イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】BE:FIRST「Mainstream」が初週2万2千ポイントを突破…一方で気になる点とは

(※追記(10時15分):ビルボードジャパンが9月20日公開分ソングチャートの記事について訂正を行い、当初のポスト(ツイート)を削除しています。そのため、ビルボードジャパンが新たに用意したポストを今回のエントリーに貼付しました。)

 

 

 

最新9月20日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:9月11~17日)では、前週首位に到達したSnow Man「Dangerholic」が9位に後退、BE:FIRST「Mainstream」が初登場で首位を獲得しています。

BE:FIRST「Mainstream」はソングチャート構成6指標において、ダウンロード(上記CHART insightでは紫で表示)、ラジオ(黄緑)および動画再生(赤)の3指標を制覇。フィジカルセールス(黄)は2位、ストリーミング(青)は5位を記録しています(なおカラオケ(緑)は他指標に加えて上昇が遅いのが特徴です)。今回は高い初動を記録した「Mainstream」の好調の理由、そして気になる点について分析し、提案を記します。

 

「Mainstream」はダウンロード数は54,835DLとなり、2023年度において週間最多を記録しています(上記参照)。フィジカルも同週リリースゆえ所有指標が割れる可能性もありましたが、フィジカルセールスは前作「Smile Again」より12,890枚増加。ダウンロードにおいても前作の初動が43,529DLであり、1万1千以上伸びたことが解ります(前作の初動についてはブログエントリー最後に貼付したリンクをご参照ください)。

「Mainstream」では各デジタルプラットフォームにてキャンペーンを開催したおり、これが数値の上昇に影響したものと考えます。

 

ラジオにおいては、指標の基となるプランテックのOAチャート(上記参照)でも首位となり、調査対象局のうち最も多くのステーションにてOAを獲得しています。下記ポスト(ツイート)内画像にて、今回の集計期間におけるゲストならびにコメント出演番組が一覧化されています。

 

動画再生指標においても、対象となる動画が続々登場。音源リリースと同時に「Mainstream」の公式オーディオが公開され、同日には生配信を経た後にミュージックビデオが解禁。その後もX(旧Twitter)での告知後に水曜はダンスプラクティス、金曜はダンスパフォーマンス、そして土曜にはビハインド・ザ・シーンが立て続けに公開されています(これらはBE:FIRSTのYouTubeチャンネルにて確認できます→こちら)。

「Mainstream」の動画再生回数は6,032,214回を記録したことが最新のビルボードジャパンポッドキャストで報告され、YOASOBI「アイドル」の初週と同等であると指摘されています(「アイドル」の初登場時、4月19日公開分における動画再生回数は4,334,923回を記録)。

 

BE:FIRSTは各種キャンペーンについて、ひとつの画像に分かりやすい形でまとめているのが特徴です(デジタルとラジオとで別の画像には分かれていますが)。これはK-POP歌手における手法と同様であり、スケジュールの把握のしやすさはコアファンの連帯、そしてファンダム総体での熱量拡大を招き、チャートでの上位初登場の可能性を高めます。J-POPにおいてはBE:FIRSTがこの施策に抜きん出ていると捉えていいでしょう。

 

 

BE:FIRST「Mainstream」における他指標(カラオケを除く)の動向をみてみましょう。フィジカルセールスは169,197枚を記録。なにわ男子「Make Up Day」(390,702枚)の半分以下ではありますが、BE:FIRSTの前作「Smile Again」と比べて伸びていることは先述した通りです。

一方でストリーミングは、前作「Smile Again」の初動が9,101,560回再生だったのに対し「Mainstream」では7,550,928回再生と比較的大きくダウンしています。加えて、主要サブスクサービスにおける週間順位も大きく異なります。

 

いずれも集計期間最終日が異なりますが、LINE MUSICにおいては9月19日火曜までの1週間にて「Mainstream」が首位に。またSpotifyでは9月14日木曜までの1週間において42位に初登場。これは「Mainstream」の加算が集計期間半ばからであり、最新のビルボードジャパンソングチャートで集計期間最終日にあたる9月17日付デイリーチャートでは、同曲が7位に入っています。

一方で、ビルボードジャパンソングチャートと集計期間を同一とするApple Musicでは「Mainstream」が43位に。日本においてストリーミングでの上位初登場自体が凄いことではあるのですが、BE:FIRSTにおいてはサブスクサービス間で乖離が発生しています。

9月20日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおいてストリーミング指標の上位順に並べ替えたCHART insightを上記に。「Mainstream」より上位にランクインする4曲(「アイドル」「SPECIALZ」「唱」および「青のすみか」)はLINE MUSICで3~6位、Spotifyで2~4位および14位、Apple Musicでは1~3位および6位に入っています。Spotifyで14位のAdo「唱」は、9月17日日曜のデイリーチャートで5位に達しています。
King Gnu「SPECIALZ」およびAdo「唱」は初ランクインから1ヶ月未満ゆえ今後の動向を注視する必要がありますが、ビルボードジャパンソングチャートではストリーミングに強い作品がロングヒットする傾向にあり、そしてそれら作品はサブスクサービスが異なっても大きく順位が変わることはほぼありません。

