昨日はnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんによるXの生配信、ミライカフェに参加してきました。
— 徳力 基彦(tokuriki) (@tokuriki) 2024年4月2日
今日の雑談部屋「ミライカフェ」の冒頭は、こちらの記事をネタに1人語りのYouTubeの公開収録をさせていただきます。
— 徳力 基彦(tokuriki) (@tokuriki) 2024年4月2日
世界の音楽アルバムトップ20のうち19枚が、SEVENTEENを筆頭にしたK-POP勢によって占められているそうです。https://t.co/sM2TkAXUfm #ミライカフェ
徳力さんは配信冒頭にてYouTube公開収録を行っているのですが、今回は1本目に用意した話が興味深く、その点を中心に雑談に参加した次第です。皆さんに感謝申し上げます。
徳力さんのnoteはこちらの記事をきっかけとして、掘り下げられたものです。
実際、韓国ではフィジカルの初週ミリオン達成という話を時折耳にしますが、数値をみるとその凄さに驚かされます。このセールスは韓国のみならず日本でも目立つのが実際のところです。2023年度のビルボードジャパン年間アルバムチャートについては下記エントリーでまとめていますが、K-POP、特に男性ダンスボーカルグループにおけるフィジカルセールスの強さが際立っています。
あくまで私見と前置きしますが、一般のCDパッケージとは大きく異なる様々な形のフィジカル、そしてランダムに封入されたメンバーのトレーディングカードの存在が、複数枚購入を促進させているのかもしれません。K-POPに限らず、中古オーディオチェーンのジャンクコーナーやフリマアプリにてトレカ等を抜いた状態で安価販売されているのを時折見るのですが、"(メンバー内)推し"が叶ったゆえではないかと推測します。
さて、K-POPはアメリカでも強さを発揮しており、フィジカルに強い作品は米ビルボード週間アルバムチャートで最上位に達することも少なくありません。ただ、主にフィジカルセールスばかりが強い作品は翌週急落する傾向が強く、K-POPはその傾向が特に目立つジャンルだといえるのです。
下記は米ビルボードによる2023年度以降のアルバムチャート、週間1位および2位の作品一覧。このチャートはセールス(デジタルおよびフィジカル(レコードやカセットテープを含む))に加えて、動画再生を含むストリーミングのアルバム換算分(SEA)、および単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)の合算で算出されます(単位はユニット)。
K-POPは、ユニット全体に占めるセールス(それもフィジカル)の割合が極めて高い一方でロングヒット作品が強いSEAは強くないため、初登場の翌週に急落する傾向が目立ちます。尤もSEAやTEAはアルバム収録曲数が多いほど有利なため曲数の少ないK-POPアルバムは不利といえるのですが(この点については米ビルボードに対しチャートポリシー(集計方法)の改善を求めています)、しかしSEAの強くなさは克服が必要だと考えます。
週間セールス90,000枚は、現時点での2024年最大の週間売上枚数で、バーンズ・アンド・ノーブル、ターゲット、ウォルマート、公式ウェブサイト限定版を含む14種類のCDと、ターゲット限定を含むピクチャー・ディスク仕様による3種類のアナログ盤によって売り上げが強化された。
【米ビルボード・アルバム・チャート】TWICE自身初の首位獲得、LE SSERAFIMが初登場8位 https://t.co/Ib0Smh0HUS
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年3月4日
直近で米ビルボードアルバムチャート2位以内に入ったK-POP歌手のアルバムがTWICE『With YOU-th』(3月9日付で首位を獲得)。獲得ユニットの実に95%近くがアルバムセールスで占められ、また記事からはフィジカルの高い貢献度が見て取れます。しかし同作品は首位獲得の翌週に35位と大きく後退。K-POP歌手の基本的な動向をなぞっていると捉えられておかしくないでしょう。
実際、同じ協会が発表したストリーミングのアルバムランキングを見るとガラッとメンツが変わって、Morgan Wallenというカントリー歌手と、SZAというR&B歌手と、テイラースウィフトがトップ3になり、K-POP勢はトップ20からも姿を消してます。
徳力基彦さんが指摘されている世界の傾向とアメリカのそれは共通していると考えます。フィジカルセールスとストリーミングは激しく乖離しており、双方で強くなることが世界で活躍するためには必須だというのが私見。これはJ-POPの世界進出においても課題となるはずです。
ちなみに、フィジカルとストリーミングの双方で強いテイラー・スウィフトについて、ユニバーサルミュージックジャパンのディスコグラフィーをみると(→こちら)、前作のオリジナルアルバム『Midnights』にて多数のバージョンが確認できます。あるバージョンのレコード(→こちら)の商品紹介欄からは複数の特典が用意されていることが解るほか、国内盤(日本盤)CDが4種リリースされてもいます。
日本盤CDは、「ムーンストーン・ブルー」、「ジェイド・グリーン」、「ブラッド・ムーン」、「マホガニー」という4形態でリリースされる。その4つのヴァージョンのバックカバー・アートもそれぞれデザインが異なり、その4枚を合わせると、時計のデザインになる。
ソングチャートにおいても数々の施策を行ってきたことで、テイラー・スウィフトほどチャートにこだわる方はいないと捉えています。そして出典元は不明ですが、テイラー・スウィフトのフィジカル施策は日本のそれから学んだのではという指摘を見つけ、強く納得した次第。とはいえ『Midnights』はストリーミングでもヒットし、今年のグラミー賞で最優秀アルバム賞も獲得していることから、質の高さも証明されています。
今回のブログエントリーにおける米ビルボードアルバムチャートについては、以前にもその傾向を紹介しています。
昨日のミライカフェ参加に伴い、フィジカルセールスそしてその施策について再考するきっかけを得ることができたことに感謝申し上げます。施策についてはビリー・アイリッシュの発言が波紋を呼んでいることもあり、議論の場が必要だと捉えていたばかりでした。なお記事については続報もあり、下記に双方のリンクを貼付します。
環境への配慮等は当然必要と考えますが、施策のすべては否定されるべきではないというのもまた私見です。リリースタイミングの決定ひとつをとっても、それは施策といえるものです。
大事なのは、フィジカルセールスやその施策について、それが音楽チャートを過度に意識したものであるならば尚の事、その是非を冷静に議論することではないでしょうか。そして音楽チャートを詳しくチェックする、少なくとも初登場およびその翌週の動向をみれば、施策の影響度や真に浸透している作品が解ります。中長期の動向からヒットを判断することが重要であり、ストリーミング(SEA)が重要と考えるのもそれが理由です。
最後に。ビルボードジャパンにおけるアルバムチャートは現在、所有指標のみで構成されています。このブログでは、アルバムリリース後に用意される施策の反映状況等も踏まえ、米ビルボードのようにストリーミング指標を追加することを提案しています。