毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。
1月23~29日を集計期間とする最新2月1日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、LE SSERAFIM「Fearless」が前週の100位未満(300位圏内)から首位に再浮上。LE SSERAFIMにとってキャリア初となる首位を獲得しました。前週単独での最長記録を達成したOfficial髭男dism「Subtitle」は、今年度初めて首位の座から脱落しています。
【ビルボード】LE SSERAFIM「FEARLESS」総合首位、Official髭男dism「Subtitle」の首位獲得記録更新をストップ https://t.co/AG4LAJl4Wd pic.twitter.com/ybB4sxAJwL
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年2月1日
さて、今回の「FEARLESS」のチャートアクションに対しては、少し極端ではという印象を持ち合わせています。
LE SSERAFIM「FEARLESS」は昨年春にデジタルリリースされ、5月に最高9位を記録。とりわけストリーミングが強く、17週連続で総合ソングチャート100位以内にランクインした原動力となったほか、続くシングル「ANTIFRAGILE」のロングヒットにもつながり、最終的には『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場に至っています。
またグローバルチャートにおいてはIVEやNewJeans共々、これまで強いとは言えなかった接触指標が強くなりロングヒット化していることから、K-POPアクトのグローバルチャートにおける立ち位置が変わりつつあるとも感じています。
その状況下で今回、LE SSERAFIMが初めて日本の音楽チャートを制しているのですが、先述したCHART insightから解るように今回のチャート構成比においては黄色で示されるフィジカルセールス指標のウエイトが4分の3近くを占めていることが特徴。所有指標は急落に至りやすいことから、次週はトップ10落ちする可能性が考えられるのです。
LE SSERAFIMの日本におけるフィジカルリリースは「FEARLESS」が初となります(なお厳密には「FEARLESS」のオリジナル版は収録されず日本語バージョンが巻頭を飾っているのですが、ビルボードジャパンでは言語のみが異なる場合は合算対象とするチャートポリシー(集計方法)を採用しています)。この「FEARLESS」と同様のチャートアクションがみられたのがIVE「ELEVEN」でした。
一昨年12月にビルボードジャパンソングチャートで最高16位を記録したIVE「ELEVEN」は、同曲の日本語バージョンを収録した(一方でオリジナル版は未収録の)日本盤フィジカルセールス初加算により昨年10月に9位に浮上しています。「ELEVEN」日本語版が日本における初のフィジカルであること、日本盤フィジカルシングル初加算の前週に総合100位未満(300位圏内)だったことも、LE SSERAFIM「FEARLESS」と共通しています。
(なおIVEは「ELEVEN」のみならず「LOVE DIVE」「After LIKE」でもシングルアルバムとして韓国でフィジカルをリリースしていますが、ビルボードジャパンでは日本盤以外フィジカルセールス指標未加算の状況です。ただルックアップ指標(CDをパソコン等にインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数。2023年度に廃止)は加算されており、フィジカルシングルの存在が可視化されています。)
IVE「ELEVEN」は日本盤フィジカルシングルが初加算され9位に到達したものの、その後は64位→100位未満(300位圏内)と急落しています。「ELEVEN」と共通項の多いLE SSERAFIM「FEARLESS」も同種のチャートアクションをなぞる可能性は否定できないでしょう。
フィジカルシングルに強い曲はデジタル、特にストリーミングや動画再生といった接触指標群が強くなければ急落する一方、この接触指標群を改善しフィジカルセールスをデジタルの補完的な形と位置付けることでロングヒットに到達できる可能性があることについて、以前からこのブログで説明しています。
そしてそのチャートアクションの理想形を築いたのが、直近では米津玄師「KICK BACK」だったというのが自分の見解です。
今回ビルボードジャパンソングチャートで首位に到達したLE SSERAFIM「FEARLESS」、そしてトップ10ヒットとなったIVE「ELEVEN」においてはデジタルの接触指標群がヒットしてはいるのですが、オリジナル版のデジタルリリースから日本盤のフィジカルリリースまで共に半年以上の開きがあったことで所有と接触指標の乖離が発生したと考えられます。
自分は以前、K-POPアクトの日本向け作品におけるチャートアクションに違和感を抱いていました(下記ブログエントリー参照。当時は以前より強い表現を用いていたと省みています)。その際、J-POPライクな作品が急落する傾向にあるならば、オリジナル版の日本語バージョンをリリースするほうがより好いのではと考えた次第です。
しかしながら今回のLE SSERAFIM「FEARLESS」におけるチャートアクションを踏まえれば、K-POPアクトの日本向けフィジカルシングルは【オリジナル版の日本語バージョン】を【オリジナル版のリリースから間もないタイミングでリリース】することがチャート面においても最重要ではないかと考えるに至ってます。
無論LE SSERAFIM「FEARLESS」が翌週以降ロングヒットする可能性も持ち合わせているため、まずは「FEARLESS」の次週以降のチャートアクションを注視していきましょう。