イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

演歌歌謡曲界がデジタルに明るくなってきたことを歓迎し、今一度提案内容を記す

創立90周年を迎えたテイチクエンタテインメントはその記念日である昨日、YouTubeにてイベントを開催(アーカイブこちら)。演歌歌謡曲のみならず様々なジャンルの所属歌手による映像が紹介されていますが、演歌歌謡曲がネットで積極的に動くこと自体多くはないと感じており、この企画を興味深く捉えています。

この演歌歌謡曲界の積極的なネットの活用に関して、今回は日本クラウンの施策を紹介します。

 

まずはYouTubeのプレミア公開について。ミュージックビデオ等を時間指定で公開する際に用いる施策であり、公開作品への意識を高めます。チャット機能も搭載され、そこに歌手側が登場すればコアファンの熱量は尚の事上昇します。

今週、日本クラウン所属の大江裕さんがこのYouTubeプレミア公開機能を用いて新曲を訴求します。日本クラウンのX(旧Twitter)アカウントは一昨年12月に開設されていますが、”プレミア公開”とついたポスト(ツイート)を検索すると、演歌歌謡曲関連での最初のポストが昨年6月に投稿されていることが判明(→こちら)。チャットの有無に関わらずプレミア公開を用いる演歌歌謡曲界の歌手は、三山ひろしさんを始め少なくありません。

 

さらに、一昨年の日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞した田中あいみさんはデジタルキャンペーンを開催。ポストを用いたものであり、サブスクの再生キャンペーン等とは異なりますが、デジタル活用に積極的な姿勢であることが解ります。さらに新曲を踏まえて作成されたプレイリストも興味深く感じています。

田中あいみさんは『オオカミ少年 年の差ヒットバトル ハマダ歌謡祭』(TBS)への出演が多く、そのキャラクターや落ち着きのある歌声が存在感を放っていますが、田中さんに興味を持った方がプレイリストにたどり着くことで新曲の世界観をより深く知ることができるのではないでしょうか(Spotifyも含むサービスのリンクは上記ポストから確認可能)。ちゃんみな「命日」やレディー・ガガ「Hold My Hand」の選曲には納得です。

日本クラウンの公式Xにて”デジタルキャンペーン”を含むポストを検索したところ、”ヴィジュアル系演歌歌手”として活動する最上川司さんに関する企画が最初のつぶやきとして登場しました(→こちら)。過去にはLINE MUSIC再生キャンペーンもみられましたが、その後は先述した田中あいみさんが用いた企画が徹底されている模様です。

 

 

個人的には、演歌歌謡曲界がデジタルに明るくなることを歓迎しています。

これまでこのジャンルはデジタルが強くなく、フィジカルセールスに特化した施策が中心となっていました。『若手や中堅の歌手を中心に、シングルのカップリング曲が異なるバージョンを一度に複数種、そして時期を分けて数回リリース』という施策は売上枚数増加につながっても実際の購入者数(ユニークユーザー数)の減少、そしてコアファンとライト層の乖離につながっていると捉えています(『』内は下記エントリーより)。

NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での演歌歌謡曲枠の減少が同ジャンルの厳しさを物語っています。ここには、ビルボードジャパンソングチャートでのヒットの不在も影響しているでしょう。

かなり厳しい物言いとなりますが、演歌歌謡曲においてはその年大ヒットした曲ではない限りバラエティ的演出を施さずに披露することは厳しいということでしょう。演歌歌謡曲のヒットが出ない問題についてはそのフィジカル販売手法も含めて以前から提示していますが、もっと新曲に触れられる環境を(特にデジタルにて)音楽業界側が構築することは急務だと考えます。

ゆえに、演歌歌謡曲界がデジタル施策を実行することは必要と考えます。デジタルに明るくなることは、たとえば過去曲がいつ何時でも注目を集められるTikTok等での環境整備につながります。

 

主要客層といえる中高年層に向けての訴求も必要でしょう。その際、以前のエントリーでも紹介したarne代表の松島功さんによる上記ポストが参考になるはずです(なお、リンク先で氷川きよしさんがLINE MUSIC再生キャンペーンを実施していたことも確認できます)。

その上で、歌手側によるレクチャー動画の制作も必要と考えます。売出し中の若手と認知度の高いベテラン歌手がタッグを組みダウンロードやサブスク、YouTubeについて注意点も含めて解説する動画を用意、YouTubeにアップするのみならずカラオケでの配信や、高齢者施設等向けに映像盤を作成し配布する等もまたひとつの手段でしょう。スマートフォンのレクチャー時に合わせて紹介するというのも好いはずです。

 

 

フィジカルが購入できる環境が減った現在、発し手も受け手もデジタルに明るくなる必要があります。今の社会的ヒットを示す鑑であるビルボードジャパンソングチャートでは直近4週において、トップ5はすべてフィジカルセールス指標未加算の状況です(フィジカルシングル未発売、もしくは限定発売ゆえ同指標300位未満)。紅白の現状も踏まえ、演歌歌謡曲業界全体が総出でデジタルに取り組むことを願います。