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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年9月13日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週(9月6日公開分)のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年9月6日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

SixTONES「CREAK」 2位→24位

King Gnu「SPECIALZ」 4位→2位

・シャイトープ「ランデヴー」 14位→12位

 

ONE OK ROCK「Make It Out Alive」 17位→56位

 ・XG「NEW DANCE」 18位→20位

 

当週100位圏外に急落した曲はなく、チャート構成比におけるストリーミングの加点が如何に大きいかが解ります。またデジタル未解禁のSixTONES「CREAK」は動画再生指標が好調をキープしたことで、フィジカルセールス加算2週目における総合ポイントの急落をある程度抑えることに成功しています。

しかし一方では、やはり最大のウエイトを占める、そしてライト層(曲は気になっても歌手のファンというわけではない方)にリーチ可能なサブスク(ストリーミング指標の基)をきちんと解禁しないと、話題性が高まっても大ヒットには至りにくいと考えます。ジャニーズ事務所の意識改善も必要ですが、音楽業界全体がそれを指摘しないといけないというのが私見です。

 

なお、前週のエントリーにて動画再生指標未加算を紹介したシャイトープ「ランデヴー」では、当週この指標が加算されています。メディア露出次第ではさらなるヒットも考えられますが、一方でこのヒットをラジオが十分拾い上げていない(現時点でラジオ指標は未だ加点なし)という状況です。歌手側のラジオへのアプローチも必要かもしれませんが、ラジオ側がヒットへの感度を高める必要があると感じています。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年9月13日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・1位 (再登場) Snow Man「Dangerholic」

・3位 (再登場) ENHYPEN「Bite Me」

(上記は”Japanese Ver."のミュージックビデオ。)

・5位 (初登場) ≠ME「想わせぶりっこ」

・8位 (初登場) Ado「唱」

・14位 (初登場) DXTEEN「First Flight」

 

・15位 (初登場) Perfume「Moon」

  

 

最新チャートにおけるトップ3、そして21連覇達成後に4位へ後退したYOASOBI「アイドル」の動向については、先週木曜のエントリーにて紹介しています。

 

今回はAdo「唱」に注目。昨年の大ヒットアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』以降の楽曲で、10位以内にエントリーを果たしたのは今回が初となります。

<Ado 『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』以降リリース楽曲の

 ビルボードジャパンソングチャートにおける動向>

 

・「リベリオン」(2022年9月19日リリース)

 最高位 20位 (2022年9月28日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年1月11日公開分

・「行方知れず」(2022年10月10日リリース)

 最高位 25位 (2022年10月19日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年1月4日公開分

・「アタシは問題作」(2023年2月20日リリース)

 最高位 27位 (2023年3月1日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年8月9日公開分

・「いばら」(2023年5月9日リリース)

 最高位 38位 (2023年5月17日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年9月13日公開分

・「向日葵」(2023年7月11日リリース)

 最高位 24位 (2023年8月16日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年9月13日公開分

・「唱」(2023年9月6日リリース)

 最高位 8位 (2023年9月13日公開分)

 総合300位以内最終エントリー 2023年9月13日公開分

「向日葵」はタイアップ先のドラマ『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』(TBS)の最終回に向けて緩やかに伸び、スマッシュヒットの様相を呈していますが、それ以外の曲は100位以内初登場週に最高位を記録しながら直後にダウンするという状況でした。

 

Adoさんにおいては「うっせぇわ」(2020)でのメジャーデビュー以降、アルバム『狂言』(2022)およびその直後のシングル「永遠のあくる日」まではボカロPがソングライティングを担当し、その後『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』では音楽プロデューサーや歌手(シンガーソングライター)が楽曲提供。そして今回CHART insightを掲載した『ウタの歌…』以降の作品は、双方からの提供が混在するという状況でした。

「唱」はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンイベント「ハロウィーン・ホラー・ナイト」とのコラボレーション楽曲。9月8日から11月5日まで開催されるこのイベントのダンスショー「ゾンビ・デ・ダンス」のテーマソングに使用される。作詞はTOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.)が、作編曲はヒット曲「踊」の制作に携わったGigaとTeddyLoidが担当。エキゾチックなビートが特徴的なEDMとなっている。

Ado、USJとのコラボ曲「唱」を配信リリース - 音楽ナタリー(8月29日付)より

『ウタの歌…』以降で初動が最大となった「唱」の作詞は「ウタカタララバイ」のソングライトを手掛けたFAKE TYPE.が担当しており、今回の曲は『狂言』および『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』におけるアプローチの融合といえるかもしれません。実際、Adoさんも今回のソングライターチームについて次のように言及されています。

新曲「唱」は作曲・編曲をGiga&TeddyLoidさんという「踊」を手掛けてくださった2人にお願いし、作詞をTOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.)さんにお願いしました。とんでもないコラボレーションによって生み出された楽曲を楽しみにしていて下さい。

Adoの新曲「唱」がUSJのCMソングに決定、人気アトラクションとコラボ(コメントあり / 動画あり) - 音楽ナタリー(8月4日付)より

そして、上記リンク先でも紹介されているように、タイアップ先となるユニバーサル・スタジオ・ジャパンのCMはリリースの1ヶ月も前から登場。楽曲配信前から既に認知度が高かったことが、「唱」の高い初動に影響したと考えていいでしょう。また興味深いのは、AdoさんのYouTubeチャンネルにてサビのダンス映像に焦点を当てたショート動画が発信されていること。これが「唱」イコールダンスという印象を高めています。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン側もダンスレクチャー動画をアップしています。イベントが盛り上がるにつれて、「唱」がダンスを機にさらなるヒットに至るかもしれません。

 

大ヒット曲「踊」を彷彿とさせる音楽性、タイアップの大きさのみならずそのCMの早期展開による浸透度の上昇、そしてダンスの存在が「唱」の高い初動につながっていると考えます。特にダンスにおいては参加意欲を高める効果を持ち合わせていますが、YOASOBI「アイドル」において接触や所有以外にヒットの要因となった"活用"の重要性を、今回でも感じずにはいられません。

尤も「唱」が次週以降どうなるかは不明ですが、主要サブスクサービス(Apple Music、SpotifyおよびLINE MUSIC)のすべてで直近デイリーチャートにてトップ5入りを果たしています。この曲のヒット如何では『NHK紅白歌合戦』出場の可能性も高まりそうです。