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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンがソングチャートの記事を訂正…"事実誤認"についての私見および改善提案を記す

昨日は9月20日公開分ビルボードジャパンソングチャートで首位を獲得したBE:FIRST「Mainstream」について紹介しました。そのエントリー(下記参照)にて貼付したビルボードジャパンのポスト(ツイート)が、記事の訂正に伴い後に削除されています。

※当記事掲載当初、誤解を招く表現がありましたこと、訂正してお詫び申し上げます。

この訂正に際し、ビルボードジャパンは総合ソングチャートの記事にて事実誤認があったとポストしています(下記参照)。自分は当初の表現に関しては米ビルボード的な記載と感じ、ほぼ気に留めてはいませんでした。その点も顧みながら、今回は問題について考えます。

 

ビルボードジャパンが当初のソングチャート記事を訂正したのは"事実誤認"ゆえとポストにて記され、首位を獲得したBE:FIRST「Mainstream」がダウンロードやストリーミング指標において施策に伴い上昇したという部分が削除されています。たとえばストリーミングではステッカー等が当たるキャンペーンが牽引したとされています。

(訂正前のキャプチャ等未実施につき、元の記載内容が曖昧であることをご了承ください。)

 

気になるのは"事実誤認"という表現。これは『事実を誤って認識すること』を意味します(事実誤認(じじつごにん)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書より)。削除部分やポストを踏まえれば、BE:FIRST「Mainstream」のダウンロードやストリーミングの上昇に関するビルボードジャパンの認識に誤りがあるというコアファン側からの指摘があったものと考えられます。

一方で昨日付ブログエントリーでも記したように、BE:FIRST「Mainstream」ではダウンロードやストリーミングでキャンペーンが展開されているほか、動画再生やラジオといった指標についても積極的な施策が行われています。施策の影響度は不明ですが、記事での当初の表現はともすればステッカーキャンペーン等の施策が大きく影響したと受け止められかねず、その表現への違和感が指摘につながったのかもしれません。

 

 

しかし、施策はほぼすべての歌手のあらゆる曲で行われている、と考えます。

リリース日の決定、フィジカルを複数種用意すること、デジタルでのキャンペーン採用、ラジオでのゲスト出演、複数の動画やプレミア公開の用意…これらはすべて施策の一環といえます。ソングチャートの指標に直接結びつかずとも、ハッシュタグキャンペーンや生配信の実施も施策に該当します。そして海外では施策が積極的に採り入れられていることは、テイラー・スウィフトの例からも明らかです。

ビルボードではリミックス追加投入、ダウンロード安価販売、フィジカルにおけるレコードの用意等、施策に伴うチャート上昇時には記事にて紹介されます。たとえばアルバムチャートにおけるK-POP作品の上位進出に関してはその大半にて販売種類の多さが紹介され、この施策がK-POP全体の存在感を高めたといえるでしょう。6月17日付米ビルボードアルバムチャートではこのように言及されています(元記事はこちら)。

 

 

昨日のエントリー(→こちら)では『コアファンが音楽チャートでの好い結果を他の歌手よりも強く望み、実行している (中略) 歌手側も同じであり、初動を如何に高めるかを考え、コアファンとより強く連帯可能な施策を組んでいる』と紹介し、『J-POPにおいてはBE:FIRSTがこの施策に抜きん出ていると捉えていい』とも記しました。これは純粋な評価なのですが、一方でその施策の明示自体は好まれないのではとも捉えています。

 

日本においては施策が強いマイナスイメージを帯びているのではと感じます。おそらく日本で真っ先に浮かぶだろう施策は、握手券付CDがミリオンセールス連発につながったいわゆる"AKB商法"でしょう。この施策は一方ではユニークユーザー数(売上枚数に対する実際の購入者数)の高くなさも伴うため非難や揶揄の対象となり、また施策の代名詞となったことでそれ自体が好ましくない印象を持ち合わせてしまったかもしれません。

しかし問題はその施策自体よりも(尤も購入者の物理的(また精神的な)疲弊を招きかねない点では検討が必要ですが)、過度な施策が音楽チャートに強く反映されてきたことにあるでしょう。以前LINE MUSIC再生キャンペーンについて紹介した際にも記しましたが、音楽チャート側が過度な施策(ヒットの実感と著しく乖離するもの)を反映させにくくするようチャートポリシー(集計方法)を柔軟に変更することこそ、最も重要なはずです。

時代に即したチャートが広く認知されれば、フィジカルセールスに特化した歌手の施策や世間の認識等も是正される可能性が高まります。ビルボードジャパンソングチャートにおける社会的ヒットの鑑としての度合いはこれまでになく高まっていますが、未だ認知度ではオリコンが上回るものと考えられ、そのオリコンは合算ランキングも用意すれどフィジカルセールス優位の状況ゆえ、まずはそれらを変える必要があると考えます。

(加えて、施策自体が非難されるのも違うと考えます。歌手側を責めるよりもチャート管理者側に改善を問うことのほうが音楽業界の未来につながるはずであり、それができる立場にある業界内の方々、そして業界全体がもっと尽力すべきだったというのが厳しくも私見です。)

 

 

施策は誰しもが実行することを認知させること、過度な施策には対策を打つことと同時に、チャート側は施策終了後の動向も追いかけ中長期的な視野にて真の社会的ヒット曲と成るかを見極めることの重要性についても、広く認知浸透させる必要があると考えます。

そしてもうひとつ、ビルボードジャパン側の"意識"に対して提案させていただきます。

 

施策についてはあらゆる作品で行われているという前提に立てば、たとえばフィジカルセールスにおける各種施策(複数種販売やグッズ同梱等)についてもきちんと述べる必要があるでしょう。ビルボードジャパンは米ビルボードと異なり施策についての記載が基本的に行われていない印象がある一方でBE:FIRST「Mainstream」においては複数の施策が言及された、この指摘の差が今回のドライな表現とみなされたものと考えます。

施策の記載自体は、施策実施が自然であることを認識していただくならば尚の事必要と考えますが、その記載に差が生まれることが反発を招きかねないことを書き手の方は留意すべきでしょう。表現自体にも心を配りながら、平等に紹介することが必要です。

(仮にそれが難しいならば、ソングチャートやアルバムチャートの記事では施策の記載を行わず、別途深掘りする記事を用意してそこで言及することもひとつの手段かもしれません。)

 

加えて、総合ソングチャートの記事はチャートディレクターの礒崎誠二さんが書いていると思われますが、たとえばポッドキャストにおいては礒崎さんの発言に違和感を抱くことが少なくなく(下記ポスト、および記載日直前のビルボードポッドキャストを参照)、ゆえに留意が可能かについては疑問を抱くというのが正直なところです。

(上記スレッドの最後でも記しましたが、掲載した氏名に誤りがありました。正しくは"礒崎さん"です。あらためてお詫び申し上げます。)

ポッドキャストでの引っ掛かりは他にもありますが、ビルボードジャパンが2022年度にて廃止した指標群に対し、その理由をいわば後出ししたことも問題です。毅然と対応しているのならば廃止アナウンスの段階でその理由をきちんと説明するはずであり、ゆえに責任意識についても疑問を抱きます。

その点を紹介した上記エントリーでも今回と同種の内容を記していました。同社の意識が変わっていないだろうことを憂慮しています。

 

 

施策実行は自然であることの認知、過度な施策に対する迅速な見直し、中長期的な視野を持つ重要性の周知に加えて、それら紹介時の表現への留意について、ビルボードジャパンに対し改善を提案します。記事等の掲載時間が一律でないこともあり、チャートの管理と発表業務とを分けることを検討する必要もあるでしょう。