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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

BE:FIRST「Mainstream」の日本およびグローバルチャートの動向からみる、ライト層を惹きつけることの重要性

最新9月27日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、前週初登場で首位を獲得したBE:FIRST「Mainstream」が4位に後退しています。

BE:FIRST「Mainstream」のポイント前週比は33.7%。フィジカルセールス指標加算2週目におけるポイント前週比は「Gifted.」(2021)が37.1%、「Bye-Good-Bye」(2022)が31.9%、「Smile Again」(2023)が50.3%となっています。ビルボードジャパンが時代に即してチャートポリシー(集計方法)を変更しているため直接の比較は難しいかもしれませんが、少なくとも前シングルよりは比較的大きくダウンしていることが解ります。

 

フィジカルセールス指標加算2週目にポイントが大きく落ち込むのはBE:FIRSTのみならず多くの歌手の作品で共通していますが、「Mainstream」においてチェックしたいのはストリーミングの動向です。

大ヒット、そしてロングヒットする曲は上記CHART insightにて青で表示されるストリーミングの割合が過半数に達しています。最新ソングチャートのトップ3作品(Ado「唱」、YOASOBI「アイドル」およびKing Gnu「SPECIALZ」)はいずれも、この指標が獲得ポイントの6割を上回っています。

「Mainstream」はストリーミング指標の基となる再生回数が7,550,928→6,489,306回再生と推移、再生回数前週比は85.9%に。またビルボードジャパンによるポッドキャスト最新回(下記参照)にて動画再生回数が6,032,214→3,793,023回再生(前週比62.9%)であることも判明しています。これらの比率から、ポイント前週比はフィジカルセールス指標の加算2週目に伴う急落が最も大きく影響しているものと捉えていいでしょう。

一方で「Mainstream」においては、ストリーミングにおける主要3サービスの動向が大きく異なる点が気になります。この点は前週も記していますが(→こちら)、当週において「Mainstream」はLINE MUSIC週間チャート(9月26日火曜まで)で2位、Spotify(9月21日木曜まで)では11位となった一方、Apple Music(9月24日日曜まで、下記記事参照)においては100位と大きく異なります。

ビルボードジャパンソングチャートの上位3曲(ストリーミング指標においても同順位)においては、Ado「唱」がLINE MUSICおよびApple Musicで1位、Spotifyで4位。YOASOBI「アイドル」がSpotifyで1位、Apple Musicで3位、LINE MUSICで4位。King Gnu「SPECIALZ」がApple Musicで2位、Spotifyで3位、LINE MUSICで6位となっています。これら3曲はサブスクサービス間での順位の乖離があまりない状況です。

 

LINE MUSICでは再生キャンペーンが目立ち、男性アイドル/ダンスボーカルグループを主体にコアファンの熱量を用いたキャンペーンが多いため彼らの作品が高い傾向にあります。Spotifyはデイリーチャートおよび再生回数が可視化されるため、LINE MUSICまでとはいかずともコアファンが熱量を保ちやすいものと考えますが、それらサービスよりApple Musicは攻略し難いことも、「Mainstream」の差に現れているものと考えます。

しかし、ロングヒットに重要なのはストリーミングを如何に高め続けるか、です。この接触指標はコアファンの熱量以上にライト層(曲は気になるが歌手のファンというわけではない方々)への浸透が重要であり、長く聴いてもらい且つコアファンに昇華させるかが鍵となります。その点において、BE:FIRST「Mainstream」の浸透はこれからと言えるでしょう。Apple Musicは日本において再生回数のおよそ3割を占めるため、尚の事です。

 

そしてストリーミングにおけるライト層浸透の重要性は、グローバルチャートからもみえてきます。

このチャート(Global 200および、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.)については上記エントリーにて紹介していますが、LINE MUSICにおいてはカウント対象に成っていないものと捉えています。LINE MUSICがドメスティックなサービスであること、そしてLINE MUSIC独自の再生キャンペーンが米ビルボードには好意的に受け止められていないだろうことがその理由です。

BE:FIRST「Mainstream」が初めて1週間フル加算の対象となった最新9月30日付グローバルチャートでは、同曲がGlobal 200にランクインしていません。一方で最新のビルボードジャパンソングチャートにおけるトップ3、およびキタニタツヤ「青のすみか」は200位以内に入っており、「青のすみか」のCHART insightも踏まえれば接触指標の重要性があらためて解るはずです。

(なおキタニタツヤ「青のすみか」は各サブスクサービスにおける週間チャートにおいて、Spotifyで5位、Apple Musicで6位およびLINE MUSICで7位となっており、サブスクサービス間での乖離はこの曲においても小さいことが解ります。)

 

 

前週「Mainstream」が首位初登場を果たした際、BE:FIRSTのチャートの強さについて記しました。コアファンの連帯を招く歌手側の施策の巧さ、そしてファンダムの高い熱量はJ-POP屈指であり素晴らしいことです。一方で、ライト層をどう惹きつけるかという課題が今作のチャート分析からあらためて見えてきたといえるでしょう。

その点において、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)本日放送回での初登場は重要な転換点に成るかもしれません。

今回の首位獲得をBE:FIRSTのステップアップにつなげるには、そして「Mainstream」をJ-POPのメインストリームにするのならば尚の事、ロングヒットに至らせ広く世間に浸透させることが重要であり、そのためには『ミュージックステーション』の初出演が大きなきっかけのひとつに成り得ると考えます(上記参照)。そのパフォーマンスに惹かれ、興味を持った方を聴取行動に至らせるための仕掛け等が重要となるでしょう。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】BE:FIRST「Mainstream」が初週2万2千ポイントを突破…一方で気になる点とは(9月21日付)より

 

ビルボードジャパンソングチャートでのロングヒット、そして世界中のヒット曲を可視化したグローバルチャートにランクインすることで、少なくともチャートチェックをする方にはその名が拡がるでしょう。そう考えれば、サブスクサービスでの乖離の縮小、すなわちライト層の確立は急務のはずです。本日の『ミュージックステーション』初出演を契機にBE:FIRSTがライト層を獲得できるかについて、今後を注目していきます。