてそこでも記したグローバルチャートについて、BE:FIRSTが上位進出と安定を目指しているのかも気になります。

ビルボードによるグローバルチャートは世界の主要なデジタルプラットフォーム(ストリーミング指標はYouTubeを含む)を用いていますが、そこにLINE MUSICは含まれていません。またグローバルチャートのうち米ビルボード無料会員向けにも公開されるGlobal 200にて複数週200位以内にエントリーした歌手は、続々海外での公演に着手しています。「幾億光年」が4月いっぱいランクインしていたOmoinotakeもその一組です。

グローバルチャートでのランクインが世界進出とイコールではないものの、しかしK-POPやラテンミュージックの人気拡大等を可視化したこのチャートは重要な意味を持つものと捉えています。BE:FIRSTが世界を視野に入れるならばストリーミングで上位安定すること、また一度はグローバルチャートの集計期間初日である金曜にデジタルリリースすることでランクインを積極的に目指すことも必要ではないかと提案します。