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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Mrs.GREEN APPLEの新旧作品がヒットしながら首位に至れなかったトップアーティストチャート、その傾向を分析する

このブログではアルバム『ANTENNA』のリリースを踏まえ、Mrs.GREEN APPLEのチャートアクションに強く注目しています。リード曲のみならず新曲様々な作品がヒットしていることで、ビルボードジャパンのトップアーティストチャート(Artist 100)を初めて制するのではと考えたのがその理由です。

今回はまず、7月19日公開分のビルボードジャパン各種チャートにおけるMrs.GREEN APPLEの動向をチェックします。

 

最新7月19日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは100位までのうち10曲、すなわち10分の1をMrs.GREEN APPLEが占めている状況です。ポイントは週間50位までが可視化されていますが、前週および最新週と続けてトップ50入りを果たしている彼らの曲のほぼ全てで、ポイントは前週を上回っています。

最上位の「Magic」(5→6位)こそポイント前週比93.1%とダウンしていますが、「ケセラセラ」(11→8位)は同112.5%、「青と夏」(14→11位)は同121.2%、「ダンスホール」(16→16位)は同111.5%、「Soranji」(31→21位)は同115.4%、「点描の唄 (feat. 井上苑子)」(45→42位)は105.3%を記録しています。これは今回の集計期間中に様々なテレビ番組や特番に登場したことも大きく影響しているといえるでしょう。

メンバーの大森元貴さんが単独にて『音楽の日』(TBS)のディズニーソング企画に登場したことで、ボーカリストという別の側面からMrs.GREEN APPLEの魅力を知らせることができたといえるかもしれません。また『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)で企画された”ミセスフェス”の反応の大きさについては、下記ツイートから想起することが可能です。

 

最新のアルバムチャートでは『ANTENNA』が総合3位に入り、ダウンロード指標では2連覇を達成しています。となると気になるのは前週のアルバム初登場時に果たせなかったトップアーティストチャートを制したかについてですが、このチャートでは4週連続、通算5度目の2位となっています。

このトップアーティストチャートを制したのは、『POPMALL』をアルバムチャート首位に送り込んだなにわ男子でした。

(上記CHART insightにて、グラフにおいては総合順位は黒で表示。ソングチャートはフィジカルセールス(黄色)、ダウンロード(紫)、ストリーミング(青)、ラジオ(黄緑)、動画再生(赤)およびカラオケ(緑)で、アルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードで構成。また2022年度まではルックアップ(オレンジ)がふたつのチャート、Twitter(水色)がソングチャートに加算されていました。)

トップアーティストチャートはソングチャートおよびアルバムチャートから成り、6指標で構成。Mrs.GREEN APPLEは5指標でなにわ男子に勝っていますが、アルバムのフィジカルセールスにおいては『ANTENNA』が14,505枚に対し『POPMALL』が435,621枚となり、この差がなにわ男子の逆転の要因となりました。前週のTOMORROW X TOGETHER同様のこの現象(逆転の要因)については、前週解説しています。

ソングチャートにおいては一定枚数(5万枚と推測)を超える売上に対し係数処理が施される一方、アルバムチャートにはその適用がありません。アルバムチャートは米ビルボードのように接触指標を含まず、またルックアップ指標の廃止も相まって2023年度以降は所有指標のみで構成されています。これらが、アルバムチャート(特にフィジカルセールス)に強い歌手のトップアーティストチャート最上位進出につながったと言えます。

前週アルバム『Sweet』が39万枚近いフィジカルセールスにてアルバムチャートを制したTOMORROW X TOGETHERは、トップアーティストチャートも制した翌週に23位へ後退しています。フィジカルセールスに強い歌手はそのフィジカルセールスをなぞる形で総合順位が推移しやすく、一方でデジタル指標群が強くなければ急落するという傾向にあるということです。

今回、2023年度におけるトップアーティストチャートの週間1~3位について定点観測した表を作成しました。Official髭男dism「Subtitle」やYOASOBI「アイドル」のようにソングチャートでの勢いがトップアーティストチャートにも反映され、それら歌手の順位の変動については小さい一方、フィジカルセールスの強さでアルバムチャートを制した歌手も上位に登場します。ただ後者の勢いはその多くが一時的であることが解ります。

Mrs.GREEN APPLEはアルバム『ANTENNA』の初加算以降、トップアーティストチャートでは首位に立ててはいません。一方このチャートにて今年度連続で3位以内に入り、且つ構成6指標すべてが10位以内に入った歌手はback numberに次いで2組目となります(back numberは1月25日付以降3週連続でトップアーティストチャート2位以内、且つ6指標すべて10位以内を記録)。この点は高く評価すべき内容と考えます。

 

 

仮にビルボードジャパンが、アルバムチャートにおいて米ビルボードのようなストリーミング指標(米の場合は動画再生も含まれます)を導入するならば、アルバムチャートではロングヒットする作品がより上位に進出且つ安定し、トップアーティストチャートにおいてもロングヒット作品を輩出する歌手が最上位に就きやすくなるかもしれません。

アルバムチャートにて接触指標的なルックアップが廃止された2023年度以降はヒットが短期化したと考えることもあり、ビルボードジャパンに対し接触指標の導入を提案しています(上記エントリー等参照)。この提案が叶えば接触指標群で支持を集める歌手のヒットのさらなる可視化につながることでしょう。

仮にこのチャートポリシー(集計方法)変更提案が叶わないとしても、ビルボードジャパンのトップアーティストチャートやソングチャート、そしてビルボードジャパン自体の名が世間に認知され浸透することにより、フィジカルの販売にこだわる歌手や芸能事務所側の意識を変えることができるかもしれません。下記エントリーを記して間もないゆえ、尚の事希望しています。