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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新チャートにおけるAdoの強さ、アルバム編…『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』とB'z『Highway X』の勝敗を分けたものとは

8月17日公開分(8月22日付)ビルボードジャパン各種チャートにおける、Adoさんによる『ONE PIECE FILM RED』関連曲の強さについて。昨日はソングスチャートの動向を紹介しました。

今回はアルバムチャートでの強さを紹介します。

 

最新のビルボードジャパンアルバムチャートでは、Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が初登場で首位を獲得しました。フィジカルセールスおよびルックアップの2指標ではB'z『Highway X』が制したものの、ダウンロード指標でトップに立った『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が総合チャートで逆転した形です。一昨日発表の記事はこちら。

Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』はダウンロードが今年最多且つ2020年以降で週間セールス歴代4位となる30,528DLを記録しましたが、集計期間前半3日間の速報値では14,461DLであることが下記ツイート内リンク先から解ります。新譜、特にアルバムの初週DL数は発売日に集中しがちな傾向がある中、映画の人気や評判等でアルバム人気も持続したものと推測されます。

フィジカルセールスはB'z『Highway X』は138,359枚で同指標トップとなり、Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が108,416枚で同指標2位。しかし下記ツイート内リンク先から集計期間前半3日間の速報値をみると、『Highway X』が113,056枚に対し『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は55,539枚であり、デジタルと同じく後者が如何に伸びたかがよく解ります。

フィジカルセールス1枚とダウンロード1DLでは後者のウエイトが大きく、Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』はルックアップの差(『Highway X』1位に対し『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は3位)を最終的に逆転した形となります。無論集計期間後半の追い上げが功を奏したことは間違いありませんが、今回の勝敗を分けたものは別途存在します。

 

CHART insightから解るように、B'z『Highway X』は紫で示されるダウンロード指標が加算されていません。それもそのはず、現段階までにB'zはこのアルバムをダウンロードおよびサブスクサービスにて解禁していないのです。

一方でB'zは、『Highway X』収録曲におけるデジタル展開を実施。テレビアニメ『名探偵コナン』(読売テレビ日本テレビ)のオープニングテーマとなった「SLEEPLESS」は6月にダウンロードおよびストリーミングにて解禁されています。

さらにはこの「SLEEPLESS」を含む3曲のミュージックビデオを今月相次いで解禁。

ただし「SLEEPLESS」を除く2曲はミュージックビデオもショートバージョン。全貌はアルバムをフィジカルで買って聴いてほしいという購入誘導(促進)の意味合いがあるのかもしれませんが、「SLEEPLESS」をダウンロードやストリーミングで解禁したことを踏まえてアルバムもフィジカル/デジタル同時解禁と捉えた方は少なくないのではないでしょうか。

 

B'z『Highway X』のダウンロード未解禁、およびそのことでビルボードジャパンアルバムチャートにおいて逆転される可能性については、このブログで以前取り上げました。

このデジタル遅らせ施策がB'zのみならず、ベテラン歌手に少なくないことについても以前指摘しています。他方、たとえばBE:FIRST『BE:1』におけるデジタルに明るい施策を踏まえてビルボードジャパンに対し、米ビルボードアルバムチャートのチャートポリシーを採用すべきではないかとも提案しました。仮にそのポリシー下ならば、Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』はB'z『Highway X』に大差をつけたことでしょう。

また先述したB'z『Highway X』のみならず、Mr.Childrenのベストアルバムや森口博子さんのガンダムソングカバー集のようなフィジカルセールス優先のためのデジタル後発施策は行われにくくなるでしょう。特典封入やデジタル後発のみならず、フィジカル複数種販売やデジタル未解禁といった各種施策にも、アルバムチャートの米ビルボード方式は優位に作用するはずです。

ここで挙げたMr.Children、そして森口博子さんにおいても、実はB'z同様にデジタル後発のアルバムからデジタルのみで先行リリースするという施策を採っています。

Mr.Children「永遠」(3月24日配信→収録アルバム『Mr.Children 2015 – 2021 & NOW』5月11日フィジカルリリース→7月15日アルバムデジタル解禁(ブログ参照))

森口博子翔べ!ガンダム」(2月2日配信)、「ビギニング (with VOJA)」(2月16日配信)、「BEYOND THE TIME~メビウスの宇宙を越えて~ (with TM NETWORK)」(3月2日配信)→収録アルバム『GUNDAM SONG COVERS 3』3月9日フィジカルリリース→4月6日アルバムデジタル解禁(ブログ参照))

デジタル解禁を遅らせることで初週フィジカルセールスに集中させるというのが目的と思われますが、ここで取り上げた3組を含め同種の施策を採る方々が果たして実際に伸ばすことができたのか、そしてその検証を行っているかが気になります。

森口博子さんによるガンダムカバー集3作品の初週フィジカルセールスは24,569枚→32,888枚→29,895枚と推移。1作目の評判等で2作目の初週セールスが伸びたことの反動や、2作目から3作目の期間が少し空いたことも売上ダウンに影響しているかもしれません。3作目も同様にデジタル後発という認識が初週フィジカルセールスに集中させたとして、個人的にはデジタル同時解禁のほうがより盛り上がったものと考えます。

また、たとえばB'z『Highway X』のリリース週は自分の住む地域を中心に豪雨で被災した箇所が複数あり、また宅配等が遅延したところもあるはずです。発売日までにフィジカルが届かないとして、デジタルで新譜を聴きながら片付け等作業したいという方の思いが未解禁によって叶わず、歌手側への不信感を抱いた方もいらしゃったかもしれません。先行曲をデジタル解禁したならば尚の事、失望感は強まったことでしょう。

 

 

B'z『Highway X』のビルボードジャパンアルバムチャートでの2位発進は、フィジカルセールスでの常時首位獲得を続けてきたベテランにとってはまさかと言える結果だったかもしれません。Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が強すぎることも理由とはいえ、仮にB'zがデジタルに積極的になっていれば今回の結果は違っていた可能性があります。

複合指標に基づくチャートにこだわらないから問題ないと仮に述べたとして、フィジカルセールス自体『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』に迫られています。そしてフィジカル/デジタルを同時解禁していれば購入の選択肢が増え、買わないことを選択する方が少なからず減るものと思われます。その点においても今回のB'z『Highway X』のデジタル後発施策は正しかったか自問自答する必要があるでしょう。

そして、デジタルに懐疑的な歌手の姿勢が今回の結果につながったと言って差し支えないかもしれません。複合指標に基づくビルボードジャパンアルバムチャートの結果が広がること、またチャートそのものが信頼されるようになれば尚の事、デジタル後発や未解禁を貫くことへの違和感が音楽ファンにも、そして歌手側にも生まれてくるものと考えます。