イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ケンドリック・ラマー、スーパーボウルハーフタイムショーのパフォーマンス前に採った施策とは

最新2月22日付米ビルボードソングチャート(集計期間:2月7~13日)は米における2月17日月曜がワシントン誕生日で祝日につき、公開が1日遅れます。そのためこのブログでは速報記事の翻訳を明日のブログエントリーにて紹介します。

 

その米ソングチャートでは、スーパーボウルハーフタイムショーの反響に伴いケンドリック・ラマーによる披露曲が上位進出を果たすとみられますが、既に発表されたアルバムチャートでその影響がみられます。

(ハーフタイムショーの映像はYouTubeにアップされていますが、NFLYouTubeチャンネル発となる動画は通常の貼付ができないため、リンクを掲載します(→こちら)。)

 

 

2月22日付米ビルボードアルバムチャートではケンドリック・ラマー『GNX』が前週の4位から、昨年12月7日付の初登場時以来となる首位返り咲き。また『Damn』(2017)が29→9位、『Good Kid, M.A.A.D City』(2012)が27→10位に上昇し、3作品が同時にトップ10入りを果たしています。

存命している男性アーティストによるアルバムが、アルバム・チャート“Billboard 200”で3作同時(同週)TOP10にランクインするのは、1966年12月24日付でハーブ・アルパートハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス名義で達成して以来の快挙で、ラップ/ヒップホップ・アーティストとしては初の偉業を達成した。

注目すべきは『GNX』の動向です。

2月22日付米ビルボードアルバムチャートにおける『GNX』が獲得した236,000ユニットのうち、アルバムセールス(デジタルとフィジカルの合計)は初登場時の32,000を大きく上回る116,000を記録しているのですが、これは『2月7日にCD、カセットテープ、5種類のアナログ盤がフィジカルとして初めてリリースされた』ことが功を奏した形です(『』内は上記記事より)。

つまりはスーパーボウルハーフタイムショーのパフォーマンス効果が反映される最新アルバムチャートの集計期間初日に、ケンドリック・ラマーは『GNX』の再上昇度合いを高めるための施策を実行したとことになるのです。尤も、ヒップホップについてはサプライズリリースが目立つためにフィジカルリリースが後からになることが多いものの、しかしながら話題に成ることを十分理解した上でその最大化に努めているといえます。

ビルボードジャパンでも米ビルボードでも、ソングチャートやアルバムチャートで瞬間的に上位進出を果たす以上に重要なのはロングヒットすることだと捉えていますが、海外の歌手はリリース初週のインパクトを高めるべく施策を実行し、また上位進出を果たした際はコアファンへのお礼を述べるという姿勢が、日本の歌手よりも徹底されています。

Creepy Nuts『LEGION』の初週チャート動向を紹介した昨日付エントリーにて、このように記しました。今回紹介した施策は厳密にはリリース初週ではないものの、フィジカルリリースにおける初週ではあります。日本の歌手と海外の歌手とで大きく異なる点のひとつがこのチャート最大化のための施策の徹底だとすれば、日本の歌手が世界に進出するためにはチャート意識を高めることが重要だと理解できるはずです。

 

明日発表予定の2月22日付米ビルボードソングチャートではケンドリック・ラマーによる「Not Like Us」が首位返り咲きを果たすのみならず、ハーフタイムショーとケンドリック・ラマーとシザが共演した「Luther」が2位に上昇し同曲最高位を更新すると予想されています(下記ポストは同日付最終予想)。

「Luther」はルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)がシェリル・リンと共に披露した1982年作「If This World Were Mine」(マーヴィン・ゲイ & タミー・テレルによるバージョン(1968)のカバー)をサンプリングしているのですが、今は亡きルーサー・ヴァンドロスの公式YouTubeアカウントがルーサー版「If This World Were Mine」とハーフタイムショーのパフォーマンス映像をマッシュアップした動画をアップしているのです。

ルーサー・ヴァンドロスの公式YouTubeチャンネル発となる動画にはNFLの映像が含まれるため、冒頭に紹介したスーパーボウルの映像同様にYouTube以外のサイトではうまく貼付できません。この仕様には違和感を抱きつつ、しかしルーサー・ヴァンドロス側が柔軟な対応をしている点からは亡くなった方であれベテランであれ、ひとつの出来事を機にヒットを掴もうとする姿勢を強く感じた次第です。

 

 

"ひとつの出来事を機にヒットを掴もうとする姿勢"について付け加えるならば、最新の米ビルボードによるTikTok Billboard Top 50でアース・ウインド & ファイヤー「Let's Groove」(1981)がヒットしていることを機に、日本からももっと動くべきだと捉えています。その音からアース・ウインド & ファイヤーも想起可能な日本のバンド、スペクトラムによる「F・L・Y」(1980)が現在米でバイラルヒットしているゆえ、尚の事です。

このタイミングで「F・L・Y」のミュージックビデオが初めて制作されている点から、レコード会社側が同曲をバズから定着に向かわせるという姿勢が見て取れます。

アース・ウインド & ファイヤーは日本の歌手にも多大な影響を与えています。スペクトラム以外の日本の歌手も積極的な発信を行っていくことを願い、Spotifyにて作成したプレイリストを再掲します。