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【海外ビルボード】テイラー・スウィフト『Midnights』収録曲が史上初の米ビルボードトップ10独占

現地時間の10月31日月曜に発表された最新11月5日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)。前週初の首位を獲得したサム・スミス & キム・ペトラス「Unholy」に代わり、テイラー・スウィフトAnti-Hero」が初登場で首位を獲得。そしてテイラー・スウィフトは史上初となるソングスチャートトップ10独占を果たしました。

最新のトップ10はこちら。

1位 (初登場) テイラー・スウィフトAnti-Hero

ストリーミング5970万、ダウンロード13,500、ラジオ3200万

2位 (初登場) テイラー・スウィフト「Lavender Haze」

ストリーミング4140万、ダウンロード2,800、ラジオ240万

3位 (初登場) テイラー・スウィフト「Maroon」

ストリーミング3760万、ダウンロード2,900、ラジオ471,000

4位 (初登場) テイラー・スウィフト feat. ラナ・デル・レイ「Snow On The Beach」

ストリーミング3720万、ダウンロード2,600、ラジオ615,000

5位 (初登場) テイラー・スウィフト「Midnight Rain」

ストリーミング3690万、ダウンロード2,200、ラジオ449,000

6位 (初登場) テイラー・スウィフト「Bejeweled」

ストリーミング3550万、ダウンロード16,100、ラジオ160万

7位 (初登場) テイラー・スウィフト「Question...?」

ストリーミング3100万、ダウンロード21,400、ラジオ425,000

8位 (初登場) テイラー・スウィフト「You're On Your Own, Kid」

ストリーミング3410万、ダウンロード1,500、ラジオ498,000

9位 (初登場) テイラー・スウィフト「Karma」

ストリーミング3300万、ダウンロード3,400、ラジオ190万

10位 (初登場) テイラー・スウィフト「Vigilante Shit」

ストリーミング3220万、ダウンロード6,400、ラジオ424,000

 

(「Anti-Hero」および「Bejeweled」を除き、公式リリックビデオを掲載。)

今回のソングスチャートトップ10独占は、同日付の米ビルボードアルバムチャートで『Midnights』が初登場で首位を記録したことに伴います。『初動ユニットは1,578,000で、2015年12月12日付でアデルの『25』が打ち出した3,482,000以来、過去7年間での週間最大ユニットを達成』し、内訳としてストリーミングのアルバム換算分だけで419,000ユニットを獲得しています(『』内は下記ツイート内リンク先より)。

Anti-Hero」はテイラー・スウィフトにとって9曲目の首位獲得。9曲以上の首位獲得を保持する歌手は16組目となり、そのうち女性では7組目に。女性歌手の最多はマライア・キャリーの19曲で、以下リアーナ(14曲)、マドンナ(12曲)、ホイットニー・ヒューストン(11曲)、ジャネット・ジャクソン(10曲)、ケイティ・ペリーおよびテイラー・スウィフト(9曲)となります。最多保持者はザ・ビートルズの20曲となります。

テイラー・スウィフトによる米ビルボードソングスチャート首位獲得曲>

「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012年9月1日付以降 3週)

「Shake It Off」(2014年9月6日付以降 4週)

「Blank Space」(2014年11月29日付以降 7週)

「Bad Blood (feat. ケンドリック・ラマー)」(2015年6月6日付 1週)

「Look What You Made Me Do」(2017年9月16日付以降 3週)

「Cardigan」(2020年8月8日付 1週)

「Willow」(2020年12月26日付 1週)

「All Too Well (Taylor's Version)」(2021年11月27日付 1週)

Anti-Hero」(2022年11月5日付 1週)

Anti-Hero」は米ビルボードソングスチャート64年の歴史で64曲目となる初登場での首位獲得曲となりました。テイラー・スウィフトにおいては「Shake It Off」「Cardigan」「Willow」「All Too Well (Taylor's Version)」に続いて「Anti-Hero」が5曲目となり、女性歌手ではアリアナ・グランデと並ぶ最多に。最多保持者はドレイク(7曲)で、テイラーはアリアナおよびBTSと並びました。なおジャスティン・ビーバーが4曲で続きます。歴代の初登場首位獲得曲一覧は下記リンク先をご参照ください。

