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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年9月6日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週(8月30日公開分)のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年8月30日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

乃木坂46「おひとりさま天国」 前週2位→3位

・WOLF HOWL HARMONY「Sweet Rain」 前週3位→100位未満(300位圏内)

・THE JET BOY BANGERZ「Jettin'」 前週4位→100位未満(300位圏内)

・KID PHENOMENON「Wheelie」 前週5位→100位未満(300位圏内)

・LE SSERAFIM feat. ナイル・ロジャース、Ado「UNFORGIVEN -Japanese ver.-」 前週6位→28位

・IMP.「CRUISIN'」 前週8位→68位

・JUNHO (from 2PM)「Can I」 前週13位→100位未満(300位圏内)

・藤井風「Workin' Hard」 前週20位→13位

 

前週トップ10内に初めて進出した曲について、乃木坂46「おひとりさま天国」および藤井風「Workin' Hard」とその他の曲とでは、動向がはっきり分かれています。

 

LDHの新人3組については前週のエントリーでも分析したように、フィジカルセールス指標初加算週にポイントを最大化させるべくスケジュールが組まれたことが前週の上位初登場へとつながっています(冒頭で紹介した前週のエントリーをご参照ください)。一方でキャンペーン終了直後の急落は、曲がライト層に届いているとは言い難い状況と捉えていいでしょう。

LDH所属の男性ダンスボーカルグループはここ最近、フィジカルセールスが強くなっていると感じています。コアファンの熱量が高まり歌手との結び付きが強まっているならば、その熱量を今後はライト層の獲得に向けることが大事になるでしょう。今回は新人3組が前週のトップ10入りに伴い広告展開の機会を得ており、それを用いて巧くライト層の獲得につなげられるかに注目です。

 

一方で、乃木坂46「おひとりさま天国」は1ランクダウンにとどめています。前作「人は夢を二度見る」が2→17位、ポイント前週比31.5%に推移したのに対し今作ではポイント前週比64.9%であり、好調に映ります。

フィジカルセールス加算2週目における前作および今作のCHART insightをみると(上記参照)、順位に差はあれどフィジカルセールス以外の指標は大きく変わっていないともいえます。ビルボードジャパンの記事では『当週はサイン入りCDなどが当選するキャンペーンが後押しし、65,606枚を売り上げ』とあり、実際2週目のセールスは「人は夢を二度見る」の26,035枚を大きく上回っています。これが今回功を奏したといえそうです。

このキャンペーンを用意した理由は分かりかねますが、仮にフィジカルセールス加算2週目におけるビルボードジャパンソングチャート対策という側面があるとすれば、次週以降の数値をチェックして真の社会的ヒット曲と成るかを見極める必要があります。「人は夢を二度見る」は100位以内エントリーが4週にとどまっており(下記参照)、ともすれば「おひとりさま天国」も同様の動きをなぞるかもしれません。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年9月6日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・2位 (初登場) SixTONES「CREAK」

・4位 (初登場) King Gnu「SPECIALZ」

・14位 (前週31位) シャイトープ「ランデヴー」

・17位 (前週64位) ONE OK ROCK「Make It Out Alive」

 ・18位 (前週60位) XG「NEW DANCE」

 

3位初登場のSixTONES「CREAK」は、前週まで4週に渡り動画再生指標が好調に推移し総合でも100位未満にランクインを続けていました。フィジカル発売前にコアファンがチェックしたのみならず、メンバー出演のドラマ主題歌ゆえにそのドラマファンが確認した可能性も考えられます。ドラマは必ずしも歌手のコアファンだけが観るものではないため、ドラマは好きだが歌手のファンではないライト層も確認したことでしょう。

特にKing & Prince以降のジャニーズ事務所所属歌手は動画先行解禁に伴い動画再生指標が好調に推移するパターンが定番化し、Snow Manの最新シングル収録曲のように主に動画再生の強さに伴い総合ソングチャート100位以内に入る状況も生まれています(上記参照)。ならば仮にデジタルを(先行で)解禁していれば、という思いは拭えません。

このデジタル解禁の必要性については幾度となく述べていますが、昨日のエントリー(→こちら)にて掲載した過去の内容を今一度貼付します。事務所の変革に伴い、デジタル解禁が当たり前になるよう意識が変わることを強く願うばかりです。このブログでは変革を促すべく、デジタル解禁の必要性を唱え続けていきます。

 

さて動画再生指標については、4位に初登場したKing Gnu「SPECIALZ」、また14位に上昇したシャイトープ「ランデヴー」共に獲得できていません。

「SPECIALZ」についてはオープニングテーマに起用されたテレビアニメ『呪術廻戦』のノンクレジットオープニングムービーが9月8日4時の段階で1385万もの再生回数を記録していますが、こちらは動画再生指標の対象となっていません(当該動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が採番されていない、もしくは動画がUGC(ユーザー生成コンテンツ)扱いとなり動画再生のカウント対象外になっているためと考えられます)。

たとえばOfficial髭男dism「Subtitle」ではミュージックビデオ公開前に公式オーディオを用意したところ、その段階で動画再生指標トップ20内に登場を果たしています(上記エントリー参照)。ミュージックビデオが今後公開されるならば、それまでに公式オーディオをアップしておくのもひとつの手段です。実際、YouTubeを音楽ストリーミングとして用いる方が少なくないことが今週発表された調査から判明しており、尚の事です。

 

そしてバイラルヒットから総合ヒットへと転換しているシャイトープ「ランデヴー」については、そもそもミュージックビデオが用意されていない模様です。こちらについては早い段階でミュージックビデオを、また歌詞に注目が集まるならばリリックビデオを用意することも必要でしょう。ブレイクタイミングでのミュージックビデオ公開が遅くないことについては、新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」が証明しています。

(「オトナブルー」は2020年にリリースされた曲ですが、ミュージックビデオの公開は今年3月となります。)

「ランデヴー」は最新9月6日公開分ビルボードジャパンソングチャートでストリーミング指標の基となる再生回数が7位に。またエントリー執筆段階(9月8日4時)においてもApple Music、SpotifyそしてLINE MUSICでトップ10前後を推移しており、注目度は今年ソングチャートで初の上位進出した歌手の中でも高いほうと考えます。ミュージックビデオが早急に作られることが、さらなるブレイクの契機になるかもしれません。