 

「Mainstream」はLINE MUSICにて、週間1位を目指すというキャンペーンを実施(【LINE MUSIC】 BE:FIRST「Mainstream」 LINEジャックキャンペーン | BE:FIRST(9月8日付)参照)。ユーザー毎に再生回数ハードルが設定されたものではないため、再生キャンペーン実施時に比べてストリーミング全体の再生回数が減少したとも考えられますが、それでもキャンペーンの存在がコアファンの熱量を高めたのではないでしょうか。

またSpotifyではデイリーチャートが再生回数と共に可視化されるため、熱量が反映されやすいプラットフォームといえますが、一方でApple Musicはコアファンの熱量が反映されにくいため、今回の乖離に影響したといえるでしょう。そして、Spotifyにおける以下の現象も気になっています。

9月18日は月曜ながら祝日であり、連休最終日ゆえ基本的にほとんどの曲が再生回数を伸ばした中にあってBE:FIRSTの作品はダウンし、下落幅も大きくなっています。ともすれば、9月17日までがビルボードジャパンソングチャートの初週カウントに当たることを理解し、初週が終わったことでコアファンの熱量が一段落したものと考えられます(なお翌日付では他の曲に比べてBE:FIRSTの作品は上昇度が大きくなっています)。

 

これらから想起可能なのは、コアファンが音楽チャートでの好い結果を他の歌手よりも強く望み、実行しているということ。そしてそれは歌手側も同じであり、初動を如何に高めるかを考え、コアファンとより強く連帯可能な施策を組んでいるかがよく解るのです。

「Mainstream」の今回のビルボードジャパンソングチャートにおける初動22,386ポイントは、YOASOBI「アイドル」の5週分に続いて2023年度週間獲得ポイント数で6番目に高い記録となっています。これはコアファンの連帯がBE:FIRSTに首位の座をプレゼントしたと言ってもよく、SKY-HIさんはこのように反応しています。

初動に関しては2023年度最多ポイントに至った「Mainstream」。同曲における連帯の強さや熱量の高さを踏まえれば、ダウンロード指標における今年度最高記録においてはキャンペーンを実施するデジタルプラットフォームが複数あることから、1ユーザーあたり複数のプラットフォームから購入したという可能性も考えられます。

 

 

初動の強さは素晴らしいことです。一方で、ヒットにより重要なのはロングヒットし年間単位で上位に進出することであると、このブログでは幾度となく紹介しています。

BE:FIRSTが今年リリースしたフィジカルシングル「Smile Again」、および先行曲でフィジカルのカップリングに収録された「Boom Boom Back」は共に総合ソングチャート100位以内エントリーがおよそ2ヶ月もしくは3ヶ月にとどまっています。そして総合チャート(黒)とストリーミング(青)の順位が連動していることがCHART insightから理解できます。ゆえに、ストリーミングの基となるサブスクを如何に伸ばすかが課題です。

ストリーミングは、曲には興味があるものの歌手のファンというわけではないというライト層の人気をより強く反映する指標です。今回の「Mainstream」はテレビパフォーマンスがこれからであること、9月11日が一斉解禁日だったことを踏まえれば尚の事、コアファンとライト層でのこの曲の浸透度が大きく異なっているということが今回の各指標から見えてきます。

今回の首位獲得をBE:FIRSTのステップアップにつなげるには、そして「Mainstream」をJ-POPのメインストリームにするのならば尚の事、ロングヒットに至らせ広く世間に浸透させることが重要であり、そのためには『ミュージックステーション』の初出演が大きなきっかけのひとつに成り得ると考えます(上記参照)。そのパフォーマンスに惹かれ、興味を持った方を聴取行動に至らせるための仕掛け等が重要となるでしょう。

 

 

今回の「Mainstream」のチャートアクションは初動の大きさこそあれ、実際は「Smile Again」のそれと大きくは変わらないだろうというのが私見です。前フィジカルシングルの初動における注目点および課題を記したエントリーを最後に紹介し、「Mainstream」が、BE:FIRST側がそしてコアファンの方々が今後どう動いていくかを注視していきたいと思います。

良い作品を推し出す際にライト層にどうリーチさせるかを運営側、コアファンそれぞれが考えることがより重要であり、双方が議論できる場を設けているならばそうすることがより健全だと考えます。昨日のエントリーにて紹介したYOASOBI「アイドル」における"活用"の多さは、ひとつの参考になるのではないでしょうか。

(※『昨日のエントリー』はこちらを指し、UGC("踊ってみた"や"歌ってみた"に代表されるユーザー生成コンテンツ)の重要性について紹介しています。BE:FIRST「Mainstream」はUGCチャートであるTop User Generated Songsにおいて100位未満だったことが最新のビルボードジャパンポッドキャストで明らかになっており、この指摘も今後に向けてのヒントになると考えます。)