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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲、CHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年3月20日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。

前週のエントリーはこちら。

ビルボードジャパンの最新のソングチャートに関する記事については、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポストにて簡潔に説明しています。

 

<2024年3月13日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

・100位未満(300位圏内) (前週3位) Sexy Zone「puzzle」

・100位未満(300位圏内) (前週6位) =LOVE「呪って呪って」

・100位未満(300位圏内) (前週7位) SUPER★DRAGON「New Rise」

・19位 (前週18位) TWICE「ONE SPARK」

・18位 (前週20位) 友成空「鬼ノ宴」

 

前週フィジカルセールス初加算に伴いソングチャートトップ10内に初登場を果たした3曲は、当週いずれも100位圏外へ。一部はラジオ指標も加算され、またフィジカルセールス指標で10位前後に入っている曲もあるのですが、デジタル(特にストリーミング)が加算されない限りはロングヒットしにくいことが友成空「鬼ノ宴」やTWICE「ONE SPARK」(いずれもフィジカルシングル未リリース)と比較するとみえてきます。

 

一方、デジタル先行でリリースされ、前週はフィジカルセールス指標初加算に伴い2位に再浮上したNumber_i「GOAT」は、当週5位にランクインしています。

Number_i「GOAT」のトップ5キープにはフィジカルセールス指標の好調も影響していますが、同指標はポイント全体の4分の1にとどまっており、ストリーミングそしてラジオでも同程度のポイントを獲得していることがCHART insightから解ります。

ラジオ指標の基となるプランテックのOAチャートではNumber_i「GOAT」は3位となり、上位2曲に比べてOA局数が少ないながら指標化時に首位を獲得。この傾向は前週も同様ですが、OAチャートの記事(上記リンク先参照)では『前週・前々週と確認できなかったステーションでオンエアが見られ始めている』『変わらずリクエストオンエアも安定数あり』と記載されています。この指標そして総合チャートの次週動向に注目です。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2024年3月20日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・2位 (初登場) AKB48カラコンウインク」

・8位 (初登場) 藤井風「満ちてゆく」

・13位 (初登場) BE:FIRST「Gifted. -Orchestra ver.-」

 

初登場で8位を獲得した藤井風「満ちてゆく」については、昨日付ブログエントリーで紹介しています。

 

トップ20内ではないのですが、FIELD OF VIEWDAN DAN 心魅かれてく」が80位に初登場を果たしています。元々1996年にリリースされたフィジカルシングルは、ダウンロード指標が5位に急伸したことが総合100位以内初登場の原動力となりました。ダウンロード指標の記事にて、その急伸の理由が紹介されています。

続いて、FIELD OF VIEWによるアニメ『ドラゴンボールGT』のオープニングテーマ「DAN DAN 心魅かれてく」が、前週88位から5位に急上昇した。同シリーズを手がけた漫画家の鳥山明の訃報が3月8日に伝えられたことを受けて、当週7,329DLを売り上げるとともに、2023年2月1日公開チャートで記録した最高位35位を大きく更新した。

直近60週分のCHART insightをみるとダウンロードが獲得ポイント全体のおよそ7割を占めていることが解ります。そしてカラオケやラジオ指標でも順位が伸びており、鳥山明さんの訃報が代表作のアニメ版主題歌再上昇につながったことが今回の動向からみえてきます。訃報がチャートアクションに反映される例について、このブログでは昨秋KAN「愛は勝つ」を採り上げました。

しかしそのKAN「愛は勝つ」、そして今回のFIELD OF VIEWDAN DAN 心魅かれてく」でも、サブスクが(ほぼ)未解禁のためにストリーミング指標を獲得できていません(「愛は勝つ」は当時、一部サービスでのみ解禁されていました)。「愛は勝つ」はYouTubeに公式オーディオが用意され動画再生指標が加点されましたが「DAN DAN 心魅かれてく」はそちらもない状態であり、デジタルに明るいならば上位進出ができたはずです。

 

無論音楽チャートがすべてではないとして、デジタルの充実は曲が見つかりやすくなることやバズの増幅を可能にし、過去曲がいつ(再)ブレイクしてもおかしくない環境を作ります。デジタル未解禁の歌手や曲はデジタルでのみ触れる聴き手には”存在しない”のみならず、海外にも浸透できません。

日本では今もデジタル未解禁が少なくない状況ですが、新曲のみならず過去曲においても同様の事態が続いています。またFIELD OF VIEWも一員であったビーイング(現:B ZONE)では他にも、映画『THE FIRST SLAM DUNK』のヒットに伴いテレビアニメ版主題歌にも注目が集まりながらWANDS「世界が終るまでは...」のオリジナルバージョンがサブスク未解禁につき大きくヒットできなかったという事例があります。

サブスク1回再生の利益は微々たるものだとして、ビーインググループは得られるはずの利益、そして注目を逸しているのではと強く感じています。デジタルを充実していればSNSで(口コミ的に)シェアされやすい状況にもつながり、話題性を高められたはずです。今からでも、カタログを解禁することを願うばかりです。