イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」のグローバルヒット、日本での伝わり方における疑問を記す

昨日のブログエントリー(→こちら)でも紹介したように、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が米ビルボードによるグローバルチャートのうち、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.にて7→3位に上昇。Global 200でも21→12位となり好調です。

Global Excl. U.S.における日本の楽曲のトップ3入りはLiSA「炎」、YOASOBI「アイドル」に続く3曲目であり、Global 200にて今後トップ10入りを果たせばこちらでも「炎」「アイドル」に続く形となります。なお、米ビルボードが2020年9月に新設したグローバルチャートについては下記エントリーにて解説しています。

 

今回のヒットは特筆すべきと考える一方で、個人的には危機感を抱いています。その危機感とは、このヒットが広く日本で伝わっているとは言い難いということです。

 

上記の状況は、ブログ執筆時点である2月14日午前7時台でも変わっていません。日本のメディアが歌手側からのプレスリリースに基づき発信する傾向が高いのが理由と考えますが(根拠は米津玄師やDISH//の記録報道、そのタイムラグに違和感…音楽メディアの迅速な対応を求める(2022年10月19日付)で記載)、しかしそれでは記録達成判明時とのタイムラグが生じるのみならず、メディアの取材姿勢への疑問も痛感してしまうのです。

 

そもそもビルボードジャパン側がグローバルチャートのトップ10速報記事を翻訳し公開していないことにも疑問を抱きます。

ビルボードジャパンは昨年9月に立ち上げたGlobal Japan Songs Excl. Japanにて、日本の楽曲の(日本を除く)世界市場でのヒットを可視化していますが、そのチャートの基となるGlobal 200については定点観測(と成り得る翻訳記事の公開)を行っていません。日本の楽曲の今のヒットを知るにはライバルの存在を知ること、そして日本の楽曲の今後のヒットを考えるには世界の音楽の潮流を知ることが必要であり、機会損失だと感じます。

ビルボードジャパンは米ビルボードによるアルバムチャートおよびソングチャートについては翻訳記事を公開していますが、同じ担当者が執筆しています。グローバルチャートの記事翻訳となると負担が増大するゆえできない事情もあるでしょうが、その負担を減らすべくビルボードジャパン側が複数名で対応することが必要です。Global Japan Songs Excl. Japan立ち上げ時に提案した記事翻訳の願いは、未だ叶っていません。

 

せめてビルボードジャパンがグローバルチャートの記事を毎週翻訳し公開すること(日本の楽曲の週毎の成績も網羅すること)、そしてせめて音楽に特化したメディアだけでも歌手側のプレスリリースを待たずにチャートに関する記事を公開することが必要です。歌手側、歌手のファン、そして広く音楽ファンのグローバルへの意識が向上し、日本の音楽業界のデジタル意識の加速にもつながるという可能性を高めることを願います。

 

なお、今回「Bling-Bang-Bang-Born」がGlobal Excl. U.S.で上位に進出したことについて、DJ松永さんのポスト経由で知った方も少なくないと思われます。

DJ松永さんが引用したのは、グローバルチャートトップ10一覧画像を貼付した米ビルボードのチャート専用Xアカウントによるポストですが、このアカウントは前週2月10日付のグローバルチャート、すなわちCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」がGlobal Excl. U.S.で初めてトップ10入りした際の一覧画像を用意していません。このこともCreepy Nuts側にとって機会損失だと考えるに、チャート管理者側の徹底した発信は必須です。

 

 

さて、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が今後どのように推移していくのかを予想するには、「Bling-Bang-Bang-Born」自体の状況、そしてライバル曲の動向を知ることが重要です。

「Bling-Bang-Bang-Born」においてはYouTubeにてミュージックビデオの公開がいつになるか、そして公式オーディオは公開されるかを注視する必要があります。後者においては下記エントリーで述べた事情を踏まえれば、早急な対応が必要なはずです。

 

ライバル曲の動向については、たとえば最新2月17日付では集計期間中に行われたグラミー賞も影響していますが、今後は強力なアルバムの初登場時にリード曲は勿論のこと、収録曲が大挙ランクインすることが考えられます。アルバムリリースカレンダーは下記Wikipediaのページをご参照ください。

List of 2024 albums - Wikipedia

次週2月24日付では、イェー(カニエ・ウェスト)とタイ・ダラー・サインのコラボアルバム『Vultures 1』収録曲、そして先日開催されたスーパーボウル放映中のCMにてニューアルバム『Renaissance Act II』を予告したビヨンセによるリード曲(「16 Carriages」および「Texas Hold 'Em」)が上位に登場する可能性があります。また3月にはそのビヨンセアリアナ・グランデ、4月にはテイラー・スウィフトのアルバムも登場します。

アルバム収録曲による占拠、その最たるものはテイラー・スウィフト『Midnights』が米ビルボードアルバムチャートで初登場した2022年11月5日付。米ソングチャートにてトップ10を占拠したのみならず、Global 200ではトップ10内に9曲、Global Excl. U.S.では8曲を送り込んでいます(同日付を紹介したブログエントリーはこちら)。しかし翌週はGlobal 200のトップ10ヒットが6曲、Global Excl. U.S.では1曲にとどまりました。

すなわち、アルバム初登場週にはソングチャートにも収録曲が影響を及ぼすものの、リード曲や今後のリード曲と成り得る作品以外はその影響力が限定的であるということ。強力なアルバムの登場に伴いグローバルチャートでも順位が大きく下がることはありますが、再度上位に躍り出る可能性も十分考えられるのです。チャートの仕組みを身に付け、過度に憂うことなく、着実に施策を遂行して力を付けていくことが必要です。