イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパンが発表したオールタイムソングチャート、”ポイント単純合算”方式への違和感

(※追記(3月31日8時10分):一部追記を行うと共に、タイトルを『ビルボードジャパンが今朝発表したオールタイムソングチャート、”ポイント単純合算”方式に違和感を覚える』から『ビルボードジャパンが発表したオールタイムソングチャート、”ポイント単純合算”方式への違和感』へ変更しました。)

 

 

 

本日、ビルボードジャパンがオールタイムソングチャートを発表しました。

首位を獲得した米津玄師さんの「Lemon」は今週、上記ミュージックビデオがJ-POP最高となる8億回再生を突破。その直後となる今回の発表に、チャートの信憑性の高さを感じる方は多いかもしれません。

今回のオールタイムソングチャートは2022年度までを集計期間としており、上位50曲はビルボードジャパンの記事に掲載。その顔ぶれに馴染み深い作品が多いと感じる一方で、気になることが生じています。それはチャートにおける年代の偏りです。

 

オールタイムソングチャートにおいて、2016年以前のリリース作品は50曲中10曲にとどまり、2015年以前となると7曲となります。つまりビルボードジャパンのソングチャートでは立ち上げから2015年までのヒット曲が、オールタイムチャートからは可視化されにくいと言えるのです。

 

これはビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)の変遷が影響します。当初はフィジカルセールスとラジオのみだったものが徐々に構成指標を増やし、2022年度は8指標となっていました(現在は6指標)。とりわけ2017年、一定枚数以上の週間フィジカルセールスに係数処理を施すようになったことが大きく、これによりビルボードジャパンが社会的ヒット曲の鑑に成ったと捉えています。

ストリーミングに強い曲が週間単位でも強さを発揮するようになり、またストリーミング等接触指標群のヒットがロングヒットにつながるため、デジタルに強い曲がチャートで上位をキープするようになったことが2017年以降リリース作品の強さの理由。言い換えれば、そのようなチャートポリシーではなかった2016年以前のヒットが可視化されにくくなるのは、単純合算方式を採用するならば予想できたことだと言えます。

 

今回のビルボードジャパンによるオールタイムソングチャート、米ビルボードとは算出方法が異なります。

2018年7月21日付までの60年間における米ビルボードオールタイムソングチャート、100位までをみるとどの年代もまんべんなくランクインしています。このチャートは”Greatest Of All Time”(GOAT)と呼ばれ米ビルボードには専用ページ(→こちら)があるのですが、現段階ではザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が首位に。現在はストリーミングの存在が大きいものの、近年リリースの曲が上位に偏るわけではありません。

 

この米ビルボードにおけるGOATについては、以前もブログにて紹介しました(下記リンク先参照)。その際、オリコンによる”平成セールス”ランキングの偏りについて違和感を記したのですが、ビルボードジャパンによる今回のオールタイムソングチャートについてはオリコンの当該ランキングに近い感覚を抱いています。

 

 

ビルボードジャパンがオールタイムソングチャートを作成した理由、そしてビルボードジャパンがオールタイムチャート作成の際になぜ米ビルボード方式等を採用せずポイントの単純合算としたのか、この2点が気になっています。

おそらくビルボードジャパンは15周年という節目のタイミングで自分たちの音楽チャートの存在感を業界内外に示したかったものと思われます。前もって準備したからこそ米津玄師さんのコメントを取り付けることもできたはずです。しかし単純合算方式ゆえにオールタイムソングチャートに疑問を抱く方は少なくないかもしれません。

 

ビルボードジャパンには米ビルボード方式等を採用しなかった理由を伺いたいところですが、まずはオールタイムソングチャートを作成したということ自体前進と捉えることもできそうです。これを基礎とし、今回のチャートから生まれる反応を考慮し計算方法の変更について議論するならば幸いです。

 

 

 

※追記(3月31日8時10分)

今回の日米ビルボードによるオールタイムソングチャートの違いを踏まえ、ビルボードジャパン側は米のソングチャートと同様にリカレントルールを導入することを議論する必要があるのではと考えます。

リカレントルールとは、一定週数ランクインした曲が一定順位を下回ればチャートから外れるというチャートポリシー。米ビルボードはこのルールを採用しているため、ストリーミングに強い2010年代以降のヒット曲がオールタイムソングチャートにおいてより高い位置を占めることが難しくなったものと考えます。

他方、ビルボードジャパンにおいては2022年度の年間ソングチャート(こちら等参照)においても2020年以前リリースの作品が複数ランクインしています。ストリーミングに強い曲のロングヒットのみならず、リカレントルールを採用していないこともまたオールタイムソングチャートにおける2010年代後半のヒット曲の多さにつながったと言えるでしょう。ともすればこれが新陳代謝の少なさや硬直性と形容される可能性もあります。

ビルボードジャパンの最新ポッドキャスト(上記動画参照)を聴くと、チャートディレクターの礒崎さんは先月から話題になっている音楽チャートの硬直性について意識されていることが解ります。その点はここでも問題点を整理し、提案を実施しています。

そのポッドキャストがアップされて間もなく、今回オールタイムソングチャートが発表されました。支持する方も多いと思いますが違和感はきちんと表明し、建設的な議論が行われるべく冷静な批判と提案が必要と考えます(そしてそれこそが礒崎さんやビルボードジャパン側が望んでいるものではないでしょうか)。そしてその批判や提案を踏まえ、ビルボードジャパン側がチャートポリシーについてきちんと議論することを願います。