1956年3月24日付で米ビルボードアルバムチャート(Billboard 200)が、1958年8月4日付で米ビルボードソングスチャート(Hot 100)が開始されて以降、双方のチャートで同一歌手が共に初登場で首位を獲得した事例は多くありませんが、テイラー・スウィフトにとっては2020年8月8日付で『Folklore』および「Cardigan」が、2020年12月26日付で『Evermore』および「Willow」が、2021年11月27日付で『Red (Taylor's Version)』および「All Too Well (Taylor's Version)」が同時制覇しており、今回の『Midnights』および「Anti-Hero」が4回目となります。なお2回以上同時制覇したのは他にドレイク(2回)のみです。

 

最新の米ビルボードソングスチャートのうちストリーミングおよびダウンロード指標においても、テイラー・スウィフトはトップ10を独占。総合ソングスチャートを含む3つのチャートすべてでトップ10を独占したのはテイラーが初となります。またダウンロードでは史上初、ストリーミングにおいてはドレイクが2021年9月18日付で達成したのが唯一となっています。

Anti-Hero」のストリーミング5970万はジャック・ハーロウ「First Class」が4月23日付で記録した5460万を抜いて今年最大に。2021年9月18日付においてドレイク feat. フューチャー & ヤング・サグ記録した「Way 2 Sexy」の6730万以来となる高記録となります。またストリーミング指標制覇はテイラー・スウィフトにとって6曲目となり、ジャスティン・ビーバーに並んで2位タイとなりました。この記録の最多保持者はドレイクの14曲となります。

ダウンロード指標を制したのはテイラー・スウィフトによる「Question…?」で、自身が持つ最多首位獲得記録を24曲に伸ばしました(なおダウンロード指標ではリアーナが14曲で続きます)。「Question…?」は最新11月5日付米ビルボードソングスチャートの集計期間最終日にあたる10月27日にテイラーのホームページにて、オリジナルバージョンとインストゥルメンタルが69セントで安価販売されたことが功を奏しました。同様の措置が採られた「Bejeweled」も、ダウンロード指標4位にエントリーしています。

ビルボードでは今回のテイラー・スウィフトによるトップ10独占について、ストリーミング指標が十分強力であり、仮にダウンロードやラジオ指標が加算されずとも総合ソングスチャートでトップ10入りを果たしたであろうと記しています。

(上記は公式リリックビデオ。)

一方で、『Midnights』からのリード曲となる「Anti-Hero」はラジオでも好調。テイラー・スウィフトがラジオ指標50位以内に送り込んだ45曲の中で初登場では最高となる13位に到達しています。同曲はアダルトポップエアプレイで11位、アダルトコンテンポラリーで13位、ポップエアプレイで16位と、ジャンル別エアプレイチャートでも好調に推移しています。

 

今回のソングスチャートトップ10制覇により、テイラー・スウィフトのトップ10獲得曲は40曲に。これまでマイケル・ジャクソンと並んでいたテイラーは急伸し、女性歌手ではマドンナ(38曲)を抜いて史上最多となりました。なおテイラーにおける初のトップ10入りは、2008年10月4日付における「Love Story」となります。

<ソングスチャート最多トップ10輩出歌手>

・59曲 ドレイク

・40曲 テイラー・スウィフト

・38曲 マドンナ

・34曲 ザ・ビートルズ

・31曲 リアーナ

・30曲 マイケル・ジャクソン

・29曲 エルトン・ジョン

・28曲 マライア・キャリースティーヴィー・ワンダー

・27曲 ジャネット・ジャクソン

・26曲 ジャスティン・ビーバー

・25曲 リル・ウェインエルヴィス・プレスリー

(※エルヴィス・プレスリーは米ビルボードソングスチャート開始前にキャリアを開始。)

