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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボード最新チャート等からみえてくる、3つの注目ポイントについて

昨日発表された米ビルボードによる4月22日付各種チャートを中心に、注目点を取り上げます。ソングチャートおよびグローバルチャートの速報版は昨日のエントリーをご参照ください。

 

<米ビルボード 最新チャート等からみえてくる注目ポイント>

 

① 前週のチャートポリシー変更はほぼ確定か

最新チャートトピックと言いつつ、前週の内容をまず取り上げることについてご了承いただきたいのですが、やはりこの点は取り上げないわけにいきません。

前週4月15日付米ビルボードソングチャートでは前週に初登場で首位を獲得したJIMIN「Like Crazy」が45位に急落し、クリスマス関連曲を除く首位からの急落記録を更新していますが、この4月15日付チャートにおいてチャートポリシー(集計方法)が変更されたのではという見方があり、その点について上記ブログエントリーで紹介しています。

そして日本時間の昨日、米ビルボードソングチャートの予想担当者のひとりであるwinstonさんがチャートポリシーが変更された可能性に言及しています(上記ツイート参照)。尤も、もうひとつのツイート(最も深く言及している部分)は削除されていますが、一連の発言からは前週のブログエントリーでも紹介したツイート(下記参照)での指摘が正しかったことを証明したと言えるでしょう。

winstonさんも紹介した前回(昨年1月分)のチャートポリシー変更についてもダウンロード指標、それも歌手のホームページによるデジタル購入分が対象となっています。今回の変更はJIMIN「Like Crazy」が首位を獲得した翌週の変更ゆえか、JIMINや彼がメンバーを務めるBTSのコアファンからの激しい反発も散見されますが、以前のエントリーで記したようにチャートポリシーの変更自体は支持できるというのが自分の姿勢です。

 

必要なことは、米ビルボードが直近の二度のチャートポリシー変更についてきちんとアナウンスをすることです。ビルボードジャパンはチャートポリシー変更直後に発表することもありますが変更内容はきちんと発表する傾向にあり、尚の事米ビルボードの姿勢は問題だと感じています。変更の理由とチャートのスタンスを毅然とした態度で発信することは必須ではないでしょうか。

他方、今回のチャートポリシー変更(の可能性)については”#BillboardRasists”等の言葉を用いてチャートを問題視する方もいらっしゃいますが、それは批判とは呼べないものです。JIMIN「Like Crazy」の前にもテイラー・スウィフトAnti-Hero」が32万を超えるダウンロードを記録しており、米ビルボードはこの点も同様に問題視したものと考えます。「Anti-Hero」は翌週も首位をキープしたゆえ目立ちにくかっただけでしょう。

ゆえに”レイシスト(人種差別主義者)”という表現は間違っています。加えてそのような言葉遣いは米ビルボードにスルーされ、さらにはその表現を用いる方が推す歌手の印象も下げさせかねないのではないでしょうか。

 

ビルボードにおいては接触指標群の充実が上位での安定したチャートアクションにつながり、そしてグラミー賞においても重視されるポイントと捉えています。米ビルボードではビルボードジャパンにおけるLINE MUSIC再生キャンペーンのようなストリーミング指標対策が見当たらずコアファンの方々ができることは限られるゆえ、ライト層の支持をどう集めるかについてアイデアを捻出することは急務でしょう。

 

 

モーガン・ウォレンのストリーミング指標にみられる特徴

最新4月22日付米ビルボードソングチャートではモーガン・ウォレン「Last Night」(総合首位)がストリーミング指標3660万で同指標2位、ドレイク「Search & Rescue」(総合2位初登場)がストリーミング指標3380万で同指標首位となっています。ストリーミングの再生回数と順位に違いが生じているのは、各デジタルプラットフォームの有料会員における1回再生と無料会員のそれとでウエイトが異なるためです。

ストリーミングはヒップホップが強い一方でカントリーが弱いという傾向がありましたが、これはそれぞれのジャンルの主要聴取層に影響するものであり、ヒップホップは無料のデジタルユーザーが多いものと捉えていました。ただドレイクはベテランとも言えるラッパーであり、一方のモーガン・ウォレンは若手カントリー歌手で以前からストリーミングに強い特徴があります。

最新4月22日付米ビルボードアルバムチャートではモーガン・ウォレン『One Thing At A Time』が初登場から6週連続で首位を記録していますが、強さの理由はユニットの大半を占めるストリーミングのアルバム換算分(SEA)にあります。これは収録曲数の多さや少なさに限らず計算式は同じゆえ、36曲入りのアルバムが有利になっているという側面もあります。

このアルバムチャートの動向を踏まえるに、ともすればカントリーのファンではサブスク利用者が多くはなく、今回のアルバムリリースを機にサブスクを、まずは無料ユーザーとして使い始めた方が少なくないかもしれません。その結果、無料ユーザーによる再生回数が「Last Night」で増えたと捉えることもできそうです。

 

 

③ FIFTY FIFTY「Cupid」、米やグローバルで順調に上昇

K-POP女性ダンスボーカルグループ、FIFTY FIFTYによる「Cupid」が好調です。同曲については今月紹介していますが、世界でのチャートアクションがさらに興味深いものとなっています。

昨日もお伝えした通り、グローバルチャートのうちGlobal Excl. U.S.では初のトップ10入りを果たしました。またGlobal Excl. U.S.に米の分を加えたGlobal 200(→こちら)では13位に上昇、そして100→94→85位と推移した米ビルボードの最新チャート(→こちら)では60位まで上がっています。

加えて、次週4月29日付でのさらなる上昇も十分考えられます。同週の集計期間前半3日間におけるグローバルのSpotifyチャートでは英語版のTwin Ver.が8位に上昇し、韓国語版のオリジナルバージョンもこの3日間は200位以内に登場しています。米ビルボードによるグローバルチャートや米ソングチャートは複数のバージョンが合算されるため上位進出が期待できるのです。そして、「Cupid」の原動力が接触指標だとも解ります。

非公式と思しきFIFTY FIFTYの音楽チャート専門Twitterアカウントでは昨日上記の発信がありましたが、BLACKPINKが強い中で特筆すべき動きを見せているのは明らかです。またBLACKPINKがこれまでのK-POPで顕著だった所有指標を武器に上位に初登場する傾向だったのに対し、「Cupid」やNewJeans「Ditto」「OMG」のような接触指標群に強い作品が週間単位では順位が高くないとしても徐々に浸透していることもみえてきます。

BLACKPINKとFIFTY FIFTYとでは新曲リリース時のグローバルや米での認知度、およびコアファン数に差があるため出だしのチャートアクションに違いがあったといえますが、接触指標群の上昇で広く世界に浸透することが理想と捉えている者としては、その理想の形がK-POP女性ダンスボーカルグループで形成されつつあると感じます。最終的に年間チャートでの上位進出やグラミー賞獲得にも近づいていくのではないでしょうか。