イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

年間の音楽チャート/ランキングが出揃うも、信頼できるのはビルボードジャパンのみと断言する理由

今週はオリコンおよび『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)による年間ランキングが発表されました。音楽チャートにおいて、このブログではビルボードジャパンが(一部改善が必要な部分はあれど)最も社会的ヒットの鑑であるとして以前から紹介していますが、認知度では今週発表されたふたつのランキングがより高いものと思われます。

しかし、ビルボードジャパンのソングチャートと同様に複合指標から成るオリコン合算シングルランキング、そして『CDTVライブ!ライブ!』の年間ランキング(以下”CDTVオリジナルランキング”と表示)をみるに、ビルボードジャパンが信頼できる、言い換えれば他ふたつは信頼できないと断言していいでしょう。

 

ビルボードジャパンの年間チャートに関するポストを掲載し、ソングチャートを主体に分析した弊ブログエントリーは下記をご参照ください。今回はこのエントリーにて掲載した表を基に、3つのチャート/ランキングの順位比較表を作成します。

 

 

オリコンの年間ランキングのうち、合算シングルランキングはこちら。

他方、CDTVオリジナルランキングは番組ホームページ上でも現時点で公開されておらず、確認には見逃し配信が必要となります。

では、今回発表されたランキングを踏まえ、作成した順位比較表を掲載します。

(なおオリコンについては『無断で (中略) Webサイト (PC、モバイル、ブログ等)や雑誌等で掲載するといった行為は固く禁じております』とホームページ下部に掲載されています。そのため、オリコン側から指摘があった際は上記表等を取り下げる予定です。)

 

3つのチャート/ランキングは以下の表で比較が可能です。

 

ビルボードジャパン以外のふたつのランキングについては、問題点を以前掲載しています。

しかし2023年度の年間ランキングを見るに、問題が解決されたとは言えません。とりわけオリコン合算シングルランキングにおいては公開範囲の狭さや”フィジカルシングル”単位というチャートポリシー(集計方法)ではヒット曲が読みにくいことが問題であり、またCDTVオリジナルランキングにおけるチャートポリシーの曖昧さに対してはチャート管理者としての責任能力を疑わざるを得ません。

 

順位比較表をみると、旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)所属歌手がデジタル未解禁ながらビルボードジャパン以外のランキングで上位に到達する傾向が強いと感じています。これはオリコン合算シングルランキング、CDTVオリジナルランキング共通の特徴ですが前者では3位と4位の差が30万以上離れているゆえ、こちらについては自然なことかもしれません。

一方で気になるのは、CDTVオリジナルランキングの動向です。同ランキングで用いられているフィジカルセールスのデータはオリコンではなくビルボードジャパンが用いているサウンドスキャンと共通のものと想起されます。

乃木坂46「人は夢を二度見る」の紹介時、CDTVオリジナルランキングにおいては『初週売上66.3万枚を記録!』とのテロップが表示。同曲初登場時のビルボードジャパンおよびオリコンのフィジカルセールス(上記ポスト内リンク先参照)から、CDTVオリジナルランキングがビルボードジャパンのデータを用いていることが解ります。ではビルボードジャパンの年間フィジカルセールスチャートはどうなっているでしょう。

4位のSnow Man「Dangerholic」と5位の乃木坂46「おひとりさま天国」の差は14万弱となっており、オリコンよりも差は縮まっています。この2曲はCDTVオリジナルランキングにおいて前者が年間8位、後者が22位と差がついている状態であり、ともすればフィジカルセールスのデータはビルボードジャパンを用いつつ、総合ではオリコンに近い形といえるかもしれません。

 

さて、ビルボードジャパンの年間フィジカルセールスチャートでは乃木坂46「ここにはないもの」が3位に入っていますが、同曲はCDTVオリジナルランキングにて年間80位以内に入っていません。これは集計期間の関係と思われますが、尤もこの集計期間について、CDTVオリジナルランキングでは年間の範囲が52週未満ではないかという疑念が生じています。

