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【ビルボードジャパン最新動向】YOASOBI「アイドル」”異次元”ヒットの理由、そしてライバルに必要なものとは

4月17~23日を集計期間とする最新4月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートは、YOASOBI「アイドル」が2連覇を達成しました。

 

YOASOBI側は今回の結果に対してもきちんと反応。その際、ビルボードジャパンが用いた表現を強調しています。

では、その”異次元の加点”の詳細をみていきます。

 

 

4月12日水曜にリリースされたYOASOBI「アイドル」は今回初の1週間フル加算となり、各指標で大きく数値を伸ばしています。

TVアニメ『【推しの子】』(TOKYO MXほか)のオープニング主題歌である「アイドル」は、アニメの好調も追い風となり、対前週約130%増の20,366,113再生でストリーミング1位、94%増の8,388,791再生で動画1位、4%増の30,505DLでダウンロード1位と3冠を獲得した。他指標でもラジオ4位、カラオケ52位と高得点をマーク。総合2位に2倍以上の大差をつけて総合首位を獲得した。

特に接触指標群の伸びが凄まじく、ストリーミング再生回数は8,868,810→20,366,113回と2倍以上、動画再生も4,334,923→8,388,791回と2倍近くに伸ばしています。また所有指標であるダウンロードは登場2週目以降にダウンする性質を持っているものの、「アイドル」では29,327→30,505DLと増加。YOASOBI「アイドル」はこれら3指標で首位となり、評判が評判を呼んでいることを各指標の数字が証明しています。

ストリーミング指標の基となるストリーミング再生回数についてのグラフを上記に。ここからもYOASOBI「アイドル」の急伸がよく解ります。今回の「アイドル」の再生回数を直近で上回ったのはOfficial髭男dism「Subtitle」の2022年11月2日公開分以降4週であり、同曲は昨年11月23日公開分で最多となる21,708,199回を記録していますが、「アイドル」はともすればこの記録も上回るかもしれません。

2位にはYOASOBI「アイドル」が初登場した。(中略) TikTok上では、推しのアイドルの切り抜き動画のBGMやダンス動画、歌ってみたなど、歌詞やアニメのストーリーに合わせた様々な動画に使用されており、楽曲自体の注目度が伺える。また、YOASOBIのオフィシャル・アカウントに投稿された動画は、現時点で500万回以上視聴されている。

ビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20ではYOASOBI「アイドル」が2位に。また歌ってみた等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の人気を可視化したTop User Generated Songsチャートでも「アイドル」は3→2位に上昇。TikTokUGCは総合ソングチャートの加算対象外ですが動画やサブスクの再生の流れを作る機能も果たしており、これらの好成績も接触指標群の上昇に大きく寄与したと考えます。

(なお、ビルボードジャパンによる最新のポッドキャストではUGCの再生回数が1,400,910回であることが紹介され、また動画再生回数の800万回超えが久しぶりであることも述べられています。)

 

YOASOBI「アイドル」の獲得ポイントは前週比183.7%(83.7%増加)となる10,774→19,790となり、2023年度ビルボードジャパンソングチャートにおいて週間最高ポイントを獲得しています(上記表参照)。これまでは2022年12月28日公開分におけるOfficial髭男dism「Subtitle」の14,856ポイントが最高であり、およそ5千ポイント近く上回った形です。

2022年度以降に範囲を拡大すると、YOASOBI「アイドル」は米津玄師「M八七」(2022年5月25日公開分 20,881ポイント)および「KICK BACK」(同年11月30日公開分 20,783ポイント)に続く3位の週間ポイントとなりますが、2曲ともフィジカルセールス初加算週であり且つ昨年度までは2指標が多く存在したことを踏まえれば、「アイドル」の凄さがよく解るでしょう。



今後は、YOASOBI「アイドル」がどこまで勢いを保つか、そして気が早いかもしれませんが年間チャートでどこまで上位に到達できるかが注目ポイントです。

(動画再生回数については、今後記事での記載がなくなることも考えられ、その際は上記表から割愛する予定です。ただしブログで以前記したように、ビルボードジャパンには動画再生指標の記事の用意およびトップ10の再生回数発表を提案しています。)

YOASOBI「アイドル」の動向は、先述したOfficial髭男dism「Subtitle」および米津玄師「KICK BACK」を彷彿とさせます。2曲とも2022年度のリリースであり、前年度まではルックアップおよびTwitter指標が加点されていたため単純比較は難しいものの、しかし「アイドル」が”異次元(の加点)”であることはこの2曲と肩を並べ、そして超えている点からもみえてくるのではないでしょうか。

 

 

平日に祝日があるか等もポイントの増減に影響するものの、デジタルが強い曲は(フィジカルをリリースしていないならば尚の事ですが)ポイントが大きくは落ち込まない傾向があります。YOASOBI「アイドル」は今後しばらく1万5千ポイントを超える可能性が高いのみならず、フィジカル未リリース曲での2万ポイント突破もあり得るかもしれません。

 

今後はこの「アイドル」を、仮に1週のみだとしても上回る曲が出てくるかが焦点といえます。日本においてはフィジカルで10万枚以上売り上げながらデジタルも強い曲が非常に少なく、たとえば当週においてフィジカルセールス538,086枚を記録し同指標を制した日向坂46「One choice」も、他指標が振るわず総合2位に。ポイント全体のおよそ8割をフィジカルセールスに頼っており、次週の急落も十分考えられます。

フィジカルセールス指標についてはソングチャート、アルバムチャート双方でウエイトを下げる必要があると考えています(この点は以前も記しましたが、最新チャートを踏まえ再度提案する予定です)。ただ仮にウエイトが下がったとしても、フィジカルセールス指標は加点の大きな武器となります。YOASOBI「アイドル」に近づくにはデジタルでの大ヒット曲の登場、もしくはフィジカル+デジタル双方でのヒットが必要です。