(※追記(13時41分):3月30日付グローバルチャートの公開に関するスケジュール、およびグローバルチャートに関するリンクを掲載しました。)
最新3月20日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは、3月15日金曜にリリースされた藤井風「満ちてゆく」が8位に初登場。注目は、この曲が集計期間後半3日間のみを加算対象としながらトップ10入りを果たしたことにあります。
フィジカルシングル未リリースの藤井風「満ちてゆく」はダウンロード(CHART insightでは紫で表示)が3位、動画再生(赤)が7位、ラジオ(黄緑)が12位およびストリーミング(青)が20位にランクイン。ビルボードジャパンソングチャートは月曜が集計期間初日となり、特に接触指標群(ラジオ含む)において初週の上位進出が難しい状況にあって、この曲が高位置でスタートしたことが解ります。
藤井風「満ちてゆく」がチャート上で不利といえる金曜を解禁日とした理由を考えるに、ひとつは主題歌を務める映画『四月になれば彼女は』との兼ね合いが挙げられます。同作品は本日3月22日金曜に公開されるため、主題歌も映画公開曜日に合わせた可能性は高いでしょう。
また、藤井風さん側がグローバルを行動の基軸としている(視野に入れている)ことも考えられます。米ビルボードによるグローバルチャートは金曜が集計期間初日となり、世界においては新曲がその金曜にリリースされる傾向が高いのです。藤井風さんは「死ぬのがいいわ」が世界でバズを起こしたこともあり、以降海外歌手とのコラボ等世界に向けた発信に精力的であることから、新曲解禁日の設定もその一環と考えられます。
そして、NHKの新たな音楽番組『tiny desk concerts JAPAN』への出演も背景にあるのではないでしょうか。「満ちてゆく」リリースの翌日に放送された番組では、その新曲も披露されています。リリース週のテレビパフォーマンスは作品の浸透に大きく貢献したといえるでしょう。
そもそも「満ちてゆく」は、映画『四月になれば彼女は』が1月15日に公開した予告第二弾にて、音源の一部が公開されています。
特に接触指標群(ラジオ含む)における初週の上位進出が難しいビルボードジャパンソングチャートにあって、藤井風「満ちてゆく」は集計期間3日間でいずれの指標も上位に登場しています。これは1月の段階からその曲の存在が知られ、曲の一部が聴取可能だったこともあり尚の事新曲(リリースの)待望論が高まり、リリースを心待ちにした方が解禁後すぐに購入/接触した結果が今回の8位初登場の背景にあるといえるでしょう。
最近はTikTokをティザー(ティーザー)的に用いる歌手が増えていますが(このブログでは最新米チャートで「Lovin On Me」が首位獲得…ジャック・ハーロウの施策とその効果を考える(2023年11月29日付)等にてその効果を紹介しています)、映像作品タイアップ曲においてはその作品での(予告も含む)使用がTikTokのティーザーと同様の意味を持つことをあらためて実感した次第です。
藤井風さんはテレビを含むメディア露出は少ないものの、リリースから一週間の間には映画『四月になれば彼女は』の原作者である川村元気さんとの対談がネットで公開され、またJ-WAVEおよびFM802のラジオ番組に出演しています。ネット上で話題になることも相まって、次週のビルボードジャパンソングチャートにて初の1週間フル加算に伴い「満ちてゆく」が上昇することが考えられます。
今後、藤井風「満ちてゆく」においてはビルボードジャパンソングチャートの推移もさることながら、米ビルボードによるグローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)の動向にも注目です。次週3月30日付グローバルチャートは3月15日金曜が集計期間の初日となり、「満ちてゆく」は初週一週間フル加算に伴い双方のチャートで200位以内に登場するかもしれません。
(米ビルボードによる3月30日付グローバルチャートは、トップ10速報が日本時間の3月26日早朝、200位までについては同日18時台以降に発表されます。なおGlobal Excl. U.S.の11位以下については米ビルボード有料会員のみに公開されています。グローバルチャートに関する内容は(追記あり) グローバルチャート(Global 200およびGlobal Excl. U.S.)とは何か、そしてJ-POPの現在と課題とは (最新版)(2023年7月3日付)をご参照ください。)
そしてもうひとつ、先程紹介した『tiny desk concerts JAPAN』の映像がYouTubeでフル解禁されるかという点も挙げられます。これは先日ブログエントリーにて紹介していますが(上記リンク先参照)、その後NHK MUSICの公式YouTubeチャンネルにて「満ちてゆく」のパフォーマンス動画が公開されています(→こちら)。
一方でこの動画は概要欄にて『期間限定公開』と謳われています。そもそもNHK関連の公式YouTubeチャンネルから発信された動画はエンベッド(埋め込み)が通常仕様ではないため紹介が難しく、またテレビ局の公式YouTubeチャンネル発となる動画はビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標において加算対象外とみられることもあり、歌手側のYouTubeチャンネルで公開はできなかったかとも感じています。
再度の記載となりますが、『tiny desk concerts JAPAN』は企画発案側である米NPR側にてフルで公開されることが必要と考えます。藤井風さんがグローバルな活動を行うならば、世界の音楽ファンが注目するNPR(公式YouTubeチャンネルはこちら)のYouTubeチャンネルから観てもらうほうが影響力は大きいはずです。現時点ではNHK WORLD JAPANにて海外からも確認できますが、視聴のハードルはYouTube以上に高いといえます。
ブログエントリー公開後、"NHK側での見逃し配信が終わればNPR側で公開されるのではという希望的観測の声が寄せられています。それを信じたいところです。