最新10月30日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでは、竹内まりやさんによる10年ぶりのオリジナルアルバム『Precious Days』が初登場で首位を獲得しています。
【ビルボード】竹内まりや『Precious Days』総合アルバム首位 ILLIT/ずっと真夜中でいいのに。が続く https://t.co/zUqIBfygTM
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年10月30日
アルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードという所有2指標で構成されますが、『Precious Days』はフィジカルセールス(CHART insightでは黄色で表示)のみでポイントを獲得していることが解ります(ダウンロードは紫で表示)。
『Precious Days』がダウンロードおよびサブスク未解禁であることについては以前も紹介していますが、しかしこの作品をリリース段階からデジタルで解禁していればより伸びた可能性について、最新10月30日公開分における他のチャートから捉えることが可能です。
ソングチャートとアルバムチャートを合算したビルボードジャパンによるトップアーティストチャート(Artist 100)では、10月30日公開分において竹内まりやさんが2位に浮上しています。
竹内まりやさんはフィジカルセールスのみならず、特にベテランが強いラジオ(CHART insightでは黄緑で表示)でも首位を獲得していますが、注目はダウンロード指標6位という結果。アルバムチャートにおけるダウンロード指標の伸びが影響しています。
ニュー・アルバム『Precious Days』のリリースに後押しされ、292DLを売り上げた竹内まりやの通算2枚目のベスト・アルバム『Impressions』は前週64位から8位に急上昇。1994年にオリジナル盤が発売された本作には、「純愛ラプソディ」、「シングル・アゲイン」、「告白」などのヒットが収められている。他にも『Variety』が45位、『デニム』が50位、『リクエスト』が61位、『Bon Appetit!』が74位につけている。
【ビルボード】aespa『Whiplash』がDLアルバム首位、ずっと真夜中でいいのに。が2位に続く https://t.co/i0iTgHsqUd
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アルバムチャートにおいてはダウンロード数がフィジカル売上枚数より全体的に少ないものの、デジタル1DLがフィジカル1枚よりもウエイトが大きく設定されています。竹内まりやさんによる過去作品はダウンロード数を伸ばし、『Impressions』(1994)が同指標86→64→8位と推移。総合では53位となっていますが、一方でフィジカルセールス指標は100位以内に到達していません。
ソングチャートにおいても、「人生の扉」(2007)が最新10月30日公開分のダウンロード指標で20位に上昇。集計期間中に放送された『NHK MUSIC SPECIAL』でこの曲が採り上げられていたことが影響したと考えます。テレビの影響は特にダウンロード指標に波及しますが、デジタルを解禁しているからこそこの記録が生まれたといえます。フィジカル入手環境が狭まる現在にあって、デジタルが尚の事重要だと解るでしょう。
トップアーティストチャートに話を戻すと、CHART insightに掲載された累計ポイント構成比においてストリーミング(青で表示)が加点されていることが確認できます。
ストリーミングの重要性は竹内まりや「すてきなホリデイ」でも実感できます。
最新12月28日公開分ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標で14位に入った「すてきなホリデイ」のチャート構成比をみると、そのラジオに次いでポイントを獲得したのがストリーミング。ストリーミング指標は100位未満(300位圏内)ゆえ、この指標が下位でもポイント獲得源として十分なものであることが解ります。
(※CHART insightは2024年春に表示方法をリニューアルしており、2022年12月の段階では総合および各指標100位まで、且つ最新週のチャート構成比が表示されていました。)
サブスク時代になり、クリスマス関連曲がストリーミング指標を獲得し総合チャートでも存在感を高めていますが、「素敵なホリデイ」でもその傾向がみられています。2023年はストリーミング指標未加算でしたが、この点からもサブスクの重要性が理解できるはずです。なお夫の山下達郎さんによる「クリスマス・イブ」は一部サブスクサービスで解禁済であり(詳細はこちら)、この曲もストリーミング指標を獲得しています。
『NHK MUSIC SPECIAL』に限らず様々な媒体でアルバムプロモーションを行ったこともあり、竹内まりやさんの音楽を聴きたい、手にしたいと思った方は多いはずです。トップアーティストチャートにおける動画再生指標の上昇も、そのことを想起させるに十分です。ただ、聴きたい、手にしたいと感じた瞬間に行動しようとも、新作がデジタル未解禁ゆえに購入/接触不可の壁にぶつかった人の多さもまた、想像に難くありません。
(トップアーティストチャートの動画再生指標についてはビルボードジャパンCHART insightの有料会員のみが確認できる状況ゆえ、詳細な順位を記載することはできません。ご了承ください。)
タワーレコード『NO MUSIC, NO LIFE.』ポスターのコメント、また『TALK TO NEIGHBORS』(J-WAVE)ゲスト出演時のやり取りから、竹内まりやさんが今の時代の音楽の聴かれ方を許容しているものと実感しています(上記参照)。勿論、デジタル解禁する/しないが歌手の自由であると言われればそれまでですが、所有や接触の選択肢を狭める施策は機会損失ではないでしょうか。歌手側の再考を願うばかりです。