イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「Vivid」でフィジカルデビューしたMAZZEL、BE:FIRST「Gifted.」との施策の違いから考えること

次回5月24日公開分(集計期間:5月15~21日)のビルボードジャパンソングチャートで上昇が見込まれる曲のひとつがMAZZELのデビューシングル「Vivid」。集計期間初日にデジタルを解禁したTravis Japan「Moving Pieces」共々、男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)がチャートでどの位置に到達するかに注目です。

その「Vivid」は既に最新チャートにて22位に初登場を果たしていますが、MAZZELのデビューシングルにおけるスケジュール戦略が興味深く、今回取り上げます。

 

MAZZELはオーディションから輩出された8人組で、SKY-HIさんが見出したという点においてはBE:FIRSTと共通します。BE:FIRSTを生んだオーディション"THE FIRST"が地上波テレビ局でも放送されたのに対し、今回のオーディション"MISSIONx2"がYouTubeで放送されたという点が大きな違いと言えるでしょう。

BE:FIRSTは「Shining One」で2021年8月にプレデビューを果たし、同年11月に初のフィジカルシングル「Gifted.」をリリース。「Gifted.」は同じくオーディション番組出身の男性ダンスボーカルグループ、INI「Rocketeer」(フィジカルシングル全体のタイトルは『A』)と同日リリースとなり、フィジカルセールスではINIに及ばなかったものの複合指標から成るビルボードジャパンソングチャートでは首位に立っています。

これは「Gifted.」が集計期間初日である11月1日に(フィジカルリリースに先立って)デジタル解禁したことでデジタルが初週1週間フル加算できたこと、またLINE MUSIC再生回数キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)を実施したことが功を奏しています。

(上記CHART insightはBE:FIRST「Gifted.」フィジカルセールス(黄色で表示)初加算から11週分を示しています。)

 

ゆえに、BMSGから新たにデビューしたMAZZELにおいても、フィジカルリリース週にデジタル解禁、およびLINE MUSIC再生キャンペーンを実施するのではと捉えていたのですが、「Vivid」ではそのアプローチが踏襲されていません。

<MAZZEL「Vivid」リリーススケジュール>

5月1日月曜 ラジオOA解禁、TikTok先行配信

5月8日月曜 デジタル(ダウンロードおよびサブスク)先行配信

5月11日木曜 ミュージックビデオ公開

5月15日月曜 フィジカルシングルのカップリング曲、デジタル先行配信

5月17日水曜 フィジカルシングル発売

フィジカルリリースまで3週連続で解禁スケジュールが用意されたMAZZEL「Vivid」。最新ビルボードジャパンソングチャートにおける22位初登場は集計期間初日のデジタル解禁効果が大きく、また前週初加算されたラジオ指標は4ランクアップし3位に到達しています。

「Vivid」の施策についてはNEWS - MAZZEL - UNIVERSAL MUSIC JAPANで確認できますが、LINE MUSIC再生キャンペーンは採用されていません。BE:FIRSTが最新シングル「Smile Again」でもキャンペーンを実施していたのとは大きな差と言えます。

(なお、LINE MUSIC再生キャンペーンについては、ビルボードジャパンとオリコンの複合指標チャートの差、そして"数(を積むこと)の論理"の問題を考える(5月13日付)にて私見を記しています。)

 

 

ビルボードジャパンの速報記事(先ヨミ)を踏まえれば、MAZZEL「Vivid」がYOASOBI「アイドル」に勝り最上位に進出することは厳しいでしょう。「アイドル」はBE:FIRST「Smile Again」でも覆すことができませんでした。

「アイドル」がここまで強いことは予想外だったかもしれませんが、MAZZEL「Vivid」についてはBE:FIRST「Gifted.」や最新シングル「Smile Again」のフィジカルセールス初加算週ともポイント差が生じるかもしれません。しかしそれは承知の上でBMSGそしてSKY-HIさん側はスケジュールや施策を策定したのではと捉えています。解禁を複数週にまたぐこと、再生キャンペーンを実施しないことは大きな経験となったはずです。

(YouTubeでの各種動画の公開等MAZZEL側の様々な施策については彼らの公式Twitterアカウント(MAZZEL (@mazzel_official) / Twitter)で確認可能。フィジカルリリースまでのスケジュールは長めに用意し、その前後に施策を徹底している姿勢が見て取れます。)

 

 

MAZZEL「Vivid」の次週のチャート結果次第では、BE:FIRSTと比較された上でネガティブな見方をする方がいらっしゃるかもしれませんが、そもそもスケジュール施策が大きく異なることは考慮する必要があります。

また、男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)におけるチャートヒットが2022年以降のデビュー組では減っている印象があります。同年以降のオーディション番組発グループが(オーディションの増加により視聴者のパイを奪い合うこと等も相まって)全体的に上位進出できていないと言えるゆえ、MAZZELが一歩先を行っていると捉えていいのではというのが私見です。

最新5月17日付ビルボードジャパンソングチャート、ストリーミング指標の基となるStreaming Songチャートでは10曲が100位以内に初登場を果たしていますが、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用しなかったのはヨルシカ「斜陽」(70位)、aespa「Spicy」(82位)、milet × MAN WITH A MISSION「コイコガレ」(98位)そしてMAZZEL「Vivid」(89位)の4曲のみ。日本はデジタル解禁日に新曲を聴くという習慣が他の国や地域より少ないゆえ、キャンペーン不採用曲の初週でのランクインは立派と言えます。

 

一方で、「Vivid」においてはMAZZELやBMSGファンとライト層の聴取差が目立つのではということを、LINE MUSICと他のサブスクサービスにおけるデイリーチャートの差から感じています(Spotifyでは一昨日付で初めて200位以内に登場)。ゆえに「Vivid」リリース後、フィジカルリリース週以降も中期的なスパンでキャンペーン等を徹底し、ライト層への認知度を高めることが重要と考えます。

そして、チャート結果が良好ならばそれを武器に、地上波テレビ番組での出演機会を得るべく動くことも重要です。『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)や『ミュージックステーション』(テレビ朝日)の出演は知名度等の大きな上昇に寄与することでしょう。特に前者においては出演の可能性が高いと考えますが、BMSGならびにSKY-HIさんにはプラスαの提案を記し、今回のエントリーを締めたいと思います。

(上記ツイートは、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんによる生配信"ミライカフェ"聴取中に記したものです。番組パフォーマンスのYouTube発信については、ジャニーズ事務所側の動画に対する姿勢が変化、そしてさらなる展開へ…今一度デジタルに関する希望を記す(4月28日付)等をご参照ください。)