昨日のエントリーでもお伝えしたように、米ビルボードによる最新4月29日付グローバルチャートのうちGlobal Excl. U.S.においてYOASOBI「アイドル」が5位に登場しています。また日本時間の昨夜には同曲が、Global Excl. U.S.から米の分を加えたGlobal 200において14位に初登場を果たしたことも判明しました。
YOASOBIはその判明から数時間以内に双方のチャートで好位置に登場したことをきちんとアナウンスし、お礼を述べています。また”地球ランキング”という表現は巧いとも感じています。コアファンとの連帯を高めライト層も巻き込むというエンゲージメントの確立に長けていることを、今回も感じずにはいられません。
#YOASOBIIdol is #5 on the Billboard Global Excl. U.S.⚡️⚡️⚡️⚡️⚡️
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) 2023年4月24日
ビルボードのグローバルチャート、アメリカを除く全世界合算ランキングで「アイドル」が5位!
昨日のTikTokライブでも、本当にさまざまな国の皆さまに聴いていただけていることを実感しました。改めてありがとうございます! https://t.co/SKDq0vHjmp
#YOASOBIIdol #14 on Billboard Global Chart⚡️
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) 2023年4月25日
Thank you for listening a lot!!
アメリカも含む全世界、つまり地球ランキングで #YOASOBIアイドル 14位🌍
アイの魂を受け継ぐこの曲、目指すは輝く一番星🌟引き続きよろしくお願いします👆https://t.co/kH7kzRKK52#推しの子#OSHINOKO pic.twitter.com/HiYTvEwaul
今回は今一度グローバルチャートについて紹介し、「アイドル」のロングヒットに必要なことを考えます。
米ビルボードが2020年に新設したグローバルチャートは、世界200以上の国や地域による主要デジタルプラットフォームのダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)から構成される、複合指標から世界的ヒット曲を算出するチャートとなります。内容については下記エントリーにて紹介しています。
そしてこのグローバルチャートではYOASOBI「アイドル」が上位に進出する可能性が高いと捉え、一昨日のエントリーにて動向を紹介しました。
米ビルボードの各種チャートは金曜が起点となるため、4月12日水曜にリリースされたYOASOBI「アイドル」は今回が1週間初のフル加算となり大幅に上昇。前週4月22日付のGlobal Excl. U.S.では135位に初登場していたことも、今回の速報記事から判明しています。
注目は次週以降の動向です。次週5月6日付の集計期間は4月21日以降となりますが、YOASOBI「アイドル」は4月23日日曜に日本のSpotifyにおいてデイリー再生回数の新記録を樹立、翌日はダウンするものの平日で初の60万回超えを達成しています。次週はグローバルにおいて強力な初登場曲が少ないと考えられ、LiSA「炎」(2020年10月31日付 8位)以来J-POPで2曲目となるGlobal 200でのトップ10入りもあり得るかもしれません。
ではGlobal 200でのトップ10ヒットのために必要なものは何かを考えるべく、以下の表を作成しました。この表は2023年度のGlobal 200にてトップ10入りした曲のうち、米ビルボードがストリーミング再生回数を明らかにしている曲を抽出したものとなります。そして同一期間におけるSpotifyのグローバル再生回数を併記し、Spotifyの割合も算出。この割合において60%以上は赤、40%未満は青で表示しています。
米ビルボードのグローバルチャートでは加算対象のデジタルプラットフォームを明かしていませんが、複数の国や地域で展開するサービスが対象となると捉えており、Spotifyは含まれるものと考えます。上記表をみると、一部極端にSpotify比率が低い曲もありますが、多くは5割前後だと判ります。なおSpotify比率はK-POPの一部作品が低い状況ですが、韓国ではSpotifyが後発サービスゆえこの状況は自然だと捉えています。
一方でJ-POPはどうでしょう。先述した通りGlobal 200でのトップ10入りはLiSA「炎」の1週のみであり、またストリーミング再生回数は世界的に上昇を続けるゆえチャートの新設当時と今とではヒットの規模も異なるでしょう。しかし注目は、Global Excl. U.S.でトップ10入りした7曲のうちSpotifyグローバルチャートでも200位以内に入ったのは2曲のみであり、うちひとつがYOASOBI「アイドル」ということです。
YOASOBI「アイドル」は4月22日付Global Excl. U.S.においてストリーミング3,620万、ダウンロード26,000を記録。Global 200はこれに米の分を加えたものであり、2指標とも純増します。その前提で2023年度のGlobal 200にてトップ10入りした曲の動向と比べるとダウンロードの規模が高いことが判りますが、所有指標であるダウンロードは減少幅が小さくなく、その角度を如何に緩やかにするかがひとつの課題と言えそうです。
また「アイドル」におけるストリーミング指標のうちSpotifyの割合は、仮に米でのSpotify再生回数がゼロと仮定した場合22.9%となり、実際はそれ以下だと判ります。ビルボードジャパンのストリーミング指標ではSpotifyの割合が全体のおよそ2割ゆえこの割合にある程度は納得できるかもしれませんが、やはり世界規模でみると弱い気もします。YOASOBIの運営側が海外に向けてどう訴求していくか、問われていきそうです。
(なおこの訴求については、「アイドル」がオープニングテーマを務める『【推しの子】』側の海外展開とも上手く絡めていくことが必要になると考えます。)
そして、日本でのグローバルチャートの認知拡大もまた必要でしょう。YOASOBI側のSNSでのリアクションはライト層にも届くものの、SNSでYOASOBIのアカウントに触れない方もいらっしゃることでしょう。そこでこの結果がメディアを介して紹介されることで、広く世間に認知させることも重要です。
このブログでは上記エントリーにて、歌手側(レコード会社や芸能事務所)のプレスリリースによる発信の重要性を記しました。無論メディアがグローバルチャートへの意識を高めることは必須ですが、このブログエントリーの執筆段階である4月26日7時の時点でYOASOBI「アイドル」のグローバルチャートランクインについての言及記事は見当たりません(Yahoo! JAPANにて”YOASOBI ビルボード”でニュース検索した結果はこちら)。
他方、米ビルボードによる最新4月29日付グローバルチャートでは双方でトップ10入りし、米ビルボードソングチャートでは50位に上昇したFIFTY FIFTY「Cupid」をはじめ、K-POPではグローバルチャート等のランクインが報じられています(Yahoo! JAPANにて”FIFTY FIFTY ビルボード”でニュース検索した結果はこちら、最新チャートの動向は本日までに記事化されるものと思われます)。この姿勢の差は小さくないでしょう。
デジタル配信は世界デビューとほぼイコールゆえ、J-POPは世界でもヒットする可能性を秘めています。米ビルボードによるグローバルチャートが知られることで、その可能性の確率はわずかだとしても上昇することでしょう。YOASOBI「アイドル」については歌手側のグローバルチャートに対する意識の高さが感じられることから、メディアそして音楽好きの方々にグローバルチャートを認識してもらうことが重要と考えます。