イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

トップ10目前の「I wonder」とトップ3ヒットの「拝啓、俺たちへ」から、真の社会的ヒット曲を考える

最新6月19日公開分ビルボードジャパンソングチャートではDa-iCE「I wonder」が12→11位に上昇、トップ10目前に迫っています。

 

「I wonder」は主題歌に起用されているドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS)が今週最終回を迎え、放送翌日となる6月19日付日本のSpotifyデイリーチャートで過去最高タイとなる4位に上昇。ドラマ最終回効果で次週の総合トップ10入りも十分有り得るいうのが自分の見方であり、まずは本日発表のストリーミング速報記事に注目したいと思います。

 

Da-iCE「I wonder」については前週、彼らが『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場を目指していることを踏まえ、このように記しました。

Da-iCEは「CITRUS」が2021年の日本レコード大賞受賞を機にビルボードジャパンソングチャートでトップ10入りしますが、男性アイドルやダンスボーカルグループの中で接触人気こそ突出すれど週間単位で上位進出したとは言い難いかもしれません(最高7位、トップ10入り通算3週)。所有指標の追加加算により上位を獲得、且つ接触人気に伴いロングヒットできたならば知名度はさらに上昇し、紅白選出に有利に成るものと考えます。

CITRUS」のストリーミング人気やカラオケでのヒットを踏まえれば、同曲が社会的ヒットに至ったと感じるは自然なことながら、同曲が最高7位であることから週間単位でヒットしたとは言い難いと捉える方がいらっしゃるかもしれません。ゆえに短期的にでも上位を獲得し、且つロングヒットすることでチャート上でもインパクトを残すことがより重要に成ると上記エントリーにて記し、そのための施策も提案しています。

 

 

さて、ビルボードジャパンは昨日、下記コラムを発信しています。

コムドット「拝啓、俺たちへ」は『YouTubeクリエイターの楽曲において、同チャートのトップ3に初めて入った楽曲』であり、それ自体は素晴らしい記録です(『』内は上記ポスト内コラムより)。他方このブログでは前週の段階、つまりフィジカルセールス指標加算2週目における動向を紹介し、LINE MUSIC再生キャンペーンの人気がトップ20内キープ(3→13位)の原動力になっていることを記しています(下記エントリー参照)。

LINE MUSIC再生キャンペーンはライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)の支持が可視化される接触指標のストリーミングに対しコアファンの熱量を反映させる、つまりは所有指標的な動きをもたらすものであり、通常急落しにくいこの指標においてキャンペーン終了後に急落する曲が散見されます。「拝啓、俺たちへ」はキャンペーン最終日が集計期間に含まれた当週、総合順位共々急落しています。

総合では3→13→72位、ストリーミング指標(の基となるStreaming Songsチャート)では16→12→59位と推移(CHART insightでは20位までの順位が可視化されるため、フィジカルセールス(黄色で表示)やストリーミング(青)の3週目順位はみえなくなっています)。次週はLINE MUSIC再生キャンペーン効果がなくなるため、ライト層に浸透しなければ総合、ストリーミング指標共々100位圏外となる可能性は高いでしょう。

 

上記表からはDa-iCE「I wonder」が主要サブスクサービスで安定していることが解る一方、3つのサブスクサブスクサービスやビルボードジャパンの総合およびStreaming Songsチャートで20位以内に入っていないコムドット「拝啓、俺たちへ」は(それゆえ表に含めませんでしたが)、LINE MUSICで30位に入った以外はいずれも100位未満(Spotifyでは200位未満)という状況です。

 

 

所有指標や所有的な動きをなぞる接触指標に伴い短期的に上位進出する曲、接触指標が安定しロングヒットする曲はいずれもヒットしたといえますが、後者がより社会的ヒット曲であるということは中長期を集計期間とするチャートから断言可能です。それも踏まえ、少なくとも所有指標加算2週目や再生キャンペーン終了後の動向を確認することを勧めていますが、しかし週間順位のインパクトが勝るという印象は拭えません。

Da-iCE「I wonder」はビルボードジャパン総合ソングチャートにおいてほぼ毎週順位が上昇(100位未満→68→40→31→19→17→18→12→11位)、ポイント面では常時上昇しており(50位未満につき2週分不明→2,347→2,587→3,447→4,150→4,158→4,392→4,624ポイント)、ストリーミングの安定に伴いロングヒットすれば年間チャートにランクインする可能性は十分ですが、そこに週間順位におけるインパクトも必要ではと感じています。

そして今回はコラム掲載直後というタイミングゆえコムドット「拝啓、俺たちへ」を比較対象として採り上げましたが、同曲のような(もしくはもっと激しい形で)一時的な上位進出と急落をなぞる曲が毎週トップ10内で入れ替わり続けているのが現状です。実際、この状況がDa-iCE「I wonder」のトップ10入りを難しくさせている一因ともいえるでしょう。

 

無論自分の見方が必ずしも正しいわけではないものの、少なくとも所有指標加算2週目や再生キャンペーン終了後の動向をみることが重要という認識が広がることを願います。ただこの見方の浸透は難しいだろうと考えるに、1週分のチャートから真の社会的ヒットがより映し出されるような形へとビルボードジャパンがチャートポリシー(集計方法)を変更することが必要だというのが私見です。近日中にこの変更提案を掲載します。