イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LINE MUSIC再生キャンペーンを採用しない曲や歌手が目立ってきたことを興味深く捉える

最新11月8日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、LE SSERAFIM「Perfect Night」が7位、NiziU「HEARTRIS」が10位に初登場を果たしています。

この2曲はいずれも接触指標群が強く、「Perfect Night」はストリーミング(上記CHART insightでは青で表示)が全体の7割、「HEARTRIS」ではストリーミングと動画再生(赤)の合計で8割近くを占めています。そしてこの2曲において、【LINE MUSIC再生キャンペーンを実施していない】ことを興味深く感じています。

 

(※キャンペーンページは開催期間終了後消去される可能性を踏まえ、キャプチャを実施しました。問題があれば削除いたします。)

LE SSERAFIM「Perfect Night」、およびNiziU『Press Play』(「HEARTRIS」がリード曲となっている作品)は共にデジタルキャンペーンを実施していますが、LINE MUSICにおける再生キャンペーンは見当たりません(なお「Perfect Night」はRakuten Musicにてこのキャンペーンを実施していますが、当該サブスクサービスのシェアは大きくはLINE MUSICやApple Music、Spotify等に比べて大きくはありません)。

 

 

LINE MUSIC再生キャンペーンはここ数年で施策として採用する歌手が増加。ライト層の支持が反映されやすい接触指標のストリーミングにおいて、(設定された再生回数突破に伴い限定グッズ等が当たることもあり尚の事)コアファンによる熱量、すなわち所有指標的な動向が反映されやすいというというのがキャンペーンの特徴です。その一方で、本来安定するはずのストリーミング指標が企画終了後に急落することが目立っています。

LINE MUSIC再生キャンペーンがビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標に大きく反映される件については、LINE MUSIC側が再生回数のカウント方法を変更する形で解決に向かってはいます(上記参照)。また当該キャンペーンを使用した曲が指標の基となるStreaming Songsチャートで首位を獲得した際に他サービスとの乖離を考慮し指標化時に係数処理が施されることも、チャートの是正につながっています。

ただし現行のチャートポリシー(集計方法)においては、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の係数処理適用がStreaming Songsチャートで首位を獲得した作品に対してのみであるため、チャートにおけるキャンペーン採用曲の急上昇と急落が少なくありません。ゆえにこのブログでは幾度となく述べていますが、キャンペーンを採用するすべての曲に対し係数処理を実施することが必要と考えます。

 

 

ビルボードジャパンによる現行のチャートポリシーの下ではLINE MUSIC再生キャンペーンが一時的にでも有効に作用するのですが、それでも先述した「Perfect Night」や「HEARTRIS」では行われていません。LE SSERAFIMやNiziUは今夏リリース曲で再生キャンペーンを採用しており尚の事、この変化は大きいと考えていいのではないでしょうか。

このLINE MUSIC再生キャンペーン未採用については、たとえばBE:FIRSTによる直近の作品においても同様です。

BE:FIRSTはこれまでのフィジカルシングル表題曲や「Boom Boom Back」においてもLINE MUSIC再生キャンペーンを実施していましたが、「Mainstream」ではLINE MUSICに関するキャンペーン自体は実施しても再生キャンペーンではありませんでした(一方で、LINE MUSIC週間チャートを制した際は御礼の動画を応募者全員にプレゼントするという企画は用意されています)。

またBE:FIRSTは今週デジタルリリースした最新曲「Glorious」でもLINE MUSICにてキャンペーンを開催していますが、再生回数に関するものではありません。

 

BE:FIRST「Mainstream」は9月20日公開分のビルボードジャパンソングチャートを制覇。9月中旬のリリース曲ながら、同月のLINE MUSIC月間ランキングでは4位に入っています(詳細はこちら)。一方で他のサブスクサービスとの乖離はややみられるものの、『コアファンが音楽チャートでの好い結果を他の歌手よりも強く望』む姿勢が、再生回数の増加につながっているだろうと感じています(『』内は上記エントリーより)。

 

接触指標群、特にストリーミングはライト層の人気をより強く示すと考えますが、コアファンの熱量も勿論反映されます。「Mainstream」は登場8週目となる最新11月8日公開分にてビルボードジャパンソングチャートでは28位、ストリーミング指標46位に登場していますが、これまでのフィジカルシングル表題曲の中で登場8週目における総合およびストリーミング順位は「Mainstream」が最も高くなっています。

<BE:FIRST フィジカルシングル表題曲における、ビルボードジャパンソングチャート100位以内初登場以降の動向>

 

・CHART insightにおいて総合チャートの順位は黒、ストリーミング指標は青で表示。

・「Gifted.」「Bye-Good-Bye」および「Smile Again」は100位以内初登場前週からの11週分を、「Mainstream」は最新週までの8週分を表示。

 

「Mainstream」のリリースタイミングにてBE:FIRSTは『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に初登場を果たしたこともあり、同曲へのライト層の浸透はこれまでより進んでいるだろうと考えます。そのライト層のアプローチ、そしてコアファンもまた継続的に支持していることが、CHART insightからみえてくるのではないでしょうか。

 

 

ライト層への浸透、そしてコアファンの継続的な支持という状況は、最新ソングチャートで初登場を果たしたLE SSERAFIM「Perfect Night」およびNiziU「HEARTRIS」においても見受けられるものと考えます。自分はポストにてSpotify動向を日々紹介していますが、「HEARTRIS」紹介時における反応から後者について特に強く感じています。

日本ではストリーミング指標で初登場時から高位置に登場する曲が海外に比べて多くないのですが、その中にあってK-POPや、J-POPでもダンスボーカルグループの作品は初動が大きい印象です。ともすればLE SSERAFIMやNiziU、BE:FIRST側は初動が大きくなること、コアファンの熱量を信頼していることがLINE MUSIC再生キャンペーンからの脱却につながったものと考えます。同時に彼らの、ライト層獲得への自負も感じます。

 

このブログではLINE MUSIC再生キャンペーンの効果とその反動とを踏まえ、ビルボードジャパンに対しキャンペーン採用全曲への係数処理適用を提案する等、キャンペーンが抱える問題を指摘しています。この継続的な提案が歌手側の施策を過度に踏みとどまらせてしまった可能性もゼロではないかもしれませんが、今回の流れは非常に興味深く、支持できるものと捉えています。