なおドレイクは、2009年7月に初のトップ10入りを果たし、今年8月までに59曲をトップ10に送り込んでいます。

そのドレイクは2021年9月18日付において、アルバム『Certified Lover Boy』初登場のタイミングでトップ10のうち9曲を占拠しました(上記リンク先参照)。テイラー・スウィフトはこの記録を上回り、史上初となるトップ10独占を果たしています。ひとつのアルバムからのトップ10ヒット輩出は、テイラーにとっては『1989』における5曲(2014-2015年)が最多でした。

収録曲のうち5曲以上をトップ10に送り込んだオリジナルアルバムの数(上記リンク先参照)としては、ジャネット・ジャクソンが3作品(『Control』『Rhythm Nation 1814』『janet.』)で最多となり、次いでドレイクおよびテイラー・スウィフト(2作品)となります。なおテイラー・スウィフトは「Snow On The Beach」の中で”I'm all for you like Janet”というフレーズを歌詞に用いています。

 

ソングスチャートを制した「Anti-Hero」では、テイラー・スウィフトとジャック・アントノフが共同でソングライトおよびプロデュースを手掛けています。テイラーがこれまで首位を獲得した9曲ではそのすべてにおいて彼女自らソングライトに参加しており、プロデュースを手掛けた作品では「Look What You Made Me Do」、「All Too Well (Taylor's Version)」に続く3曲目の首位となります。

ジャック・アントノフにとって、ソングライト作品での首位獲得はテイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」、ファン feat. ジャネル・モネイ「We Are Young」(2012 6週)に続く3曲目。ジャックはプロデューサーとして、「Look What You Made Me Do」「All Too Well (Taylor's Version)」に続き「Anti-Hero」が3曲目の首位獲得作品となります。

 

「Snow On The Beach」が4位に初登場を遂げたことで、客演参加したラナ・デル・レイ(テイラー・スウィフト、ジャック・アントノフと共同でソングライトも担当)にとって最高位を更新。これまではセドリック・ジャヴェイとの「Summertime Sadness」が2013年9月に6位を記録したのが最高でした。

 

Anti-Hero」の首位獲得により、”Hero”がタイトルに付く作品の首位到達は3曲目となります。

<タイトルに”Hero”が付く曲の米ビルボードソングスチャート最高位一覧>

・1位 (1週) テイラー・スウィフトAnti-Hero」(2022)

・1位 (4週) マライア・キャリー「Hero」(1993-1994)

・1位 (2週) ボー・ドナルドソン & ザ・ヘイウッズ「Billy, Don't Be A Hero」(1974)

・2位 ティナ・ターナー「We Don't Need Another Hero (Thunderdome)」(1985)

・2位 ジョーイ・スキャベリー「Theme From 'Greatest American Hero'」(1981)

・3位 チャド・クルーガー feat. ジョージ・スコット「Hero」(2002)

・3位 エンリケ・イグレシアス「Hero」(2001)

 

テイラー・スウィフト『Midnights』収録曲はトップ10を占拠したのみならず、本編13曲のうち残る3曲も15位までに初登場を果たしています(「Mastermind」が13位、「Labyrinth」が14位、「Sweet Nothing」が15位)。その他、”3am Edition”に追加収録された7曲の順位はこちら。

テイラー・スウィフトは『Midnights』本編13曲および追加7曲の計20曲すべてが米ビルボードソングスチャートで100位以内にエントリー。これによりテイラーの100位以内エントリーは通算188曲となり、リル・ウェインを抜いて歴代3位となりました。最多はドレイクの278曲で、グリー・キャストの207曲が続きます。

またテイラー・スウィフトはトップ5ヒットが24曲となりジャネット・ジャクソンに並ぶ歴代5位タイとなりました。さらにテイラーはトップ10ヒットが40曲、トップ20ヒットが67曲、トップ40ヒットは104曲となり、いずれもドレイクに次ぐ歴代2位となっています(ドレイクは順に59曲、100曲および158曲)。

