イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

YOASOBI「アイドル」がGlobal 200で14位、Global Excl. U.S.で5位に到達…ロングヒットに必要なことを考える

昨日のエントリーでもお伝えしたように、米ビルボードによる最新4月29日付グローバルチャートのうちGlobal Excl. U.S.においてYOASOBI「アイドル」が5位に登場しています。また日本時間の昨夜には同曲が、Global Excl. U.S.から米の分を加えたGlobal 200において14位に初登場を果たしたことも判明しました。

YOASOBIはその判明から数時間以内に双方のチャートで好位置に登場したことをきちんとアナウンスし、お礼を述べています。また”地球ランキング”という表現は巧いとも感じています。コアファンとの連帯を高めライト層も巻き込むというエンゲージメントの確立に長けていることを、今回も感じずにはいられません。

 

今回は今一度グローバルチャートについて紹介し、「アイドル」のロングヒットに必要なことを考えます。

 

 

ビルボードが2020年に新設したグローバルチャートは、世界200以上の国や地域による主要デジタルプラットフォームのダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)から構成される、複合指標から世界的ヒット曲を算出するチャートとなります。内容については下記エントリーにて紹介しています。

そしてこのグローバルチャートではYOASOBI「アイドル」が上位に進出する可能性が高いと捉え、一昨日のエントリーにて動向を紹介しました。

 

ビルボードの各種チャートは金曜が起点となるため、4月12日水曜にリリースされたYOASOBI「アイドル」は今回が1週間初のフル加算となり大幅に上昇。前週4月22日付のGlobal Excl. U.S.では135位に初登場していたことも、今回の速報記事から判明しています。

 

 

注目は次週以降の動向です。次週5月6日付の集計期間は4月21日以降となりますが、YOASOBI「アイドル」は4月23日日曜に日本のSpotifyにおいてデイリー再生回数の新記録を樹立、翌日はダウンするものの平日で初の60万回超えを達成しています。次週はグローバルにおいて強力な初登場曲が少ないと考えられ、LiSA「炎」(2020年10月31日付 8位)以来J-POPで2曲目となるGlobal 200でのトップ10入りもあり得るかもしれません。

 

ではGlobal 200でのトップ10ヒットのために必要なものは何かを考えるべく、以下の表を作成しました。この表は2023年度のGlobal 200にてトップ10入りした曲のうち、米ビルボードがストリーミング再生回数を明らかにしている曲を抽出したものとなります。そして同一期間におけるSpotifyのグローバル再生回数を併記し、Spotifyの割合も算出。この割合において60%以上は赤、40%未満は青で表示しています。

ビルボードのグローバルチャートでは加算対象のデジタルプラットフォームを明かしていませんが、複数の国や地域で展開するサービスが対象となると捉えており、Spotifyは含まれるものと考えます。上記表をみると、一部極端にSpotify比率が低い曲もありますが、多くは5割前後だと判ります。なおSpotify比率はK-POPの一部作品が低い状況ですが、韓国ではSpotifyが後発サービスゆえこの状況は自然だと捉えています。

一方でJ-POPはどうでしょう。先述した通りGlobal 200でのトップ10入りはLiSA「炎」の1週のみであり、またストリーミング再生回数は世界的に上昇を続けるゆえチャートの新設当時と今とではヒットの規模も異なるでしょう。しかし注目は、Global Excl. U.S.でトップ10入りした7曲のうちSpotifyグローバルチャートでも200位以内に入ったのは2曲のみであり、うちひとつがYOASOBI「アイドル」ということです。

YOASOBI「アイドル」は4月22日付Global Excl. U.S.においてストリーミング3,620万、ダウンロード26,000を記録。Global 200はこれに米の分を加えたものであり、2指標とも純増します。その前提で2023年度のGlobal 200にてトップ10入りした曲の動向と比べるとダウンロードの規模が高いことが判りますが、所有指標であるダウンロードは減少幅が小さくなく、その角度を如何に緩やかにするかがひとつの課題と言えそうです。

また「アイドル」におけるストリーミング指標のうちSpotifyの割合は、仮に米でのSpotify再生回数がゼロと仮定した場合22.9%となり、実際はそれ以下だと判ります。ビルボードジャパンのストリーミング指標ではSpotifyの割合が全体のおよそ2割ゆえこの割合にある程度は納得できるかもしれませんが、やはり世界規模でみると弱い気もします。YOASOBIの運営側が海外に向けてどう訴求していくか、問われていきそうです。

(なおこの訴求については、「アイドル」がオープニングテーマを務める『【推しの子】』側の海外展開とも上手く絡めていくことが必要になると考えます。)

 

そして、日本でのグローバルチャートの認知拡大もまた必要でしょう。YOASOBI側のSNSでのリアクションはライト層にも届くものの、SNSでYOASOBIのアカウントに触れない方もいらっしゃることでしょう。そこでこの結果がメディアを介して紹介されることで、広く世間に認知させることも重要です。

このブログでは上記エントリーにて、歌手側(レコード会社や芸能事務所)のプレスリリースによる発信の重要性を記しました。無論メディアがグローバルチャートへの意識を高めることは必須ですが、このブログエントリーの執筆段階である4月26日7時の時点でYOASOBI「アイドル」のグローバルチャートランクインについての言及記事は見当たりません(Yahoo! JAPANにて”YOASOBI ビルボード”でニュース検索した結果はこちら)。

他方、米ビルボードによる最新4月29日付グローバルチャートでは双方でトップ10入りし、米ビルボードソングチャートでは50位に上昇したFIFTY FIFTY「Cupid」をはじめ、K-POPではグローバルチャート等のランクインが報じられています(Yahoo! JAPANにて”FIFTY FIFTY ビルボード”でニュース検索した結果はこちら、最新チャートの動向は本日までに記事化されるものと思われます)。この姿勢の差は小さくないでしょう。

 

 

デジタル配信は世界デビューとほぼイコールゆえ、J-POPは世界でもヒットする可能性を秘めています。米ビルボードによるグローバルチャートが知られることで、その可能性の確率はわずかだとしても上昇することでしょう。YOASOBI「アイドル」については歌手側のグローバルチャートに対する意識の高さが感じられることから、メディアそして音楽好きの方々にグローバルチャートを認識してもらうことが重要と考えます。