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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】Aぇ! groupデビュー曲が2位発進、リリース背景からみえるものとは

最新5月22日公開分(集計期間:5月13~19日)のビルボードジャパンソングチャートはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が3週連続、通算16週目の首位を獲得しています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」はストリーミング指標の基となる再生回数が前週比95.7%と推移。集計期間内の平日が前週4日間だったのに対し当週は5日のためストリーミング再生回数が下がる傾向の中、ストリーミング指標上位10曲の中では前週比が低いながらも勢いを維持できたといえます。また総合ポイントも前週比92.9%、11,313ポイントを獲得しています。

この「Bling-Bang-Bang-Born」に続くのがAぇ! group「《A》BEGINNING」。フィジカルセールスは今年度屈指の高水準ながら、首位とは623ポイント差がついた形です。

(上記Aぇ! group「《A》BEGINNING」のミュージックビデオは”Streaming Ver.”と記されており、楽曲の一部が省略されたエディットバージョンとなります。)

Aぇ! group「《A》BEGINNING」はフィジカルセールス782,835枚を記録し、CHART insightでは黄色で表示されるこの指標を制覇。またラジオ(黄緑)3位、動画再生(赤)46位となった一方、ダウンロード(紫)、ストリーミング(青)およびカラオケ(緑)は300位以内に達しておらずポイント未加算の状況です。

 

 

Aぇ! group「《A》BEGINNING」は、動画再生指標が強かったならば総合首位もあり得たと捉えています。

上記はYouTubeのAぇ! group公式チャンネルにおける、5月23日5時時点での動画一覧(リンクはこちら)。「《A》BEGINNING」においてはダンスバージョン等複数の動画が用意されているのですが、当週の集計期間中にアップされたものはありません。

「《A》BEGINNING」は今年度2位の週間フィジカルセールスを記録していますが、フィジカルを購入せずとも曲が気になる方を惹きつけるべく、集計期間中に新たな楽曲関連動画を投稿してよかったのではと考えます。コアファンの視聴先がフィジカル同梱の映像盤に切り替わった一方でその分をライト層では補いきれなかったという可能性を踏まえるに、コアファンの視聴継続の意味でも新たな動画の公開は必要だったでしょう。

 

STARTO ENTERTAINMENT所属でAぇ! groupより前にフィジカルシングルでデビューしたなにわ男子は、デビュー曲「初心LOVE」が2021年11月17日公開分ビルボードジャパンソングチャートで首位に立っています。動画再生指標も9→2位と上昇していますが、背景にはシングルリリース日のイベントにおけるパフォーマンスが同日YouTubeに、それもフルバージョンで公開されたことが影響したと分析しています。

このエントリーの執筆時点で上記動画は1334万回再生を記録。加えて「初心LOVE」では元々公開されていたエディットバージョンのミュージックビデオが4029万回再生に対し、ダンスバージョンと銘打ったフルバージョンの動画が1億494万回再生と2.6倍以上になっているのも注目です。実際、このダンスバージョン動画の投稿がビルボードジャパンソングチャートでの連覇に大きく貢献しています。

デジタル未解禁の状況ながら、様々な工夫を行ったことが複合指標から成るビルボードジャパンソングチャートでの連覇につながっています。施策を考え、最良のタイミングで実施することの重要性はこの点からも解るのではないでしょうか。

 

 

尤も、動画再生指標のポイント全体に占めるシェアは高くないことから、Aぇ! groupが「《A》BEGINNING」においてダウンロードやサブスクを解禁していれば首位獲得は確実だったと捉えています。

SUPER EIGHT、WEST.およびなにわ男子という、STARTO ENTERTAINMENT所属の関西勢3組によるKAMIGATA BOYZが今月リリースした「無責任でええじゃないかLOVE」では、Aぇ! groupが合いの手で参加しています。同曲はデジタルでリリースされていたことから、「《A》BEGINNING」もデジタルリリースがあると想起した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ビルボードジャパンソングチャート、ストリーミング指標のデータ提供元のひとつであり再生回数全体のおよそ2割を占めるといわれるSpotifyでは、上記の現象が発生しています。ここから、5月15日リリースのAぇ! group「《A》BEGINNING」がデジタルリリースされる可能性を踏まえてSpotifyをチェックした方もいらっしゃるのでは、そして未解禁ゆえ別の曲を聴くという流れが生まれたのではと捉えてもいいのかもしれません。

 

 

Aぇ! groupのXアカウント(→こちら)では、ビルボードジャパンとオリコンのフィジカルセールス週報記事をリポストしています(下記画像参照)。フラゲ日の数値についてはオリコンを紹介する一方、売上がより高く且つハーフミリオンを突破したビルボードジャパンの記事にリアクションしていなかったことを疑問視していましたが、週報については双方を紹介する姿勢に安堵しています。

(リアクション紹介のためにX上のタイムラインをキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

他方、Aぇ! groupのXアカウントではビルボードジャパンソングチャート、そしてフィジカルセールス指標の係数処理を施さないためにこの指標が強い曲が有利となるオリコン合算シングルランキングについては、どちらもフォローアップしていません。後者では首位獲得がアナウンスされ(記事はこちら)、また2位と大差がついているものと思われるにもかかわらず、です。

これらを踏まえれば、歌手側そしてSTARTO ENTERTAINMENT側が複合指標のチャートよりもフィジカルセールス単体のランキングを未だ重視していると捉えていいのかもしれません。Aぇ! group「《A》BEGINNING」において”CDデビュー”という表現が用いられたこともその一端と考えます。その意識が逆に動画等の施策の強くなさにつながり、最終的にビルボードジャパンソングチャートで首位に至らなかったというのが私見です。

 

 

最後に。”CDデビュー”という表現については"CDデビュー" "プレデビュー"について考える...Stationhead『imaoto on the Radio』振り返り(4月22日付)等で私見を記しましたが、取材や起用するメディアが表現に違和感を抱かなかったか、デジタルリリースを質問したところはあるか等が気になります。事務所の変化には”勝てるところでだけ勝てればいい”姿勢からの脱却が必須であり、同時にメディア等周囲の姿勢も変わる必要があるということを、1年前にブログで記しています。