2020年1月にスタートした【私的トップ10ソングス+α】企画、今回は2023年9月分です。前の月にリリースされた曲を中心に選出しています。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。
過去の私的トップ10ソングス等についてはこちらに。Spotifyを利用し、New Music Wednesday、New Music Friday Japan、New Music FridayおよびMonday Spinといったプレイリストを毎週チェックしています。
なお、"私的トップ10ソングス"とあるように、月イチで紹介するこのエントリーは完全な私見に基づくベストソング選出企画となります。音楽チャート紹介時には個人的な作品への思い入れを乗せないよう心掛けています。
10位 ブレント・ファイヤズ「WY@」
ヒップホップ的なアプローチに加えて、ハイハット(と思しき音)の挿入が浮遊感を増幅させるR&B。自分はR&Bに通じるヒップホップ作品が好きなこともあり、逆のアプローチを施したこの曲に惹かれた次第。ニューアルバムをリリースしたばかりのドレイクがカバーしたら面白いことになりそうです。
9位 浦上想起「星を見る人」
安直な表現かもしれませんが、ドリーミーなポップソングとして見事。不思議な世界を綴った歌詞も、温かみのある音にマッチしています。自分はこの曲からヨンシー「Go Do」や、宮川弾アンサンブル『pied-piper』といった、かつて大好きだった作品群を思い出しました。
8位 ジェイコブ・コリアー feat. ブランディ・カーライル「Little Blue」
ドリーミーな曲が続きます。来年リリースのニューアルバム『Djesse Vol.4』収録曲と思しきブランディ・カーライルとの共演作品をこの位置に。ジェイコブ・コリアーのハーモニーとブランディの声の相性が好いことを実感すると共に、賛美歌やエンヤ的といえる今作の美しさから、アルバムがポジティブな空気に満ちるのではと期待しています。
7位 トーン・スティス「Smoking In The Park (Paradise)」
ファルセットで紡ぐメロディ、マーヴィン・ゲイ的なフェイクがより美しさを際立たせたR&B。これまでもプリンスやブライアン・マックナイトといった時代を創り上げたソングライターに敬意を払いつつ、ワンアンドオンリーな世界観を確立していったトーン・スティスの才能にあらためて感心すると共に、R&Bの復権も間違いないと思わずにはいられません。
6位 カーク・フランクリン「Needs」
ゴスペル界を牽引するカーク・フランクリンによる、10月リリースのアルバム『Father's Day』からの新たな先行曲。カークらしいメロディは健在ながら、カークの声が抑え目(控えめ)なっていることが逆に新鮮で、ゴスペル色の薄い美しいポップソングとして捉えることも可能かもしれません。
5位 三浦大知「能動」
来年1月24日にリリースされるニューアルバム『OVER』からの先行曲は、日本のシングルでは類を見ないほどの攻めの姿勢を示し、J-POPという枠をいい意味で大きく逸脱。ジャネット・ジャクソンによる「Throb」(アルバム『janet.』(1993)収録)を初めて聴いたときの衝撃を思い出しました。制作に参加したTOMOKO IDAさんは今後要注目の存在といえるでしょう。
4位 クレオ・ソル「There Will Be No Crying」
クレオ・ソルは9月に2枚のオリジナルアルバム、『Heaven』および『Gold』をリリースしており、こちらは後者に収録。1960年代ソウルミュージック的な質感と、タイトル位のリフレインや”No Crying”というコーラスが相まって、美しいゴスペルや賛美歌を聴いているような感覚を抱きます。
3位 Skaai「TEMPO A」
おそらくは自身の出自を綴った曲ですが、そのようなリリックのヒップホップ作品の中でここまで聴かせてくれるものはなかなかないと感じています。Skaaiさんが”TEMPO A”と発することでグルーヴを支配する、その格好良さたるや。ラップではなく歌っている箇所も多いのですが、それが出自をよりドラマティックに、また説得力を高めているのも興味深い点です。
2位 Ado「唱」
アルバム『狂言』でボカロP提供作品を乗りこなしてきたAdoさんが、ヒップホップからヨーデル(的歌いまわし)まで様々な音楽ジャンルも織り込み難易度が高まったこの曲をいとも簡単に歌い上げる姿にさらなる成長を感じます。隙が全くない曲ながらハロウィーンイベントタイアップに伴う踊ってみた等チャレンジで浸透、カラオケでも多くの挑戦者を生んでいるところに、今の聴き手のアグレッシブさも感じずにはいられません。
1位 TOMOO「Grapefruit Moon」
今年1月に「Cinderella」を2位に選んで以来の選出。その際も述べた平坦なメロディラインはここでも効果的に用いられ、サビ冒頭に配した曲名の浸透度を高めることに成功。またTOMOOさんによる声色は中島みゆきさんも想起させ、歌詞の説得力を高めているように感じます。ピアノ、弦楽そしてブラスの配置も見事です。
「Cinderella」そして「Grapefruit Moon」を収録したアルバム『TWO MOON』は好事家の間で話題となっている模様。リリース元であるポニーキャニオン内レーベル、IRORI Records(→リンク)にはOfficial髭男dismやスカート、Kroi等が所属していますが、TOMOOさんはBialystocks共々昨年仲間入り。所属歌手の顔ぶれを見るに、このレーベルが今後のJ-POPを牽引していくという予感がします。
以下、次点として10曲。
・King Gnu「硝子窓」
・クレオ・ソル「Self」
・デヴェンドラ・バンハート「Fireflies」
・ジェイク・シマブクロ「Grateful」
・キム・ペトラス「Treat Me Like A Ho」
・Mndsgn (マインドデザイン)「Finallyalone」
・オリヴィア・ロドリゴ「Logical」
・サマラ・ジョイ「Tight」
・セニア・マナセ「Love / Hate」
クレオ・ソルについては先にリリースされた『Heaven』から選出しています。
またここではキム・ペトラス「Treat Me Like A Ho」を選びましたが、この曲はプロデューサーがドクター・ルークであることを後に知りました。
ドクター・ルークはケシャとの裁判が示談となりましたが、その示談に至るまでの状況を踏まえれば(示談はしたとしても)ドクター・ルークが関わる作品を選ぶことに抵抗がないわけではないというのが正直な私見です。その一方で、制作クレジットについては曲を気に入った後に知ったこと、またケシャ側の示談の際のコメントにおける前向きな姿勢を踏まえ、今回リストに掲載しました。
ともすればこのリスト入りを不服とする方もいらっしゃるかもしれませんが、この背景を知っていただいた上で、聴く/聴かないを個々に選んでいただけたならばと思います。
Spotifyのプレイリストはこちらに。
今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。