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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』におけるシザ「Snooze」の起用が興味深い

日本でシザ(SZA)が話題になっています。

シザ「Snooze」のアニメタイアップ起用について、音楽ジャーナリストの柴那典さんが語った内容を興味深く感じています。特に注目したのは、『SZAは北米中心のグローバルなシーンでは「誰もが知ってる」レベルの”大ネタ”』という点です。

 

(なお、オリコンの記事には違和感を抱いています。記事ではアルバム『SOS』の米でのセールスが800万以上と記されていますが、米ビルボードアルバムチャートはアルバムセールスに加えて単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)、そしてストリーミング(動画再生含む)のアルバム換算分(SEA)から構成され、ユニット数が単位となります。ロングヒット作はSEAが強いゆえ、”800万ユニット”が適切な表現ではないかと考えます。)

 

シザは2022年末にアルバム『SOS』をリリース。「Snooze」はこのアルバムからの6曲目のシングルという位置付けとなります。

アルバム『SOS』からは「Kill Bill」も大ヒットし、シザは同曲で初めて米ビルボードソングチャートを制しています。そして年間単位では、2023年度米ソングチャートにて3位に「Kill Bill」および9位に「Snooze」、同アルバムチャートで3位に『SOS』、そして同トップアーティストチャートでシザが3位にランクイン。主要チャートでいずれもトップ3入りを果たした形です。

シザ『SOS』は2024年度米ビルボード年間アルバムチャートでも6位にランクイン。さらにはケンドリック・ラマーのアルバム『GNX』(2024)に収録された「Luther」にて共演し、同曲は米ソングチャートで週間1位、2025年度年間ソングチャートでは2位を獲得しています。ケンドリック・ラマーとの相性の良さは「All The Stars」(2018 米7位 『ブラックパンサーサウンドトラック収録)にて既に証明済です。

シザはそのケンドリック・ラマーによる昨年のスーパーボウルハーフタイムショーに出演し(YouTubeこちら)、またコラボでのコンサートツアーを開催(セットリストはこちら)。さらに、これまで5つのグラミー賞を獲得し、そのひとつが2024年における「Snooze」での最優秀R&B楽曲賞受賞。その際、舞台袖からスマートフォンを持ってリゾに駆けつけるシザの姿は、楽曲の持つクールネスとはいい意味で異なるものです。

 

 

さて、そのシザによる「Snooze」のアニメタイアップ起用を『いろんな意味で大きいターニングポイントになるかもしれない』と柴那典さんが述べていますが、自分は音楽チャートの面にてターニングポイントに成り得るのではと期待しています。ビルボードジャパンソングチャートでは洋楽の勢いが全体的に弱まっており、それを打破する可能性を有していると考えるゆえです。

 

ビルボードジャパンにはK-POPを除く洋楽のみで構成されるHot Overseasというソングチャートが存在しますが、BLACKPINKのロゼがブルーノ・マーズと組んだ「APT.」や『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(Netflix)使用曲のHUNTR/X(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」は同チャートにランクインし、洋楽として扱われています。その前提を踏まえれば、「APT.」はエド・シーラン「Shape Of You」(2017年度 2位)以来8年ぶりとなる、洋楽での年間トップ10ヒットとなるのです。

最近では『ズートピア2』発となるシャキーラ「Zoo」が日本でヒットするも、現時点での最高位は11位。また先述したHUNTR/X「Golden」はトップ10入りするも、10位以内在籍は通算3週にとどまっています。洋楽が勢いを高めるにはどうすべきかを模索していたところに、今回の(おそらくは映像作品の世界観とリンクする形での)世界的ヒット曲のタイアップは洋楽振興の点にて大きな意味を有するのではと感じた次第です。

 

さて、シザの日本でのチャートアクションをCHART insightにて確認します。

下記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。なお、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。

(上記はシザ『SOS』におけるビルボードジャパンアルバムチャートのCHART insight。表示最終週は2024年2月14日公開分となります。)

(上記はシザ『LANA』におけるビルボードジャパンアルバムチャートのCHART insight。表示最終週は2025年4月30日公開分となります。)

ビルボードジャパンアルバムチャートでの、アルバム『SOS』の100位以内登場は通算1週(2023年5月31日公開分 100位)。また『SOS』のデラックスエディションとなる『LANA』は通算8週ランクインし、2025年1月1日公開分にて最高位となる51位を記録していますが、高いとは言い難い状況です。そして総合ソングチャートではシザ単独名義の曲が100位以内にランクインしていません(シザ | Artist | Billboard JAPAN参照)。

しかしながら、『LANA』においては青で表示されたストリーミング指標が、総合アルバムチャートでの上位進出に大きく影響していることが解ります。2024年最終週に接触指標が加わったことで、聴かれ続ける作品の存在が可視化されたのみならず、ヒップホップ作品の人気の高さもまた示したと捉えています(日本でのヒップホップ人気を、ビルボードジャパンアルバムチャートが証明していることについて(2025年7月13日付)参照)。実際、ケンドリック・ラマー『GNX』はアルバムチャートで最高23位に達しています。

ケンドリック・ラマー『GNX』はビルボードジャパンアルバムチャートで100位以内に26週登場。ビルボードジャパンでは総合100位以内に通算26週在籍したアルバムについてはその翌週以降、Streamimg Albumsチャート(未公開)をストリーミング指標化する際に減算処理を行うというリカレントルールを2025年度下半期から導入しています。つまり『GNX』はそのルール抵触の直前まで、100位以内に在籍していたことになるわけです。また、最新週にてストリーミング指標が300位以内に入っている点も注目です。

 

アルバムチャートでは総合順位こそ高くないながら『LANA』が聴かれていたことが可視化、そしてケンドリック・ラマー『GNX』のストリーミング主体でのヒットも踏まえれば、シザは日本で(チャート上ではヒットしていると言い難いながらも)ニーズが、そしてヒットのポテンシャルがあるといえるのではないでしょうか。それゆえ、アニメタイアップの起用で人気が高まる可能性は十分あるものと考えます。

 

 

またシザ「Snooze」においては、制作にベイビーフェイスやレオン・トーマスが参加している点にも注目です。このブログではレオン・トーマス自身の「Mutt」が米ビルボードソングチャートで上昇したタイミングにて、「Snooze」についても採り上げています。

レオン・トーマスMutt」は上記エントリー執筆後に米ソングチャートでトップ10入りし、ラジオ指標も制覇。そしてレオン・トーマスは今年のグラミー賞で主要2部門にノミネートされています(なおシザ「Snooze」が受賞した最優秀R&B楽曲賞では別曲となる「Yes It Is」が候補入りしています)。

今年のグラミー賞ではケンドリック・ラマーが主要3部門にノミネートされ、シザとの「Luther」は最優秀レコード賞および最優秀楽曲賞にて候補に挙がっています。この2部門では共にケンドリックによる「Not Like Us」が昨年受賞しており、ケンドリックは主要2部門で連覇に至る可能性も。そうなればシザにとっても、日本でその名をさらに知らしめることとなるでしょう。加えて、下記ポストで記した内容にも注目しています。

 

 

シザ「Snooze」が日本でヒットするには、同曲をオープニングテーマに起用した『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』のヒット規模、作品の評価、そして作品と楽曲とのリンクが、最終的に大きく関わるものと思われますが、このようなタイアップが増えればシザに注目が集まるのみならず、日本で洋楽自体の注目度が高まるかもしれません。音楽チャートを分析する者として、その点を期待しています。