ビルボードジャパンの2023年度の年間チャートは52週分で構成され、その2週目にあたる2022年12月14日公開分にて乃木坂46「ここにはないもの」がフィジカルセールス初加算に伴い総合2位に上昇。そして2024年度の開始2週目である今年12月13日公開分にて同じく乃木坂46「Monopoly」がフィジカルセールス初加算に伴い総合首位を獲得。「ここにはないもの」の総合2位到達から52週後となっています。

しかしCDTVオリジナルランキングでは年間にて2曲ともランクインしていません。通常”年間”とは52週もしくは53週が一般的であり、どちらか、もしくはどちらもランクインしておかしくなかったでしょう。CDTVオリジナルランキングのデータ元となるビルボードジャパンのフィジカルセールスをみると、初週売上は「ここにはないもの」が830,384枚、「Monopoly」が691,515枚であり、年間ランクインは可能といえます。

実は直近にて、米ビルボードが2023年度の年間チャートを49週分としたという問題があり、背景を分析した上で批判しています。ただこれは背景が見えるからこそ批判が可能という話であり、CDTVオリジナルランキングはチャートポリシーが未掲載であることや年間ランキングの発表自体3年ぶりであったこと等を踏まえるに、年間ランキングの52週未満も残念ながら有り得る話だと感じています。

 

 

今回は主にCDTVオリジナルランキングに対する問題点の指摘が多かったものの、そもそもオリコン合算シングルランキングも含め、週間発表分と年間発表分で公開範囲を大きく変える必要はないはずです。また通常は年間チャート100位までが一般的ながらCDTVオリジナルランキングは事前の説明がない状態で80位までとしていることも問題であり、これらからも双方のランキングの客観性を感じることはできません。

その客観性の欠如についてはオリコンにて、以前も指摘した旧ジャニーズ事務所所属歌手に対する厚遇が現在も続いていると感じています。

上記は本日放送の『ミュージックステーション SUPER LIVE 2023』に関するポストですが、アイウエオ順ではなく旧ジャニーズ事務所所属歌手だけが最初に表示され、またデビュー順となっています。このような配慮を完全に結びつけるのは違うかもしれませんが、このような厚遇措置がフィジカルセールス重視のチャートポリシーを変えない遠因だと感じてしまうのは、自然なことではないでしょうか。

 

フィジカルセールスのウエイトを高くすることは社会的ヒットの実態にそぐわないという点でそもそも違うというのが私見ですが、しかし音楽チャート/ランキングにいろんな種類があること自体は自然なこととはいえます。問題は、そのチャートポリシー自体、そしてそのポリシーに成った理由を堂々と提示しているかどうかにあると考えます。そして客観性を保てているかについても、信頼を左右するものとなるでしょう。

 

 

以前から指摘している問題点が改善されていない以上、オリコンは合算シングルランキングを手放し売上という側面のみのランキングを提示すること、CDTVオリジナルランキングはチャートポリシーを明確にするかランキング自体を廃止することが必要だというのが厳しくも私見です。後者については、”CDTV”という名称も変えないといけないのではと感じています。

そしてビルボードジャパンには、自身のチャートの認知度を高めることに集中してほしいと願います。CDTVオリジナルランキングへのデータ提供取りやめ、もしくは『CDTVライブ!ライブ!』にてビルボードジャパンのチャートを取り扱うよう働きかけることも必要でしょう。こちら等一部メディアにてチャートへの自負を述べられていますが、同じメディアにこだわらずより広いメディアで訴求するよう動くことを願います。

 

 

最後に。関連資料としてYOASOBI「アイドル」が初登場して以降となる3つのチャート/ランキングの週間トップ5動向を比較した表を貼付。特に「アイドル」、そしてAdo「唱」の動向をチェックすることを勧めます。首位獲得週数の差や首位の座の入れ替わりが激しいか否かを比較すれば、どの音楽チャート/ランキングがより社会的ヒット曲の鑑であるかが解るはずです。