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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

JO1「SuperCali」、ミュージックビデオ再生回数とビルボードジャパン動画再生指標との乖離の理由を探る

最新のビルボードジャパンソングスチャートを紹介した昨日付のブログエントリーに、たくさんのアクセスをいただきました。心より感謝申し上げます。

このブログエントリーにて、JO1「SuperCali」ミュージックビデオが特筆すべき再生回数を獲得しながらビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標に反映されているとは言い難いということについてお伝えしましたが、掲載後に複数のご意見をいただきました。今回はそのご指摘によって気付いたことを記載していきます。ご意見をくださった方々に、この場を借りて感謝申し上げます。

 

10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパンソングスチャートで2位に上昇したJO1「SuperCali」は、9月23日にパフォーマンスビデオを、そしてフィジカルシングルリリース日である10月12日にミュージックビデオをアップ。ミュージックビデオは既にパフォーマンスビデオを大きく上回る再生回数を記録しています(現段階でパフォーマンスビデオは1366万回再生、ミュージックビデオは1979万回再生を突破)。

10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパン各種チャートと集計期間を同一とするデジタルクリエイターズによる音楽動画ランキング(この集計期間に公開された作品のみが集計対象)ではJO1「SuperCali」ミュージックビデオが他を圧倒。1千万回弱の再生回数が如何に凄いかは、同社による7~9月の再生回数ランキングと比較してもよく解ります。

一方で、JO1「SuperCali」の最新週におけるソングスチャートの動画再生指標は14→50位に急落しています。

(上記は最新10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるJO1「SuperCali」のCHART insight。動画再生指標は赤で表示されます。)

これについて、動画がカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)を付番していないためにいわば欠損した可能性、もしくは再生キャンペーンを踏まえたビルボードジャパンの措置ではという疑問を昨日のブログエントリーにて示しました。

 

その後、複数の方からご指摘をいただいたのが(またその指摘内容から、少なからずファンの方々の間で推測されているのが)、2千万回再生を目前としたJO1「SuperCali」ミュージックビデオが広告としてYouTubeで流れていること、その広告再生分がYouTubeの再生回数にカウントされていること、その一方でビルボードジャパンでは広告再生分が反映されていないということでした。

 

ミュージックビデオが広告として流れることについては、以前から多くのレコード会社で行われている模様です(自分はK-Pop以外で観たことはありませんでしたが、様々なジャンルの曲が登場する傾向にあるという指摘も今回いただいています)。そしてこの広告活動についてはインディ等でも可能であるとして、このような営業活動も行われています。

音楽専用のYouTubeプロモーションが可能ofレコーディングスタジオ都内/安いのに「エンジニアの技術力」が違うレーベル直営店カフェオレーベルより

『興味を持って30秒以上試聴する人もいるでしょう。 その場合のみ、このサービスでの一再生カウントとなります』という記述にあるように、広告として冒頭等に配置された動画が30秒以上流れれば、それが再生回数に加算されるという仕組みです。

JO1「SuperCali」のミュージックビデオが広告として流れてきたことを自分は確認できませんでしたが、ファンの方々の間で話題になっているならばその可能性は十分考えられるでしょう。そしてYouTubeと連動したアプリのキャンペーンの開催期間中に、広告としても展開されたと考えていいのかもしれません。

 

このようなミュージックビデオの広告展開は、再生回数の大幅な増加に寄与する可能性があります。

上記解説では『同一のIPアドレス(インターネット上に接続された機器が持つナンバー)からの連続した動画再生は、1回の再生と見なされ』、『YouTubeは各視聴者が動画を正当に視聴した場合のみ再生回数にカウント』するとあります。これは『再生回数は広告収入につながる』ゆえの不正対策です(『』内は上記リンク先より)。

ならば逆に、ミュージックビデオ発信側がYouTube側に広告費を払っていれば、(一定のターゲットは決めつつ)不特定多数に広告を打ち30秒以上再生された際、再生回数として加算される仕組みなのではとも想像した次第です。

 

ミュージックビデオの広告展開がYouTube再生回数の増加に寄与したと予想できる一方、JO1「SuperCali」においてビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標に十分反映されなかった理由が気になります。そこでビルボードジャパンのFAQをみてみると。

ミュージックビデオが広告展開されたことで再生回数が伸びた動画がビルボードジャパンに反映されないのは、ビルボードジャパンのFAQ内”YouTubeについて”における③『再生回数はYouTube独自のアルゴリズムにより、適正に判断されたアクションのみ再生としてカウント』の部分に引っ掛かるからと考えるのが、最も適切かもしれません。

