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【海外ビルボード】「Last Night」が米で、「Flowers」がグローバルで首位キープ、ドレイクやFIFTY FIFTYが新たに登場

現地時間の4月17日月曜に発表された、最新4月22日付米ビルボードソングチャート(集計期間:4月7~13日)。モーガン・ウォレン「Last Night」が2週連続、通算3週目の首位を獲得しました。

モーガン・ウォレン「Last Night」はストリーミングが前週比4%アップの3660万(同指標2位)、ダウンロードが同6%アップの10,000(同指標3位)、ラジオが同16%アップの3450万(同指標17位)を記録。ラジオは2週連続でトップエアプレイゲイナーを獲得しています。そのラジオにおいて、カントリーエアプレイチャートで13位、ポップエアプレイで20位、アダルトポップエアプレイで21位に上昇したほか、アダルトコンテンポラリーでは27位に初登場しておりジャンルを超えたヒットと成りつつあります。

「Last Night」は、米ビルボードソングチャートと同様の計算方法を採るホットカントリーソングチャートで10週目の首位を獲得。双方のソングチャートを制したのは「Last Night」が20曲目となり、男性歌手による伴奏なし(記事では”unaccompanied”と表記)の作品としては、エディ・ラビット「I Love A Rainy Night」がホットカントリーソングチャートで1981年1月に1週、同年2月から3月にかけてソングチャートで2週首位を獲得して以来、およそ42年ぶりとなります。

ビルボードの総合ソングチャートおよびホットカントリーソングチャートで共に複数週、同規模以上で首位を獲得したのはテイラー・スウィフト「We Are Never Ever Getting Back Together」以来となります(2012 総合で3週、カントリーで10週首位)。

 

ドレイク「Search & Rescue」が2位に初登場。集計期間初日にリリース(その前日にリリースがアナウンス)された同曲はストリーミング3380万(同指標1位)、ダウンロード3,600およびラジオ690万を記録し、ストリーミングにおいては自身の持つ首位獲得記録を16に伸ばしています。なおストリーミング再生回数自体はモーガン・ウォレン「Last Night」が上回っていますが、ストリーミング指標は有料会員による1回再生が無料会員によるそれよりウエイトが大きくなるため、その結果再生回数と順位に違いが生じています。

ドレイクは「Search & Rescue」のヒットにより、トップ10ヒット曲数においても最高記録を更新しています。

<米ビルボードソングチャート トップ10ヒット曲数>

68曲 ドレイク

40曲 テイラー・スウィフト

38曲 マドンナ

34曲 ザ・ビートルズ

32曲 リアーナ

30曲 マイケル・ジャクソン

29曲 エルトン・ジョン

28曲 マライア・キャリー

28曲 スティーヴィー・ワンダー

27曲 ジャネット・ジャクソン

トップ5に限定しても、ドレイクは今回が35曲目のヒットとなりザ・ビートルズ(29曲)とを引き離しています。またトップ40ヒットは174曲目でテイラー・スウィフト(105曲)との差を拡げ、100位以内となると294曲目となりグリー・キャストの207曲に90曲近い差をつけています。なお2位以内となると20曲目となり、ザ・ビートルズおよびマライア・キャリーの23曲まであと3曲と迫っています。

ドレイク「Search & Rescue」は、タイトルに”Search"が付く曲としてはサバイバー「The Search Is Over」(1985 4位)を上回り最高位を更新(なお歌手名についている例として、ザ・サーチャーズ(The Searchers)「Love Potion Number Nine(1965 3位)が挙げられます)。また”Rescue”が付く曲においても、ザ・ローリング・ストーンズ「Emotional Rescue」(1980 3位)やフォンテラ・ベース「Rescue Me」(1965 4位)を上回り、最高位に達しています。

 

マイリー・サイラス「Flowers」は3位をキープ。ラジオは前週比9%ダウンの9350万となり、同指標9週目の首位を獲得しています。そのラジオでは、ピンクパンサレス & アイス・スパイス「Boy's A Liar Pt.2」(総合8位)が前週比3%アップの4090万を記録し14→10位に。同指標におけるトップ10ヒットは両者共に初となります。

テイラー・スウィフトAnti-Hero」は9位に。同曲はトップ10入りが24週目となり、自己最長記録である「Shake It Off」(2014-2015)に並びました。この2曲に続くのが「I Knew You Were Trouble」(2012-2013 16週)および「You Belong With Me」(2009 16週)となります。

 

エスラボン・アーマード(Eslabon Armado) & ペソ・プルマ(Peso Pluma)「Ella Baila Sola」が17→10位に。ストリーミングは前週比30%アップの2440万を記録し同指標6→3位に上昇、またトップストリーミングゲイナーを獲得しています。

カリフォルニア出身のエスラボン・アーマードとメキシコ出身のペソ・プルマ双方にとって初のトップ10ヒットとなったのみならず、「Ella Baila Sola」はメキシコの曲(記事には”regional Mexican Song”と記載)として初のトップ10ヒットに至っています。2020年代に入りメキシコの曲が上昇した背景にはTikTokや他のソーシャルメディアの影響があり、2021年5月におけるゲラ・エムエックス(Gera MX) & クリスチャン・ノダル(Christian Nodal)「Botella Tras Botella」は、ソングチャートに初めて登場したメキシコ曲となります。なお同曲は最高60位を獲得しています。

ペソ・プルマにおいては「Ella Baila Sola」に続き、ヤング・ルキャス(Yng Lvcas)との「La Bebe」が今週17位に上昇(同曲の最高位を更新)。メキシコの曲では続いてヤハリツァ・イ・ス・エセンシア(Yahritza y Su Esencia)「Soy El Unico」が20位(2020年4月 20位での初登場はメキシコの曲としては最高位に)、フエルサ・レジーダ(Fuerza Regida) & グルーポ・フロンテラ(Grupo Frontera)「Bebe Dame」(2023年1月 25位)が米ビルボードソングチャートにおいて上位に登場しています。

