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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年9月20日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週(9月13日公開分)のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年9月13日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

Snow Man「Dangerholic」 1位→9位

・ENHYPEN「Bite Me」 3位→14位

(上記は”Japanese Ver."のミュージックビデオ。)

・≠ME「想わせぶりっこ」 5位→70位

・Ado「唱」 8位→3位

・DXTEEN「First Flight」 14位→100位未満(300位圏内)

 

Perfume「Moon」 15位→53位

  

 

前週20位以内初エントリー曲における当週の動向は、Ado「唱」と同曲以外とで大きく分かれたといえます。「唱」については前週のエントリー(→こちら)にて『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』以降の作品で最高の初動とお伝えしましたが、最新9月20日公開分のTikTok Weekly Top 20では2位に初登場(下記参照)。いわゆる"活用"での人気も後押しとなり、総合でも3位に上昇しています。

他方、高いフィジカルセールスに伴い上位進出を果たした曲は下降傾向にあります。それでもSnow Man「Dangerholic」がトップ10、ENHYPEN「Bite Me」が20位以内に残っているのは立派ですが、前者はデジタルを解禁していれば、後者は再生キャンペーンを実施したLINE MUSIC以外でのストリーミングも強ければ、当週は高い位置にとどまり、さらにはロングヒットの可能性も高まったはずです。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年9月20日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・1位 (初登場) BE:FIRST「Mainstream」

・ 5位 (初登場) なにわ男子「Make Up Day」

・13位 (初登場) FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」

・19位 (前週25位) Ado「向日葵」

 ・20位 (初登場) Official髭男dism「日常」

 

最新ソングチャートを制したBE:FIRST「Mainstream」は週間獲得ポイントが2023年度6位、初動(100位以内初エントリー時)では最多を記録。この曲の動向等については、木曜のエントリーにて紹介しています。

 

Ado「向日葵」は主題歌に起用されたドラマ『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』(TBS)の最終回に沿う形で上昇していますが、先述した「唱」のヒットが牽引したともいえるでしょう。ドラマの終了後も「向日葵」の勢いが持続するならば、「唱」と相まってAdoさんのアーティストパワーがより高まるものと推測されます。

 

そして今回のチャートで特に注視すべきと考えるのは、なにわ男子「Make Up Day」がフィジカルセールス加算初週ながら総合5位にとどまったということです。

「Make Up Day」は、今年度5位に就いた曲の中では4番目に獲得ポイントが大きいことが下記表から解ります。それゆえ、好調な曲が多いことで今作の上位進出が阻まれたと捉えることもできるかもしれません。

一方で、ダブルAサイドによる票割れという側面も考えられます。近年男性アイドル/ダンスボーカルグループが強いラジオ指標において、「Make Up Day」はフィジカルでは「Missing」とダブルAサイドという扱いゆえ票割れが起きやすく、当該指標では「Make Up Day」が90位、「Missing」が100位未満(300位圏内)となっています。

ただ気になるのは、同じくダブルAサイドとしてリリースされた「The Answer」「サチアレ」の動向と異なるということ。昨年5月4日公開分ビルボードジャパンソングチャートではフィジカルセールス指標が初加算された前者が総合首位に立っていますが、「The Answer」の総合首位獲得時におけるラジオ指標は15位でした(「サチアレ」は同日付で300位未満、翌週から4週連続で100位未満ながら加点対象となっています)。

(なお上記CHART insightにおいて、「The Answer」は最新9月20日公開分まで表示、「サチアレ」は今年5月17日公開分が最終エントリーとなっています。)

 

ともすればジャニーズ事務所所属歌手を巡る状況、および周囲の反応が、ラジオにおいても影響し始めているのではと感じています。現在はテレビも含めて所属タレントの出演控えが発生していることはほぼありませんが、初代社長による性加害問題がきちんと解決されない限りはレギュラー番組以外の露出や曲のOAが減る可能性も考えられます。それが今回、なにわ男子において表れ出したのかもしれません。

ただ、仮にそうだとして、デジタルを解禁していればチャートアクションは変わったでしょう。Snow Man「Dangerholic」分析時にも触れましたが(ビルボードジャパンで目立つ男性アイドル/ダンスボーカルグループのソングチャート初登場…その動向を分析する(8月27日付)参照)、ドラマ主題歌であることを踏まえるに曲は気になるが歌手のファンではないライト層、またドラマファンというコアファン以外にも訴求できたはずです。

ダブルAサイドシングルにおいて、ビルボードジャパンソングチャートではフィジカルセールス指標は1曲のみに加算されますが、デジタルを解禁すればこの指標以外を獲得可能となり、上位進出もあり得ます。今年度ではBE:FIRSTの前フィジカルシングル「Smile Again」のカップリングとなる「Boom Boom Back」が好例であり、同曲は2月22日公開分にて首位に達しています(2曲のCHART insightはこちらで紹介しています)。

 

デジタルを味方にすることは、リリース手段に固執する現在のジャニーズ事務所には難しいかもしれません。しかし事務所に必要なのは、性加害問題自体の解決を遅らせた環境や考え方の自浄でもあるはずです(無論メディアも同様です)。音楽業界においてデジタルに明るくなることは日本のエンタテインメント業界全体の好転にもつながると考えるに、チャート分析の立場から事務所および音楽業界に対し、そのことを願います。