イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

スプリットシングルや映像盤への同梱等における、BMSGのフィジカル(CD)に対する考え方を想起する

シングルには8月24日にNetflixで配信されるアニメ「範馬刃牙」第2期「地上最強の親子喧嘩編」のオープニングテーマであるSKY-HIの楽曲「Sarracenia」と、エンディングテーマであるBE:FIRSTの楽曲「Salvia」を収録。

最新9月6日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、このスプリットシングルに収録された2曲が共に100位以内にエントリーしています。なお”スプリットシングル”とは複数の歌手による別々の音源をコンパイルしたフィジカルを、フィジカルはCDやレコード、カセットテープ等を指します。

最新ソングチャートにおいて、フィジカルセールス指標(上記CHART insightでは黄色で表示)はSKY-HI「Sarracenia」に加算されていますが、これはフィジカルの1曲目に収録されたのがこちらであるため。たとえばダブルAサイドシングルにおいても、この指標が加点対象となるのは1曲に限られます。

(なお現段階でミュージックビデオが制作されているのはSKY-HI「Sarracenia」のみとなります。)

それでも順位の面ではSKY-HI「Sarracenia」が62位に対し、BE:FIRST「Salvia」が41位となり後者が上位に。「Salvia」ではストリーミング(CHART insightでは青で表示)および動画再生(赤)といった接触指標群が300位以内にランクインし加点対象となっています。また「Salvia」は先行リリースされたアニメ用の短尺版(Anime Size)リリース時においても100位以内にエントリーを果たしていました。

 

当週のフィジカルセールスは12,828枚。BE:FIRST単独によるこれまでのシングルの中では唯一10万枚を下回っており、ともすれば「Salvia」を1曲目に配したほうがセールスが伸びたかもしれません。とはいえ今回はオープニングテーマが「Sarracenia」であること、そしてBMSG全体で『「範馬刃牙」第2期「地上最強の親子喧嘩編」』を盛り上げんとする姿勢が、SKY-HIさんを1曲目に、BE:FIRSTを2曲目に据えた理由と考えます。

加えてこの曲順により、SKY-HIさんの作品がソングチャートに載りました。ビルボードジャパンではソングチャートで100位以内に入ること自体が難しく、チャートディレクターの礒崎誠二さんはその100位までをチェックすることの重要性を以前より唱えています。大事なのは今後ロングヒットに至るかどうかですが、まずは100位以内に入ったこと自体注目すべきことといえるでしょう。

 

 

SKY-HIさんが設立したBMSGでは、トレーニーと呼ばれる育成生のパフォーマンスを収めたライブ映像盤が来月リリース。そこに、トレーニー4名それぞれの音源を収録したCDが同梱されます。

映像盤にCDが付属される場合、先述したSKY-HI「Sarracenia」のようなフィジカルセールス指標の加点はなく、またこの場合はトレーニーがCDデビューを果たしたという位置付けにはならないと思われますが、音源のフィジカル化はBMSG自体のコアファンの購入につなげることができます(受注販売ならばその心理がより高まるはずです)。そして各トレーニーのファンが、他のトレーニーに興味を抱くことにもつながるでしょう。

 

このコンパイルから思い出したのがサウンドトラック。たとえば今年大ヒットした映画『バービー』のトラックリストは下記で確認できます。

サウンドトラックはリリース元となるレコード会社のショーケース的な意味合いを帯びることがあります。『バービー』はワーナー系列からのリリースであり、同グループ所属の歌手の作品が多く収められています。

「Cupid」が米でもヒット中のK-POP女性ダンスボーカルグループ、FIFTY FIFTYもサウンドトラックに参加。今後このグループがどうなるかは不明という状況ではありますが(FIFTY FIFTYの専属契約停止巡る仮処分申請 韓国地裁が棄却(8月29日) | 聯合ニュース参照)、「Cupid」でブレイクしたグループがワーナーに所属したことを示す、その名刺代わりの作品がサントラ収録の「Barbie Dreams」といえるでしょう。

 

 

スプリットシングルそして映像盤に同梱されたCDから、BMSGが所属歌手を総じて推していくという姿勢が感じられます。これは東京および大阪で今月から来月にかけて開催されるBMSG FES'23(→こちら)というイベントからも想起可能であり、ブランド力の増強につながるものと思われます。また下記のラジオ企画も、”マイクリレー”と称する点も含めて興味深く感じています。

 

 

ちなみにBMSGからは今週、BE:FIRSTが4枚目のフィジカルシングルとなる「Mainstream」をリリースします。

フィジカルの購入は早くて火曜となりますが、デジタルがいち早く月曜にリリースされることがアナウンスされています。これはビルボードジャパンソングチャートにおいてフィジカルリリース週にポイントを最大化させることにつながり、この点からもBE:FIRSTそしてBMSGにおけるフィジカルの位置付けが見て取れるのではないでしょうか。