いただいた指摘として、YouTubeチャートにおける再生回数が大きく異なるというものがありました。実際に10月7~13日を集計期間とするYouTubeミュージックビデオランキング(→こちら)をみると、JO1「SuperCali」ミュージックビデオは43位に初登場し、再生回数は64万2千回となっています。

コアファンと思しき方の独自集計ツイートでは、JO1「SuperCali」ミュージックビデオの13日までにおける再生回数が244万回となっており、大きな乖離の発生が判ります。YouTube側はミュージックビデオランキング作成時に広告展開での再生回数を除き(また国内再生分のみが抽出され)、そしてビルボードジャパンはこの数値を用いたと考えれば、動画再生指標の順位等も納得できるといえるでしょう。

 

 

昨日のブログエントリー(→こちら)ではJO1「SuperCali」における、YouTubeの再生回数とビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標との乖離について、『①ミュージックビデオは欠損状態だったか、②欠損でない場合はキャンペーンの存在を踏まえたチャートポリシー変更を実施したか』が理由ではと推測しましたが、この2点とも正しくないのではというのが現段階での結論です。

(ゆえに、誤った解釈をしてしまったことをお詫びすると共に、いただいた情報が気付きになったことに、この場を借りて心より御礼申し上げます。)

そうなると、YouTube再生回数に広告展開分がカウントされていることが問題ではないかという新たな疑問も浮かんできます。広告費をいただいているからカウント対象とするというのがその理由ならば、YouTube営利企業であることを良くも悪くも認識させられたと感じています。

 

 

最後に。JO1については興味深い動向が生まれていますのでそちらも紹介します。

最新10月19日公開分(10月24日付)ビルボードジャパンソングスチャート、上位5曲の構成8指標の順位をみると、JO1「SuperCali」は黄緑で表示されるラジオ指標を制したことが解ります。ラジオ指標は全国31のFM/AMラジオ局におけるOA回数(プランテック調べ)に基づき、ビルボードジャパンが聴取可能人口等を加味して独自に指標化するものですが、OA回数ランキングでも「SuperCali」はトップに立ちました。

2022年10月19日発表のラジオ・オンエア・チャート(集計期間:2022年10月10日~10月16日プランテック調べ)では、JO1「SuperCali」が1位を獲得した。

6thシングル「MIDNIGHT SUN」のリード曲として10月12日にリリースされた同曲。先行配信日の9月23日にオンエア解禁されたものの、本格的にオンエアを獲得し始めたのはその翌週で、同9/26~10/2チャートで170位に初登場。前週には97位へと浮上し、シングルリリースを迎えた今週いっきにオンエアを急伸させ首位へと上り詰めた。

リリース週とあって積極的なゲスト/コメント出演も奏功し、多数のリクエストも確認されたが、前作から比べてそのリクエスト数が急増している点、そしてオンエア獲得ステーション数も圧倒的に伸びている点は特筆すべきだろう。人気度・認知度ともに上昇している裏づけとなっている。次週以降どこまで大量オンエアを持続できるか、楽曲自体の一般層への波及にも期待したい。

注目は『前作から比べてそのリクエスト数が急増している点、そしてオンエア獲得ステーション数も圧倒的に伸びている点』。前作「僕らの季節」がフィジカルセールス初加算週にラジオ指標65位だったことと比べて格段に伸びています。そしてOA回数やOA局数の増加は、コアファンのみならずライト層(放送局や番組が好きで聴いているという方)にもリーチし、認知度上昇につながったものと考えます。

ラジオが特殊な指標であること、ウエイトは大きいといえないながら重要と考える理由については、下記ブログエントリーに記しています。

JO1「SuperCali」は日本のSpotifyデイリーチャートでも最高60位に達し、フィジカルシングルのカップリング曲も複数が200位以内に登場するという、これまで以上のチャートアクションを記録しました。Spotifyにおける「SuperCali」のランクダウンが他の曲より大きくなっているのは気になるものの、しかしコアファンからライト層への拡がりはここからも感じられます。

YouTubeの広告展開は動画再生指標の増加に寄与しなかっただろうものの、広告による認知度上昇は次作につながっていくかもしれません。次週以降の「SuperCali」のチャートアクション、そして次作以降のJO1の動向に注目したいと思います。