テイラー・スウィフト『Midnights』収録曲がソングスチャートに20曲エントリーしたことにより、米ビルボードソングスチャートの歴史において1組の歌手が同時に20曲以上送り込んだ事例は15回目(15週目)となりました。なおテイラーにとっては2回目となります。

<米ビルボードソングスチャート20曲以上同時ランクイン歌手一覧>

・27曲 ドレイク (2018年7月14日付)

・26曲 テイラー・スウィフト (2021年11月27日付)

・25曲 リル・ベイビー (2022年10月29日付)

・24曲 ドレイク (2018年7月21日付)

・24曲 ドレイク (2017年4月8日付)

・23曲 カニエ・ウェスト (2021年9月11日付)

・22曲 バッド・バニー (2022年5月21日付)

・22曲 リル・ウージー・ヴァート (2020年3月28日付)

・22曲 リル・ウェイン (2018年10月13日付)

・21曲 ドレイク (2021年9月18日付)

・21曲 ドレイク (2017年4月15日付)

・20曲 テイラー・スウィフト (2022年11月5日付)

・20曲 バッド・バニー (2022年5月28日付)

・20曲 リル・ウージー・ヴァート (2020年3月21日付)

・20曲 ドレイク (2016年5月21日付)

 

今回のテイラー・スウィフトによるソングスチャートトップ10独占に伴い、前週首位のサム・スミス & キム・ペトラス「Unholy」はトップ10落ち(1→11位)。ストリーミングは前週比4%ダウンの2430万、ダウンロードは同40%ダウンの11,300、ラジオは同23%アップの2670万を記録しています。また「Unholy」の前に首位を記録していたスティーヴ・レイシー「Bad Habit」は2→12位に後退しています。なおラジオ指標ではハリー・スタイルズ「As It Was」が首位に立ちましたが、米ビルボードの記事ではその数値および総合順位が未掲載となっています。

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。11月5日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共にテイラー・スウィフトAnti-Hero」が制し、アルバム『Midnights』収録曲が双方のチャートでトップ10寡占状態となっています。

Global 200においては6位のサム・スミス & キム・ペトラス「Unholy」を除き、テイラー・スウィフト『Midnights』収録曲が占拠。その中でもトップ5独占は、2020年9月にグローバルチャートがローンチして以来初となります。またトップ10における9曲同時ランクインは過去最高となり、ドレイクが2021年9月18日付で記録した8曲を上回りました。

Global 200におけるストリーミングおよびダウンロード指標は、1位の「Anti-Hero」が1億4190万および20,700、2位の「Lavender Haze」が8920万および4,600、3位の「Snow On The Beach (feat. ラナ・デル・レイ)」が8430万および4,700、4位の「Maroon」が7840万および4,300、5位の「Midnight Rain」が7850万および3,300となっています。「Anti-Hero」は2022年の週間ストリーミング再生回数において、BLACKPINK「Pink Venom」の2億1210万(9月3日付)、および「Shut Down」の1億5280万(10月1日付)に続く歴代3位を記録しています。

テイラー・スウィフトにとってGlobal 200の首位獲得は「All Too Well (Taylor's Version)」(2021年11月27日付)に続く2曲目。また今回でGlobal 200におけるトップ10入りは13曲となり、ドレイク(19曲)に次いで歴代2位に。バッド・バニーが12曲で続きます。

Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.では「Anti-Hero」がストリーミング8330万、ダウンロード7,000を記録し初登場で首位を獲得。Global Excl. U.S.ではテイラー・スウィフトがトップ10内に8曲を同時に送り込み、バッド・バニーが5月21日付で記録した7曲を上回り過去最高を更新。またテイラーのトップ10ヒットは10曲となり、BTSに並ん歴代2位タイに。こちらもドレイクが最多となる12曲を保持しています。

 

テイラー・スウィフトAnti-Hero」が首位を獲得したことで、Global 200では35週、Global Excl. U.S.では33週続いていた米出身歌手以外の首位交代リレーが途絶える形となりました。