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藤井風参加版、ジェイク「golden hour (Fujii Kaze Remix)」の登場からリミックスの意義を再掲、日本での浸透を願う

藤井風さんが参加したジェイク(JVKE)「golden hour (Fujii Kaze Remix)」が昨日配信リリースされました。

ジェイク「golden hour」については『Ruel(オーストラリア)、Jungle(ロンドン)、Shirley Setia(ニュージーランド/インド)、ILLENIUM & NURKO(アメリカ)などといった世界各国のアーティストとのコラボレーションも実現』とあるように、これまで様々なリミックスが生まれています(『』内は先述したビルボードジャパンの記事より)。ここに新たに、日本代表として藤井風さんが参加した形です。

オリジナルバージョンはTikTokのバズに伴い、米ビルボードソングチャートで最高10位を記録しています。

藤井風さんによるリミックスはメロディを大きく変えながらジェイクのメロディと調和。またアウトロをカットすることでオリジナルバージョンとは全く異なる余韻を引き出し、聴き手が二度三度と聴きたくなる状況を生み出しているように感じます。

 

さて今回は、このようなリミックスの意義と楽しさについて、改めてまとめます。

 

 

ビルボードソングチャートや米ビルボードによるグローバルチャートではリミックスは合算対象となりますが、そのリミックスは大きくふたつの特徴に分かれるものと考えます。ひとつはオリジナルのアレンジを踏襲しつつ共演や客演を追加した形、もうひとつはリミキサーの名を冠しアレンジを大きく変える形です。

直近の代表例として、シザ「Kill Bill」にドージャ・キャットを迎えたバージョンやザ・ウィークエンド「Die For You」にアリアナ・グランデが共演したバージョンが挙げられます。後者は初加算のタイミングで米ビルボードソングチャートを制し、前者は次週のチャートで初加算され同曲初の米チャート制覇に至るかもしれません。

リミックスの投入は合算可能というチャートポリシー(集計方法)を利用し、チャートも意識したものであるはずです(ゆえにリリースタイミングも見極めて投入していると考えます)。しかしあからさまな施策優先だと捉えるのは違うのではというのが私見。先述した2曲におけるコラボは以前も行われており、再タッグから生まれる化学反応を喜んだ方は少なくないでしょう。

 

リミックスは新たに招かれる歌手のフックアップにもつながるのみならず、迎えられた側が人気の地域においては招く側の認知度向上にもつながります。先述した「golden hour (Fujii Kaze Remix)」においてはそのリリース直後、藤井風さんのコアファンを中心にジェイクのオリジナル版等がシェアされていることはその何よりの証明といえます。

またリミックスがジャンルそのもののフックアップにつながることもあります。ピンクパンサレス & アイス・スパイス「Boy's A Liar Pt.2」が2月に米ビルボードソングチャートでトップ10入りを果たしましたが、アイス・スパイス参加版の追加に伴いさらに火が付いたこの曲について、米ビルボードは記事にて音楽ジャンルのジャージー・クラブについて紹介しています。

この1ヶ月ちょっとの間にジャージー・クラブの解説記事や特集等が行われているのはこの曲の大ヒットがきっかけと言えます。プロデュースしたムラ・マサに初の米100位以内エントリーをもたらしたという意味でも、リミックスの存在は大きいのです。

アイス・スパイスは今年リリースのアルバム収録曲「Princess Diana」にニッキー・ミナージュを迎えたバージョンを先週リリース。ニッキーの招聘によりアイス・スパイスに箔が付いたと捉えていいでしょう。実力者を迎えることで自身をさらなるステージへと持ち上げることも、リミックスが持つ意味のひとつと言えます。

 

 

これらリミックスについての見方は、2ヶ月前にもブログで取り上げました。

施策については米ビルボードが今月所有指標に関するチャートポリシー変更を実施した模様ゆえ効果は薄くなると思われますが(変更については米ビルボード最新チャート等からみえてくる、3つの注目ポイントについて(4月19日付)等参照)、リミックスが名作となり施策以上の価値を持つならば今後も有効に作用するでしょう。そしてリミックスは下記の理由から歓迎されるべきであり、日本でも浸透することを願っています。

日本でもこのリミックス文化が広まることを願うばかりです。(中略) 願う理由は【リミックスや客演文化の醸成】【海外作品の日本市場での流通拡大】【チャートの仕掛けや戦略の活性化】【新鋭歌手の認知度向上】【ヒップホップの人気拡大】【リミキサーの育成】【クラブカルチャーの復興】等、様々な効果が期待できるため。

 

その意味でもビルボードジャパンには、リミックスに関するチャートポリシーについて米ビルボードソングチャートや米ビルボードによるグローバルチャートに沿わせるよう検討することを、今一度提案します。

直近4月19日公開分のソングチャートで新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」が10位に急上昇しましたが、ビルボードジャパンのポッドキャストではTHE FIRST TAKE公開効果が説明されています。THE FIRST TAKEについては音源が異なっても動画に付番されたISRC(国際標準レコーディングコード)がオリジナル版と同一ならば合算されますが、これは以前いただいたチャートポリシーの回答と矛盾する可能性を孕むと考えます。

 

 

合算に関するチャートポリシーを海外と沿わせることでリミックス文化が日本で醸成、海外でのチャート上昇も期待でき、またビルボードジャパンでの矛盾も解消します。前向きな検討を願っています。