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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングチャート週間1~5位を定点観測化し、デジタル充実の重要性を今一度唱える

このブログでは2022年度ビルボードジャパン年間ソングチャート登場後に男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)に特化した分析エントリーを掲載しましたが、今年度は現時点では行わない予定です。その代わりに、これまで3位までだった週間ソングチャートの定点観測を今年度から5位まで拡げて対応します。以下に最新チャートまでの表を掲載しますが、上半期チャートと照合すると様々な気付きを得られるはずです。

 

2023年度ビルボードジャパン週間ソングチャート、最新6月14日公開分までにおける1-5位のリストはこちら。

昨年度はこちら(3位まで)。

今年度はフィジカルセールスに強いながらデジタルを伴っているとは言い難い曲が、フィジカルセールス初加算週の順位において前年度より下回ることが少なくありません。これはデジタルに強い曲が週間単位でも上位に進出できる形にチャートポリシー(集計方法)が変わったこと、そして男性ダンスボーカルグループが特に強さを発揮していたルックアップおよびTwitterの2指標が今年度から廃止されたことが影響しています。

フィジカルセールスに強い曲はデジタルで強さを発揮すれば、言い換えればデジタルを維持しつつフィジカルセールスにて補強すれば、瞬発力、持久力共にチャートアクションが強く成るはずです。その好例として昨年度最終週の米津玄師「KICK BACK」や今年4月19日公開分で初登場したスピッツ「美しい鰭」が挙げられるのですが、今年度フィジカルセールス10万超え作品でデジタルも強い曲は現時点でほぼないと言えるでしょう。

その中にあって今年度はKing & Prince「ツキヨミ」が上半期ソングチャート31位に入り、ジャニーズ事務所所属歌手による作品では最上位に。一方で同曲はフィジカルセールス加算4週目以降が今年度に該当します。一部メンバーの脱退発表以降にフィジカルセールス指標(上記CHART insightでは黄色で表示)が伸びた影響も大きいながら、接触指標である動画再生指標(赤)の上位安定が上半期単位での上位進出につながっています。

 

その大半の歌手がサブスク、そしてダウンロードでも未解禁であるジャニーズ事務所所属歌手作品においては、デジタル(特にサブスク等に基づくストリーミング指標)が加算されないためにロングヒットや、中長期をスパンとするチャートで上位進出が難しい事態が続いています。その中でKing & Prince以降のデビュー組が動画再生指標に強くなっていることは特筆すべき状況であり、ここでは以前から紹介してきました。

 

ゆえに2007年デビューのHey! Say! JUMPが、最新曲「DEAR MY LOVER」において動画再生指標で強さを発揮し続けている状況は注目に値します。それでもフィジカルセールス指標加算2週目における4→55位の急落は、ロングヒット曲の最大のポイント獲得源となるストリーミング指標の不在が大きいと言えます。

この曲については以前も採り上げた通り、リリース環境(メンバー出演ドラマの主題歌であること、ドラマ放送局や放送枠等)は、Kis-My-Ft2Luv Bias」(2021)を想起させます。

「DEAR MY LOVER」が主題歌となったドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS)は本日最終回。ドラマの評判は、オリコンによるドラマ満足度調査で上位に進出しており(最新分は下記リンク先参照)、最終回の評判にも注目が集まります。

その中で、Kis-My-Ft2Luv Bias」はドラマ『オー!マイ・ボス! 恋は別冊で』(TBS)の最終回放送日に、主題歌を一部デジタルプラットフォーム限定ながらダウンロードを解禁しています(レコチョクこちら)。これが1→13→31→13位という再浮上の軌道をもたらしたのは間違いありません。

 

デジタル未解禁を続けるジャニーズ事務所所属歌手の作品は、しかしダウンロードにおいてレコチョクで一部フルバージョンにて解禁されていました(一方iTunes Storeでは未解禁がほとんどの模様)。しかしレコチョクジャニーズ事務所所属歌手特集サイトはいつからか更新が止まっています。Travis Japan等デジタル解禁歌手が増えながら、この未更新という事態は非常に勿体ないと考えます。

そして、Kis-My-Ft2Luv Bias」とほぼ似た環境にあるHey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」が「Luv Bias」と異なり、ダウンロードにおいてドラマ最終回の放送日に解禁しなかったこともまた大きいと考えます。仮に本日ダウンロードを解禁すれば6月28日公開分(奇しくも「Luv Bias」がダウンロード指標初加算となったフィジカルセールス指標加算4週目)にて再浮上を遂げることが容易に予想できたはずです。

 

 

「DEAR MY LOVER」が動画再生指標で好調を続けていることから、サブスクやダウンロードを解禁すれば今年度のジャニーズ関連曲で大ヒットの部類に入れた可能性も考えられます。尤もほとんどの歌手がデジタルに明るくないため、どんなに強力なタイアップを得てもコアファンやタイアップ作品のファンを超え広くライト層に届きにくい事態を勿体なく感じます。習慣を離れ、デジタルの大海に飛び出すことを願うばかりです。