(※これら歌手についてはそのほとんどが日本のレコード会社のホームページにて紹介されていない関係上、カタカタ表記に誤りがある可能性があります。ゆえに歌手名についてはアルファベットを併記しています。)

メキシコの曲も含むラテンジャンルにおいては、英語で歌われたラテンの作品として1980年代にグロリア・エステファンによるヒット曲が生まれ、またロス・ロボススペイン語で歌った「La Bamba」もヒットしています。そして1990年代後半以降は英語とスペイン語の双方を用いた曲としてエンリケ・イグレシアスジェニファー・ロペスリッキー・マーティン等によるヒットが誕生。同時にマーク・アンソニーはトロピカル(のジャンル)を総合チャートにランクインさせることに貢献してきました。最近ではダディー・ヤンキーとルイス・フォンシによるほぼスペイン語で歌われた「Despacito」がジャスティン・ビーバーを招いたバージョンにて、2017年に当時最長タイとなる16週の首位を獲得。そして2020年代に入り全編スペイン語によるバッド・バニーの曲がトップ10入りし、ラテンジャンルの中心を担っています。

エスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola」は今年においてスペイン語で歌われた曲として、ビザラップ & シャキーラ「Bzrp Music Sessions, Vol. 53」(1月 9位)、カロルG & シャキーラ「TQG」(3月 7位)に続く3曲目のトップ10ヒットとなりました。また「Ella Baila Sola」のリリース元であるプラジン・パーレイ/DELレコードにおいても初のトップ10ヒットを達成しています。

エスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola」はホットラテンソングチャートにおいて2週目の首位を獲得。このチャートでは双方において初の首位となります。「Ella Baila Sola」を書いたエスラボン・アーマードのボーカル、ペドロ・トヴァー(Pedro Tovar)は、この曲がここまでの人気となるとは予想していなかったと米ビルボードに語っています。”自分のインスタグラムアカウントのストーリー機能でプレビューしたらその2日後にTikTokでバイラルになり、その時にこの曲がビッグヒットになると分かった”とも述べています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) モーガン・ウォレン「Last Night」

2位 (初登場) ドレイク「Search & Rescue」

3位 (3位) マイリー・サイラス「Flowers」

4位 (2位) シザ「Kill Bill

5位 (4位) メトロ・ブーミン、ザ・ウィークエンド & 21サヴェージ「Creepin'」

6位 (7位) レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」

7位 (5位) ザ・ウィークエンド & アリアナ・グランデ「Die For You」

8位 (6位) ピンクパンサレス & アイス・スパイス「Boy's A Liar Pt.2」

9位 (8位) テイラー・スウィフトAnti-Hero

10位 (17位) エスラボン・アーマード & ペソ・プルマ「Ella Baila Sola

 

さて次週は、チャート集計期間の初日にシザ「Kill Bill」(4位)のドージャ・キャット客演参加版がリリースされたことから、このリミックスが影響を及ぼすものと考えられます。米ビルボードや後述するグローバルチャートでは全てのバージョンが加算対象となります。

(記事にはありませんが、このドージャ・キャット参加版リミックスについては米ビルボードソングチャート来週発表分の予想からみえてくるチャート施策、および私見(4月17日付)にて紹介しています。)

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート、4月22日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共にマイリー・サイラス「Flowers」が通算12週目となる首位を獲得しました。

マイリー・サイラス「Flowers」はGlobal 200においてストリーミングが前週比9%ダウンの7550万、ダウンロードが同6%ダウンの18,000を、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが前週比10%ダウンの5820万、ダウンロードが同2%ダウンの10,000を、それぞれ記録しています。双方のチャートで通算12週目の首位となり、Global 200ではハリー・スタイルズ「As It Was」(2022 15週)、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(2020-2023 13週)に続く歴代3位、Global Excl. U.S.では「As It Was」(2022 13週)に次ぐ歴代2位の首位獲得週数となっています。

ドレイク「Search & Rescue」がGlobal 200で2位に初登場。ストリーミング5220万、ダウンロード4,000を記録しています。ドレイクのGlobal 200におけるトップ10ヒットは28曲目となり、テイラー・スウィフトの14曲をさらに引き離しています。

ペソ・プルマがGlobal 200で2曲をトップ5に送り込んでいます。エスラボン・アーマードとの「Ella Baila Sola」が9→3位、ヤング・ルキャスとの「La Bebe」が7→4位に上昇。共にストリーミングが強く、「Ella Baila Sola」は前週比17%アップの7450万、「La Bebe」は同4%アップの7150万を記録しています。メキシコ出身のペソ・プルマおよびヤング・ルキャス、カリフォルニア出身のエスラボン・アーマード、三者すべてにおいてGlobal 200で初のトップ5ヒットを輩出しています。

Global Excl. U.S.においても同様に、「La Bebe」が7→2位(ストリーミングは前週比2%アップの5420万)、「Ella Baila Sola」が8→5位(ストリーミングは前週比12%アップの5180万)を記録。こちらでも三組すべて、初のトップ5入りを果たしています。

K-POPアクト、FIFTY FIFTYによる「Cupid」が22→9位に上昇。ストリーミングは前週比35%アップの4020万、ダウンロードは同13%アップの1,000を、それぞれ記録しています。

Global Excl. U.S.におけるK-POPアクトのトップ10入りはBTS(10曲)、BLACKPINK(4曲)、IVE、NewJeans、TWICE(いずれも2曲)、BIGBANG(1曲)に続き、FIFTY FIFTYが7組目となります。