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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SixTONES「ABARERO」がビルボードジャパンで3位発進…背景を分析しデジタル解禁の必要性を提案する

最新4月19日公開分ビルボードジャパンソングチャートではトップ10のうち6曲が初登場、また1曲が前週から大きく上昇し初のトップ10入りを果たしています。このブログでは先週木曜に首位初登場を果たしたYOASOBI「アイドル」、金曜は同じく2位に初登場したスピッツ「美しい鰭」について紹介しました。

本日は最新チャートで3位に初登場したSixTONES「ABARERO」を取り上げます。

 

 

SixTONES「ABARERO」は、シングル初週売上434,274枚となりシングル1位、ラジオ2位、動画10位で総合3位デビュー。前シングル「Good Luck!」の初週売上は398,252枚で、本作はそれを約3.5万枚上回るセールスとなり、着実に訴求力を高めている。

前作のフィジカルシングル(厳密にはダブルAサイドにつき、フィジカルセールス指標が加算される方の)「Good Luck!」は昨年11月9日公開分で最高3位を記録。当時はOfficial髭男dism「Subtitle」(同日付首位)および米津玄師「KICK BACK」(同2位)が、今回は「アイドル」および「美しい鰭」がSixTONESの作品を上回っています。「美しい鰭」はフィジカルも加算されていますが、いずれもデジタルに強い曲が上位に到達した形です。

「Good Luck!」の昨年11月9日公開分における獲得ポイントは11,805となり今作「ABARERO」を上回っていますが、これは2022年度までルックアップ(上記CHART insightではオレンジで表示)およびTwitter(水色)の2指標が加算対象だったため。男性アイドルやダンスボーカルグループが強い傾向にあった指標群の廃止もチャートアクションに影響しています。

仮に「Good Luck!」のフィジカルセールス指標初加算時からルックアップおよびTwitter指標を除けばポイントは9千を下回る模様です。今作「ABARERO」は9,123ポイントを獲得しており、単純比較は難しいものの前作超えを果たしたと言えるのではないでしょうか。

(なお個人的にはこのチャートポリシー変更を支持しています。またこの廃止の背景については、ビルボードジャパン、新年度からルックアップ・Twitter指標を廃止…チャートポリシー変更への私見と提案を記す(2022年10月28日付)等にて記載しています。)

 

フィジカルセールスの増減についてはリリースの種類や特典による増減が比較的大きく単純比較は難しいものの、「Good Luck!」がダブルAサイドの「ふたり」共々メンバーが主演を務めたドラマの主題歌だったのに対し「ABARERO」は単独Aサイド且つノンタイアップとなっており、その点を踏まえればセールスの上昇は注目すべきと言えるでしょう。そしてそのノンタイアップ曲が業界内でも注目を集めていると言えそうです。

2位はSixTONES「ABARERO」が前週40位から大きく浮上した。2月25日放送の冠番組SixTONESオールナイトニッポンサタデースペシャル」で早くも解禁された同曲。その後、少数のオンエアが見られるもいったん落ち着きつつ、オンエアを伸ばし始めた前週にチャート初登場をしていた。

定期的な帯番組・コーナー等でのオンエアを積み上げての大量オンエアだが、少数ながらJ-WAVEZIP-FM、FM NORTH WAVEといった局でもオンエアを獲得している点は特筆すべきだろう。洋楽志向の本格的なヒップホップチューンとして注目されたことが窺える。また、前週に続いてゲスト/コメント出演が多数確認されており、積極的な露出も奏功しセールス面も前作を上回るなど好調の様子だ。

上記は金曜のエントリーでも紹介した、ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標の基となるプランテックのOAチャートの記事。前作「Good Luck!」はOAチャートを制していますが(SixTONES急伸し1位へ、T・スウィフト注目広げ2位、ヒゲダン再伸で3位、注目のNEXTブレイカー続々【エアモニ】 | Musicman(2022年11月9日付)参照)、注目は今作がJ-WAVE等洋楽OA率の高いラジオ局で流れている点にあります。

上記レビュー等に代表されるように高評価を受けている「ABARERO」は、他にも米ビルボードソングチャートを制したサム・スミス & キム・ペトラス「Unholy」のイントロを彷彿とさせトレンドを押さえている面でも興味深く感じます。ノンタイアップによるフィジカルシングル表題曲はKing Gnu / millennium paradeの常田大希さんが提供した「マスカラ」(2021)以来で、同曲も好事家の注目を集めたことを思い出します。

 

そして「ABARERO」は、複数の公式動画がYouTubeの広告として流れたことも特筆すべき点です。YouTubeでは無料会員の動画視聴中に広告が挿入されますが、そこで「ABARERO」のミュージックビデオや下記ダンスプラクティスも流れていたことを、Twitter等で複数の方が指摘されています。

このような広告展開はビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標では加算対象外となるものの(上記ツイート内リンク先参照)、YouTubeではカウントされます。広告展開はフィジカルリリース週にも行われた模様であり、フィジカルの訴求を目的にしたものと捉えていいでしょう。

 

(なお、広告としての動画展開はジャニーズ事務所所属歌手においては珍しいと言えるかもしれませんが、4月に入りジャニーズ事務所側の動画に関する対応は興味深いものが増えており、いずれ紹介したいと考えています。)

 

 

YouTubeの充実は音楽をYouTubeで聴く方が多いという背景も影響していると考えますが、一方で人気動画はその視聴者がサブスク再生回数やダウンロードにも移行すると考えます。ジャニーズ事務所に所属する歌手の大半がこれらを解禁していないがゆえ、SixTONES「ABARERO」がビルボードジャパンでの総合首位を逃したと捉えていいでしょう。

最新4月19日公開分ビルボードジャパンソングチャートを制したYOASOBI「アイドル」は10,774ポイント、2位のスピッツ「美しい鰭」は9,582ポイントをそれぞれ獲得。CHART insightで紫にて示されるダウンロード指標は前者が29,327DL、後者が23,881DLを記録し(下記ツイート内記事参照)、ポイント全体の3割前後を占めています。

ここから、9,123ポイントを獲得していたSixTONES「ABARERO」がダウンロードやサブスクを解禁していれば、仮にダウンロードのみの解禁としても2万DLを記録したならば週間チャートを制することができたと考えます。またフィジカルセールスが突出して強い曲やデジタル未解禁の作品はフィジカルセールス加算2週目以降の総合チャートで急落する傾向にありますが、デジタル解禁は下落幅を抑える役割も担ったはずです。

 

 

SixTONES側のYouTubeにおける広告展開について、チャートの前例(→こちら)を知りながら実施に踏み切ったならばビルボードジャパンへの意識は高くなかったと捉えていいかもしれません。しかし、動画の充実等にはデジタル未解禁への対策という側面も感じないわけではありません。

SixTONESは「ABARERO」リリース週以降2週続けてドーム公演を開催。リアクションがSNS等で伝われば伝わるほどコアファン以外の音源購入や接触につながったものと考えるに、デジタル未解禁は純粋に勿体ないと感じています。ビルボードジャパンのソングチャートは社会的ヒットの鑑と成ってきていることからSixTONES側がこのチャートを意識し、いずれは慣例を破ってデジタルを充実させることを願うばかりです。