イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

『第74回NHK紅白歌合戦』、発表された歌唱曲から考えること

昨日、『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と記載)の披露曲が発表されました。

このブログでは出場歌手の予想を行った上で、発表後にその振り返りを兼ねて出場歌手の傾向を分析しています。

今回は、発表された曲目から見えてくる傾向を考えます。

 

 

YOASOBIの披露曲はやはり「アイドル」ですが、彼らは今週出演した地上波長時間音楽特番にて『CDTVライブ!ライブ!クリスマスSP』(TBS 12月18日放送)では「アドベンチャー」、『ミュージックステーション SUPER LIVE 2023』(テレビ朝日 12月22日放送)では「Biri-Biri」を披露。また『輝く!日本レコード大賞』(TBS 12月30日放送)では「アイドル」の海外フェスでの映像が流れます。つまり、紅白が初の生歌唱の場なのです。

YOASOBIは『THE BOOK 2』をリリースした2021年においても年末の各音楽番組で異なる曲を披露しており、今年もそれに倣ったのかもしれません。一方で今年は「アイドル」のヒットが(日本の音楽業界全体でも)突出していることを踏まえるに、今週放送の音楽特番で披露されなかったことに対し違和感を抱く方は少なくないのでは、そして最終的には彼らへの不信感にもつながりかねないのではと危惧する自分がいます。

音楽ジャーナリストの柴那典さんがポストの中で用いた”胆力”とは、動じない心という意味。今回の決定に賛否はあるかもしれませんが、YOASOBIチームが選んだ道が正しかったかは音楽チャート(特にソングチャート、およびトップアーティストチャート)の動向を追いかけて判断しようと思います。

 

 

若手歌手についてはその年ヒットした曲を披露、また過去曲でも今年リリースしたベストアルバムに収録された作品がパフォーマンスされる傾向にあります(SEVENTEENにおける「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」(2020)が後者の例)。他方、若手で過去曲を披露する場合、ともすれば翌年の選出が危ぶまれるのではというのが厳しくも私見です。

坂道グループにおいては昨年出場した日向坂46が外れ、櫻坂46が返り咲きましたが、日向坂46は昨年の紅白にて2019年のシングルカップリング曲「キツネ」を披露しています。きつねダンスが話題になったゆえの選曲と理解できても、昨年のシングル表題曲ではない作品の披露は当年の代表曲の不在を意味し、今年の動向につながったのかもしれません。

その意味で、NiziUが今回プレデビュー曲「Make you happy」を披露することが気になっています。尤も同曲はNiziU最大級のヒット曲ゆえ日向坂46の例は当てはまらないかもしれませんが、来年はPRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS出身のME:Iがデビューすることもあり(実際、オーディション関連作品群がサブスクで好調に推移)、女性アイドル/ダンスボーカルグループについてはより狭き門になると感じています。

(一方でPerfumeの「FAKE IT」も2010年、シングルのカップリング曲としてリリースされていますが、中堅という立ち位置ゆえこのような選曲も認められているのかもしれません(本来、紅白側が選曲権を持っていると伺ってはいるのですが)。ちなみに今年は、中堅と呼べる歌手の出場が少なくないと実感しています。)

 

 

演歌・歌謡曲界において、今年リリースした曲を披露するのは水森かおりさん(「日向岬」)、純烈(「だってめぐり逢えたんだ」)そして三山ひろしさん(「どんこ坂」)の3組のみ。ですが、いずれも企画を伴った披露となります。

かなり厳しい物言いとなりますが、演歌歌謡曲においてはその年大ヒットした曲ではない限りバラエティ的演出を施さずに披露することは厳しいということでしょう。演歌歌謡曲のヒットが出ない問題についてはそのフィジカル販売手法も含めて以前から提示していますが、もっと新曲に触れられる環境を(特にデジタルにて)音楽業界側が構築することは急務だと考えます。

 

 

さだまさしさんの披露曲が「秋桜」であることにも驚いています。本来、今年大きな話題となったWBCにちなんだ曲である「マイアミの歓喜もしくは開運~侍ジャパン栗山英樹監督に捧ぐ~」(2023)を披露するのではと捉えていたのですが、今回の紅白審査員に野球関係者は含まれていません。

これはあくまで予想と前置きしますが、ともすれば紅白側はさださんにWBC曲を披露してほしかったのではないでしょうか。しかしTBSが裏番組に『WBC2023 ザ・ファイナル』を用意しWBCの話題を独占することで、紅白側がこの話題に一切触れられなくなったのかもしれません。

さだまさしさんはNHKへの貢献度も高いゆえ白組での出場は納得できるところですが、本来は特別企画にてWBC曲を披露するのが最善だったと感じています。

 

 

最後に、その特別企画について。『テレビ放送70年 特別企画「テレビが届けた名曲たち」』には4組が出場します。ただ70年という括りながら、寺尾聰ルビーの指輪」および薬師丸ひろ子セーラー服と機関銃」は共に1981年リリースであり、70年を振り返るには披露曲のリリース年に偏りがあると感じています。

この企画については、出場歌手発表の段階から紹介した上で、たとえばテレサ・テン時の流れに身をまかせ」(1986)をカバーするJUJUさんや「TRUE LOVE」(1993)を披露する藤井フミヤさんをその企画内で披露していただくほうがより良かったのかもしれません。

 

 

昨年は曲目発表の後に安全地帯の出場がアナウンスされており、今年についても追加発表があるかもしれません。その発表、そして当日の放送を待ちたいと思います。