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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

トップアーティストチャートにおけるジャニーズ事務所所属歌手の動向を比較、その特徴およびKing & Princeの強さについて

昨日のブログエントリーでは、ビルボードジャパンのトップアーティストチャート(Artist 100)を用いてジャニーズ事務所所属4組の動向を紹介しました。

King & Prince以降のデビュー組は動画再生指標が強く、YouTubeの活用に長けているイメージがあります。たとえばTravis Japanは今週月曜リリースのデジタルシングル「Moving Pieces」において、ミュージックビデオのみならずビハインド・ザ・シーン(YouTubeこちら)やダンスバージョン(→こちら)を立て続けに公開。またリリース前にも複数のティザー(ティーザー)動画を用意しています。

 

では、2010年代前半以前のリリース組はどうでしょうか。

今回のエントリーを記すきっかけのひとつとなったのが関ジャニ∞「未完成」。同曲は最新5月17日公開分のビルボードジャパンソングチャートで3位に初登場していますが、300位以内に入り加点対象となった指標はフィジカルセールスのみとなっています。

関ジャニ∞はデジタル未解禁ゆえダウンロード(CHART insightでは紫で表示)やストリーミング指標(青)が加算されないのは想像の範囲内でしたが、男性ダンスボーカルグループやアイドルが存在感を示すラジオ指標(黄緑)でも300位圏外となったのは意外かもしれません(ラジオ指標についてはビルボードジャパンのラジオ指標における、男性ダンスボーカルグループの存在感の高まりを検証する(5月12日付)にて取り上げたばかりです)。

 

では、トップアーティストチャートが2021年度に開始して以降のジャニーズ事務所所属歌手におけるCHART insightを以下に掲載します。

 

 

ビルボードジャパン トップアーティストチャート(Artist 100)におけるジャニーズ事務所所属歌手の動向>

※ トップアーティストチャートが開始された2021年度以降に週間フィジカルセールス10万枚を突破したことのある歌手を、デビュー順に掲載。

※ 最新5月17日公開分までの60週分を掲載。ただし一部歌手は5月17日公開分において総合300位以内に入っていないため、期間については別途記載。

※ CHART insightにおける順位は最新週もしくは300位以内に入っていた最終ランクイン週におけるもの。チャートイン回数は最新週もしくは最終ランクイン週に100位以内だった場合、100位以内の回数が表示。

※ CHART insightにおけるチャート構成比は最新週もしくは300位以内に入っていた最終ランクイン週における6指標(2022年度までは8指標)のポイント構成比率。

※ 各指標の表示色はフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青、ラジオが緑、動画再生が赤、カラオケが緑で表示。2022年度までの指標はルックアップがオレンジ、Twitterが水色で表示。

 

・V6 (2022年12月7日公開分まで)

KinKi Kids

・NEWS

関ジャニ∞

KAT-TUN

Hey! Say! JUMP

Kis-My-Ft2 (2023年5月10日公開分まで)

Sexy Zone

ジャニーズWEST

・King & Prince

SixTONES

Snow Man

・なにわ男子

昨日付ブログエントリーでも述べましたが、ジャニーズ事務所所属歌手の作品はほとんどがデジタル未解禁につきダウンロードやストリーミングで加点されることはほぼありません。加えて2022年度でルックアップおよびTwitterが廃止され、特にジャニーズ事務所所属歌手が強い前者の廃止は週間チャートの順位にも大きな影響を及ぼしています。

 

その中で、いくつかの特徴が見えてきます。まずは動画再生指標に強い2010年代前半以前デビュー組の存在。Hey! Say! JUMPは昨年7月24日日曜に歌手としての公式YouTubeチャンネル(→こちら)を立ち上げて以降、同年8月3日公開分(集計期間:2022年7月25~31日)以降は動画再生指標が一度として300位を下回ることなく加点され続けています。

新曲「DEAR MY LOVER」は5月10日にミュージックビデオが公開され、最新5月17日公開分ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標で7位に初登場。ドラマ主題歌効果も相まって、公開からおよそ1週間で300万回再生を突破しています。

歌手としての公式YouTubeチャンネルを用意すること、そしてSNSでの感謝コメントの発信もコアファンとのエンゲージメントの確率やライト層への浸透につながります。歌手によってこの取組に差があるならば、行わない手はないのではと考えます。

 

続いてKAT-TUN。最新5月17日公開分トップアーティストチャートにおいてダウンロード指標が加算されていますが、これは一昨年のシングル「Roar」以降デジタルを解禁したことの効果と言えます。

直近3ヶ月においては最新アルバム『Fantasia』のチャートアクションが反映された形です。そしてデジタルを解禁するならば解禁先を限定しないほうがいいということは、iTunes Storeで未リリースを続けるKis-My-Ft2とで対象的な動きをなぞっていることからも明らかと言えそうです。

 

そして昨日付ブログエントリーにてKing & Princeの特徴として取り上げたカラオケ指標については、KinKi Kidsにおいても強い状況です。King & Prince「シンデレラガール」やなにわ男子「初心LOVE」、そしてKinKi Kids「硝子の少年」といった、広く社会に浸透を果たしたと思しき曲の存在が、カラオケ指標の好位置安定に大きく貢献したものと考えます。

そしてカラオケ指標の安定は、2021年度以降フィジカルシングルをリリースしていない嵐においても共通しています。

嵐は活動休止前から、デジタルでの所有ならびに接触可能な環境を充実させています。最近ではストリーミングが300位前後を行き来し、動画再生は直近5月17日公開分にて300位を割り込みましたが、ダウンロードは現在も300位以内をキープ。そしてカラオケ指標は安定しています。この結果、トップアーティストチャートにおいて2021年度(そして活動を休止した2022年元日)以降、常時300位以内に登場しています。

上記は嵐のトップアーティストチャートにおけるCHART insightのうち、2021年度(2020年12月2日公開分以降)の総合順位および一部指標(フィジカルセールス、ダウンロード、ストリーミング、動画再生およびカラオケ)を抜粋したもの。ピークは活動休止前後のみならず2021年夏にも発生していますが、これは延期された東京オリンピックの開催に伴うもの。開催期間はフィジカル以上にデジタルの所有動向が大きいことが解ります。

オリンピックの開催直後こそカラオケ指標は一時的に100位未満となるものの加点され続け、後に100位圏内へ復帰すると現在まで勢いをキープしています。上記ブログエントリーでも述べたようにデジタルの解禁はいつ何時でもフックアップされること、そして他指標にも波及することが証明されたと言えるでしょう。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手のCHART insightを比較すると、King & Princeの強さが際立っていることが感じられます。脱退発表後のフィジカルセールスの強さもさることながら、そのアナウンス以前から動画再生指標が強く、またカラオケ指標も安定していました。

この勢いが今後も続くためには、コンテンツの拡充が欠かせないでしょう。特に脱退日までの音楽番組で「シンデレラガール」を披露する傾向が高いならば尚の事、同曲を含むデジタルの充実は行うに越したことはないと考えます(その際は解禁先を限定しないこともまた重要です)。仮に現状のデジタルコンテンツを削除することがあれば、チャートアクション面においてもブレーキになりかねないものと考えます。

 

 

他にもトップアーティストチャートにおけるCHART insightから見えてくるものがあるはずです。興味を持った方は是非、ビルボードジャパンのCHART insightをチェックしてみてください。